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Drop dead D! 9

いつも読んでいただきありがとうございます

 メガネの細身のイケメンは、Sランクヒーローの『黒の夢』で本名かどうか知らないが、白井実(しらい みのる)と名乗った。もう一人の大学生くらいの女の子は高橋陽葵(たかはし ひまり)と名乗り、この子はAランクヒーロー『屯田兵子』だそうだ。

 白井君と高橋さんは近所に住む幼馴染で同級生だそうだ。何そのラブコメのような人間関係。なんかむかつくので、7人くらい子供を作って育てて日本に貢献してくれと言いたくなるが、僕は大人なので顔にも出さないように黙った。

 白井君は『黒の夢』の時とは全く違って、もうヤバい、テンションがめっちゃ低空飛行していて、本当に一緒にお酒を飲んでいて楽しいのだろうか不安になってしまうレベルだ。本人曰く、めちゃくちゃ楽しいらしい。陰キャを通り越して忍びの人なのかもしれない。

 高橋さんはちょっと小柄で明るい茶色に染めたボブヘアーで身長に似合わない胸を持っている。見た目通り明るくて、お姉さんキャラみたいだった。やっぱり胸がある分お姉さんだと思う。


(みのる)はいっつも暗い感じで話すんですけど、今日とっても楽しそうだし饒舌でびっくりしているんです」


 高橋お姉さんがニコニコ機嫌よく説明するものだから、白井君は本当にはっちゃけているのだろう。僕には全然わからないが。


「つばきー、私の飲み物はなんでおみずなのー」


「元道さん、未成年ですから」


 僕は元道の前にお酒を近づけないように気を付けた。

 元道が酔ってしまったのは、居酒屋で打ち上げをしていた時に、店員さんが持ってきたウーロンハイとウーロン茶を間違えたそうだ。どうやら一杯目で出来上がってしまったらしい。

 ちなみに打ち上げは元道と高橋さんがペアになって回復ヒーローとその護衛として勤務していて、たまには外でぱあっと飲みましょうということになったそうだ。

 外で飲むことになると護衛の高橋さんが酒を飲めなくなる、ということで幼馴染の白井君が見守ってくれるということになり、同席してくれたそうだ。

 本当ならば酔っぱらってしまった元道を連れて白井君と高橋お姉さんが元道を軟禁というか護衛している基地だか駐屯地に送るはずだったが、たまたま僕というかヒーローの椿を見つけて、白井君も高橋お姉さんも椿のことを興味を持っていたそうで、少し話をしないかと言われた。あまりお酒は飲まない僕だけど、おすすめのとある一軒だけはしごしたのだ。

 お店は大通の観覧車ノルベサの直近南西側にある『バー釜田』という北海道産日本酒バーだ。

 ここの店長は世界きき酒師コンクールの日本酒部門、焼酎部門で準優勝を果たした人だ。その人の店に置く酒が不味いわけがない。


 高橋お姉さんが日本酒をあまり飲まない人らしく、

「日本酒ってよくわからないけれど、どれを選べばいいの?」

と言ってきた。そうだ、日本酒初心者は何が美味しいのか全く分からないし、そもそもどのお酒が自分の好みに当てはまるかわからない。


「今の世代の人たちが飲みやすいと言っているのは、香りが華やかで甘めのお酒だね」


「お店の人が詳しいから聞くといいよ。すみませーん」


 僕は店員さんを呼んで、メニュー表にない、店内の冷蔵庫にあるお酒で、吟醸香があって甘めのお酒はどれかと質問すると、


「いくつかおすすめがありますが、なかなか手に入らないお酒で、吟醸香があって辛口と言われているけれど甘いお酒があります。多分次手に入るのは来年かも」


と言われたら、絶対それ飲んだ方がいいに決まっている。僕らはそれお願いしますと答えると、ワイングラス3つとそのお酒の瓶を持ってきた。このお店は日本酒はワイングラスに注がれるのだ。コップやマスではないのだよ。シャレオツなのですよ。

 店員さんが持ってきたお酒のラベルには、上川耐雪酒造六稜乃蔵と書かれており、そこの純米大吟醸酒だった。


「ここの杜氏さんは銀滴酒造さんの再生を担った杜氏さんで、銀滴吟風を生んだ人です。現在は上川耐雪酒造さんで総杜氏をされてます」


「あのお酒知ってます。その杜氏さん退職して、もう作られなくなるかも、と酒屋さんに教えてもらって買い占めました」


「あのお酒の出来は非常に良かったですからね。ここでも置いていました」


 店員さんは、お酒をグラスに注ぎ、僕らの前に置いていく。熟した果物を割ったような香りとアルコール。とても嗅いでいて気持ちがいい。


「そうだ、なにかフードも頼みましょう、ここの卵焼きと唐揚げは絶対注文するべきです。ここの店長は元々居酒屋をしていたのでどのフードも美味しいんですけど、この2つは絶対おすすめです」


「フライドポテトがあれば食べたいな。他には……」


「このお酒、イカの塩辛なんか合いそうですね」


 白井君は僕をちらりと見ると、急に今にも吐いて死にそうな顔をしていた。瞳孔が開ききったような瞳をしていて、とても濁っていた。


「椿さん、イカの話だけは止めてくれないかい」

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[一言] >白井君は僕をちらりと見ると、急に今にも吐いて死にそうな顔をしていた。瞳孔が開ききったような瞳をしていて、とても濁っていた。 >「椿さん、イカの話だけは止めてくれないかい」  当人はもう吹…
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