Camellia bloom 5
いつも読んでいただきありがとうございます。
予定時刻通り更新できないことが続き申し訳ございません。
引っ越し作業で一番大変だったのは、不要物の処分だった。
今度入る部屋は、ドレッサー等の収納が完備されていて、必要な家具はほとんどなく、元々ボロい僕の家具は処分した。
古い家電も買い替えることにし、引っ越し先でも変わらなかったのは古くから使っていたデスクトップパソコンとそのモニターだった。
新しい家電のほとんどは札幌駅にある大きなカメラ屋で、新すみかのサイズに合う大型家電を購入し、引っ越し日に配達するよう手続きをした。
衣類についても、長袖Tシャツとデニムズボンくらいあれば何とかやっていけることに気づいて、普段着ていなかった服のほとんどを処分した。
旧すみかの片づけが終わり、新すみかへ物を運ぶ。
引っ越し作業中、ふと、ここはヒーロー椿の拠点として引っ越ししたことを思い出した。ここで、元のおっさんの姿で生活してしまえば、ヒーロー椿がおっさんだったということがばれてしまってもいいのですよね、というようなずさんな機密管理になる。
ヒーロー椿のままで生活しなければ、いずれボロを出して誰かにばれてしまい、ヒーロー椿=35歳の童貞メタボおじさんという図式が日本全国に知れ渡ってしまうわけだ。
知名度もランクも上がり、Fランだったころに比べて、僕の心に負うダメージは桁を通り過ぎて単位レベルで違いすぎる。ヤムチャとセルを比べるくらいに違うのだ。
それに新すみかは元道や高橋お姉さんが容赦なくいきなり、そして無慈悲に遊びに来そうな感じがしたので、下手に男物を置くわけにはいかない。
冒険者の装備は、ドレッサーの奥に保管しておき、簡単に見られないようにした。
ヒーロー椿に変身し、ステータス低下の腕輪1つ、そしてもう1つ追加してつける。
かなり体が重くなった気がした。試しに買ってきたリンゴを冷蔵庫から取り出して全力で握るとリンゴ汁がしみだしてきた。まあまあ、普通くらいだろう、多分。飛び散ったり、飛び散ったリンゴで誰かが怪我したりしないくらいだから、多分普通だ。
これでヒーロー椿の姿がそもそもヒーローに変身した姿とは誰も思うまい。
引っ越し作業がひと段落したので、食事に出かけることにした。
自炊? 引っ越し作業でこちとら疲れてんだぞ。そもそも、料理の腕凄いんです自慢する気なんてさらさらねえんだよ。普通の食事でいいんだ、家の中ってえのは。うまくて、塩分とか油とか気にしない食事ってえのは外でするもんだ。あと、面倒な時とかね。
そんなわけで、馴染みのラーメン屋超英雄に赴いた。
馴染みと言いながら、しばらく来ていなかった。
仕事を辞めて、一見ニートの暇人に見られるかもしれないが、色んなラーメン屋めぐりやコスパの良い食事処めぐりが忙しかったのだ。本当に忙しかったのだ。あの味、この味が僕を誘惑し、惑わされ、大変だったのだ。それに胃は一つしかないところが悲しいところなのだ。食べられる量というのは無理矢理増やせないのだよ。
まあ、超英雄の店長だって、小さいながらも一応有名店だし、忙しいから僕のことだってすっかり忘れているはずだ。いちいちお客さんのことを覚えていたらキリがない。
遅くなった昼の時間に懐かしい暖簾をくぐる。暖簾も日が当たりすぎて、日に焼けて薄くなってきた。
濃い豚骨の匂い、でも不快な臭さはなく、気品のある懐かしい匂いが漂ってきた。
店の中に入ると、ランチタイム終わりの時間だからかお客さんは僕しかいなかった。細マッチョのマリンカットの店長が背中を向けて、麺を1つ湯に入れた。
「吾郎さん、ちょうど残り二玉あるから替え玉できるよ」
そう言って、店長は振り返って僕を見た。数秒して、気まずそうな顔をした。
「あ、えっと、すみません。うちは豚骨ラーメンしかやってないですけどラーメン一つでよろしいですか? 他にもサイドメニューもありますので、よかったらメニューを見てください」
僕はいつものラーメンとサイドメニューのTKGを注文した。
店長は厨房に戻りながら、腑に落ちないような変な顔をしながら作業を開始した。
雰囲気だとかで感じる人もいるもんなのかな、むしろ覚えているもんなんだな、と感心するというか、なんか胸の中でおっさん姿の自分もそんなに悪いもんじゃないなと思った。
まあ、どうみても価値は美少女には勝てませんが。
こんなおっさんを気にしてくれる方々に感謝だ。
TIPs:テクニックなしのガチンコでりんごを潰せる握力 約80kg
感想、ブックマーク等ありがとうございます。とても励みになっております
誤字脱字報告も大変助かっております。




