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第三章 王都編 第八話 緊急依頼

上位魔族の一柱、アイズ・ベルク。



 緊急依頼ーー



 それは、国家存亡の機にあると判断された場合のみ国が出す依頼のことだ。

 緊急依頼が出ることは死と、捉える冒険者は多い。

 何故なら冒険者側から見て緊急依頼というのは、強制参加となるからだ。

 主に、スタンビートなどが緊急依頼になる。 

 しかし、今回は内容が違った。




 緊急依頼


 内容

 召喚された魔族及び魔物の討伐



 報酬……討伐者に白金貨一枚

 依頼参加者に金貨五枚


 依頼主……ファジール国王陛下




 「……魔族」

 「召喚された……?」

 「誰がやったんだよ!」

 「魔物の数は?!」



 ギルド内では低級ランクの冒険者ほど、顔に悲痛の色が見てとれる。

 現在ファジール王国内にいるSランク冒険者は、疾風パーティの四人、青龍パーティの二人、ギルドマスターのギリックで計七人だ。


 国の防衛はE級~D級、魔物の討伐はC級~B級。

 A級は魔物もしくは魔族の討伐。

 S級は魔族の討伐と、それぞれのランクに応じて別れる為、低級ランクの者が魔族に挑む様な事態にはならない。




 「E級~D級は街の防衛の為に残るように。 C級~A級は魔物の討伐。 A級~S級は複数の魔族の討伐。 全員、死んででも帰って来なさい!」



『はい!!』





 そこらじゅうで魔物と冒険者の戦いが繰り広げられ、ある所では片手剣と魔物との摩擦で火花が散り、別の場所では魔法使いの爆炎が木々を燃やし、またある所ではメイスを持った僧侶がパーティメンバーの回復に専念していた。


 Sランクパーティ疾風は召喚された魔族の内の一体と激しい戦闘をしていた。

 同じくSランクパーティ青龍もまた別の魔族と戦っていた。


 A級冒険者は彼らS級を横目に、周囲の魔物に応戦。 C級~B級とは違い、難なく討伐していく。

 A級冒険者の中に一人だけ、異常な速度で魔物を討伐していく者がいた。

 A級ソロ冒険者ユウト・サトウだ。

 目にも止まらぬ速さで討伐してはアイテムボックスに収納していくその姿を見た者は、真紅のコートから紅蓮と呼んだ。




 大小様々な魔物を次々と討伐していくユウトを上空から見つけた、魔族は彼を目で追った。

 その魔族は他の召喚された魔族とは明らかに違い、額から3本の角を生やし背には大きな黒い翼を持っていた。

 森の中を低空飛行し討伐を繰り返すユウトに、その魔族は魔法を放った。



 常時発動している〈スキル 気配察知〉で、上空からの魔法を右手に持つ剣で一閃したユウトは、空へ上昇し魔族と目を合わせた。



 「我が名は、アイズ・ベルク。 上位魔族の一柱である。 魔物を殲滅する貴様を強者と見た。 他の者には手を出さぬ、よって貴様も我だけを相手にせよ」


 「簡単に死んでくれるなよ?」


〈闇魔法 デスペラーザ〉


 黒紫色の光線が目にも止まらぬ速さで放たれ、開戦となった。


 お互いに無詠唱で魔法を放ち、剣と魔法剣がぶつかり合う。

 森の中での戦闘は終了したのか、余力ある冒険者は上空での戦いに見入っていた。


 また、重症を負いながらも戦闘に勝利したS級冒険者たちも、固唾を飲む。

 明らかに、自分たちが戦い抜いた魔族よりも遥かに格上の存在と拮抗(きっこう)する冒険者の戦いを。



 「良いぞ! 認めよう貴様が強者であると!」

 「貴様を殺し、我が真の強者となる!」


 「何故、善良な命を無駄にしようとする!」

 「魔族だとしても命は平等だ。 戦争は憎しみを生むだけだと何故、わからない!」


 「力ある者が強者だ! 強者とは支配者だ! 弱肉強食! 弱き者は淘汰(とうた)される運命にある!」

 

 「貴様は何故、戦う? 『命は平等だ』と言ったな? 『戦争は憎しみを生むだけだ』と。 だが、貴様は強者であり魔物は弱者だ! 弱者を淘汰する貴様と我になんの違いがあると言うのだ!」


 「違いならある。 『善良な命を悪しき者から守る』こと。 アイズ・ベルク、お前は召喚された魔族だ。 そして戦いの中で生きる喜びを見出す戦闘狂だ。 今のお前に守る物があるとは思えない。 だから僕は、アイズ・ベルクという魔族から国を人を、悪しき者から守るんだ!」



 「貴様らが食す牛や豚に! 言葉の通じない魔物に! 鳴かれて殺すのを止めたことがあるのか?! 草木の悲痛な叫びに耳を貸したことがあるのか?! 魔族だからと戦いを止めない貴様らに! 命に対してとやかく言われる筋合いはない!」


 〈闇魔法:マキシマム・ド・カオス〉



 〈光魔法:マキシマム・ド・コスモス〉


 「それでも……守りたい人達がいるんだ!!」


 〈闇魔法 封魔一閃カオス・ソード〉



 「何?! 人族がマルチタスクだと!」



 アイズの魔法を押し返し、縦に一閃した。

 敗北し、真っ二つになったアイズは死ぬ間際に思念伝達を送ってきた。


 『光あるところには必ず影がさす。 闇があってこそ光はより輝く。 貴様がいて我がいる。 我が死ねば、貴様は……より輝きを増すだろう……』

 

 『輝け……強者よ』




 落下するアイズの死体を収納した。




 歓声の中、今回の緊急依頼は幕を閉じた。


読んでいただきありがとうございます。


副ギルドマスター二人がコソコソやった結果、魔族が出てきて一話内で終わる話でした。

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