第四章 学園編 第十九話 それぞれの道
第四章 学園編終わりです。
帝国を離れたエルフ親子と出会ってから三年の月日が経ち、その間に様々な変化があった。
帝国を離れたエルフ親子の内、父親のリヴィアさんは冒険者になった。
街に馴染むため街に関わる通常依頼から始めて、今はA級冒険者として過ごしている。
娘のアンジュは調理スキルと鑑定スキルを取得し、目標だった『料理鑑定』を発動することが出来るようになった。
今は、カフェシエル二号店で調理組として頑張っている。
ファジール魔術学園に通っていた三年生の、トリシャとシャリアはそれぞれ、騎士団員とパティシエール見習いへと別れた。
卒業後、成人した一年生組のレン、アイリ、ルーク、ライアン、パーラの内、ルークは騎士団員へと進路を決め、レンとアイリはカフェシエル一号店で正式な従業員となり、日々働いている。
また、パティシエ見習いのライアンとパティシエール見習いのパーラは、シャリアと共に洋菓子作りに励んでいるが、まだ店を開くには至っていない。
ユウトが驚かされることもあった。
それは、リーフェイトさんの高齢出産だ。
ガジャーノさんは七十歳、リーフェイトさんは六十七歳とどちらも高齢者にも関わらず、六人目の子供を産んだのだ。
生まれたのは女の子で、名前はシャーノアくんが決めた。
◇
「マスター。 二階に来客の方をご案内しました」
しかし、来客を告げるベルの音は鳴っていない。
「実は……テオシウス国王陛下が訪ねて来ました。 表では目立つと思い、裏口からご案内しました」
「わかった、ありがとう。 すぐ向かうよ」
わざわざ国王陛下が来るのは珍しく、今まで一度もなかった為、何を言われても良いようユウトは、気を引き締めた。
「失礼します。 遅くなりました」
「ユウトさん、急に来てしまいすみません。 先に紹介しておきます、息子のプロビタです」
「初めまして。 プロビタ・トルテ・ファジール、八歳です。 ユウト・サトウさんのことは、父上や宰相、ディッグからも聞いており、また、物語も読みました。 よろしくお願いします」
八歳とは思えない程、ハキハキと話す姿はテオシウスさんと、似ても似つかない。 恐らく、母親の影響が強いのだろうと判断した。
「ユウト・サトウと言います。 S級冒険者で、カフェシエル一号店と二号店のマスターをしています。 こちらこそよろしくお願いします。 プロビタ殿下」
「いえ、敬称は不要です。 非公式の場では、呼び捨てで構いません」
「今日は息子の紹介ともう一つ用があって来ました」
「南の大陸にあるスーサルム山脈によってわけられていた、三国が一つになる動きを見せています。 近い内に国王が決まり、こちらで謁見を行うことになると思います。 その際に食事会を開くのですが、食事会で出す料理をユウトさんに作って頂きたいのです」
「ファジール王国は、セルゲーノとアヅールとジャガードとの交流をする方向で進めてるんですか?」
「はい。 勝手なことだとわかっています。 しかし、他に頼れる人がいなく……」
山脈から見て南西の小国、セルゲーノは冒険者が築いた街とも言われており、横暴な態度の冒険者が多い。 その為、よく喧嘩が起きるそうだ。
南東の小国、アヅールは南の大陸では一番豊かな国で、冒険者の質や礼儀も良く、小国と言ってもジャガード帝国の次に大きな国だ。
水と油のように交わることが考えづらい両国とジャガード帝国が、一つになる動きを見せている。
何か裏がありそうだと思うユウトは、それを表に出さず返事をする。
「そうですね……当日は調理法を見られたくないので厨房を借りたいと思ってるんですが、可能ですか?」
「そのように伝えておきます」
「苦手な食べ物や出してはいけない物はありませんか?」
「ないと思います」
「わかりました」
ユウトとテオシウス陛下は、しっかりと握手をし、解散となった。
ユウトは休憩スペースでマリナへ連絡を取り、南の大陸の動きを探るように指示を出した。
◇
その頃、南の大陸では……
「では今後、三国を統一した国の名はアヅール国とし、初代国王をバーサム・フィン・アヅール陛下とする。 またジャガードとセルゲーノ両国の王族は、王族と名乗ることを禁止し、伯爵とする」
読んでいただきありがとうございます。
前話の後書きにも書きましたが、章が間に合っておらず追いついてしまうので、明日から夕方18:00(6:00)投稿にします。
二度目の投稿時間変更、読んでいただいてくれている方々にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
学園編 終了!