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さまよえるオランダ人、あるいは幽霊船 The Flying Dutchman, or, the Phantom Ship 全3幕 JAMESON 版   作者: Edward Fitz-Ball, Esq./萩原 學(訳)
第3幕 ACT THE THIRD.
11/15

第1場 SCENE 1. 空想的な細道と洞窟。中央に船箪笥。A Romantic Pass and Cave. The Sea Chest in Centre.

スマッタ及び奴隷陣が、力づくに箪笥を開けようとしている。箪笥が開き、お面を被ったピーターが飛び出す。皆逃げ出す。

Smutta and Slaves forcing open chest : —they succeed, and Peter pops up his head with mask on — they run away.


ピーター:本を詰めなきゃ!さまよえるオランダ人でもあるまいし!…ん、主たちは?

(ばたばた)いかん、奴等戻ってきてる。女羊飼の衣裳が箱に残ってるから、…これ着て化けるか、愛らしく気高く哀しみに暮れた女ってのに。

[ドレスを拾い上げ、退場

Pet. Bag my books ! —don't like the Flying Dutchman ! — Eh, my masters ? (noise) Oh dear ! they're coming again. The dress of a Shepherdess in box — I'll put it on, and pretend to be a female, lovely, virtuous, and in distress.

[snatches dress out of box, and exit.


熊面を手にヴァーニッシュ登場

Enter VARNISH, the bear's head in his hand.


ヴァーニッシュ:やれやれ、俺はどうなることやら。疫病神よ、愚かなる俺の頭をお救いやがれだ。耳に蚤が入って逃げる馬鹿とか言うけど、馬鹿な俺は頭を抱えて逃げるばかりだ。

…何だこりゃ、古びた箪笥?もう何か声が聞こえたし、たぶん盗っ人か人殺し扱い。見つかったが最後、撃ち殺されるだけ。箱に入って蓋閉めとけば、金槌なしには開けられまい。上手く行きゃ、食べ物飲み物のある場所へ運んでくれもするだろうて。

[ 中へ入る。同時にスマッタと奴隷陣が慎重に帰ってくる

Var. What the deuce will become of me ? —Plague take my stupid head. I've often heard of running away with a flea in the ear, but I've run away with my head under my arm. What have we here ? an old chest ! then I did hear voices : —robbers--murderers, perhaps. If they find me, they'll shoot me for a spy. If I get into the box, they can't open it without a hammer : I'll hold down the lid—they'll carry me away, perhaps, to a place of eatables and drinkables. [ gets in, as Smutta and Slaves return with caution.


スマッタ:すかり静か、また甲羅の中のカメさんに。その耳元でかち割たら、どっかな?

Smut. All quiet—tortoise in him shell again—we break it about him ears—how him like dat ?


皆で箱を叩くと、中の人が「ひ、人殺し!」と叫び、熊面を着けたまま外を窺う。

They strike box, Varnish calls “ Murder, ' then looks out with bear's head on.


また様子変わた。今度でっかいカンガルーみたい、でも絶対カンガルー言わない人殺とか。

[ヴァーニッシュを捕獲

Him change himself again—him look like large kangaroo. Nebber hear kangaroo cry ' Murder ! '

[ taking hold of Varnish.


ヴァーニッシュ:俺のこと解らないか?イギリス人だ。

スマッタ:ルーシーのチュンチュンか。あなた名前ヴァーニッシュ、だか?

ヴァーニッシュ:トビー・ヴァーニッシュ。ノヴァ・スコシアの女王に仕えます格別の従僕にして紅の画家。これで、少しは敬意を表してくれるかな?

スマッタ:あんた凄んだな!ペッパーコール船長のとこ行こ

ヴァーニッシュ:ヤマアラシを棘付きで飲み込むより酷いじゃないか。放してくれ

スマッタ:じゃ何かくれんの?

ヴァーニッシュ:金かよ、押し込み強盗め。あーあ、先月の給料も、主人も失くしちまったか。そうれ、拾え!

[お金を抛り投げ、拾われる間に逃げ出す

スマッタ:行っちゃた!…ああ、いや?また様子変わた。

[女羊飼の衣裳を着たピーターを引っ立て

ピーター:陪審員の皆様、苦悩する哀れな少女を憐れんでくださいまし。わたくしは運の悪い女です。

スマッタ:とても何とも不憫な。嬢さん、ペチコートの下の足大きね。

ピーター:ええっ、ちぇっ!気が遠くなりそう。

スマッタ:こいつ太い奴。ついて来い

ピーター:憐れんで下さらない?わたくし相当な美人なの、で…

[棍棒を拾い、皆を打ちのめすと、舞台を横切り走る。皆追いかける。

Var. Don't you know me ? I'm an Englishman.

Smut. Lucy's chum chum. You name Varnish, me tink.

Var. Toby Varnish, esq. footman extraordinary and painter in carmine to the queen of Nova Scotia. There —now for a little personal respect.

Smut. Great man ! go vid me to Captain Peppercoal

Var. I'd sooner swallow a porcupine, quills and all. Let me go.

Smut. Vat you give ?

Var. Money, o ho ! a rogue in office. Well— my last month's wages : lost my master too — there, there ! [ throws money, escapes while they pick it up.

Smut. Gone ! ah, me see ! him change himself again. [ they drag on Peter in dress of Shepherdess.

Pet. Gentlemen of the jury ; pity a poor little creter in distress. I'm an unfortunate female.

Smut. Me pity her ver much. Miss, you got dam large calf under petticoat.

Pet. O fie ! o - h ! I'm going to faint ! -o - h !

Smut. You big rogue ! you go with us.

Pet. Won't you pity me ? —I’m a striking beauty, so—, [snatches a cudgel and beats them all off ; then runs across the stage, they pursue, & c.

a flea in the ear:「蚤が耳に入る」というのは、今日では苦言の類が「耳に痛い」意味に使われる。ここでは嘲笑的。

Nova Scotia:ノバスコシアはカナダ東部の大西洋に面する州。女王どころか英領でもなく、馬鹿を自認するヴァーニッシュが適当ぶっこいてハッタリかます場面。

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