Fラン 2
グヘヘ。
美少女ヒーローになってしまい、慌てて解除方法をネットで見つけて、8回くらい騙され、何とか解除できたのは数日前の話だ。
その時は、自分の身体を舐め回すように見る心の余裕はなかった。このまま元の体に戻らなければ、仕事に行けねえ、とか、家族に二度と会えない、とか、戸籍とかどうすんだなど滝汗状態だった。
今は違う。
あの時のことは、若さ故の何とかさ。
今の僕は性の搾取を企む悪い大人さ。僕を例えるなら、自分の子供をジュニアアイドルとして売り込み際どいイメージビデオに出演させるような、そんなクズ野郎さ。
でも、その前に味見してもいいんじゃないかな。具体的にはシコッティーを手に用意して、あられもない姿になった自分の美少女姿を鏡に映して、あんなところやこんなところをシコッシュしてシコリーヌするようなことさ。
ふひひ、たまんねえな。そして、僕が遊び終わった身体、中古となった身体をヒーローチューバーとして収益化してやるとか、マジ反骨精神丸出しだぜ。
まずは、両腕を平行に開き、そのまま10度上方向。左腕を曲げて、足は体操の伸脚し、
「へ~んしんッ!」
と安アパートの壁に優しい声量で叫ぶ。すると、どういうことでしょう。35歳のくたびれたおっさんはこの安アパートにはもういません。銀髪で赤い瞳のミドルティーンなハーフ顔の美少女がヒーロー変身ポーズをしているではありませんか。
「僕はッ! 世界の勝者にッ! なルゥッ!」
僕は左腕に固定されているパイルバンカーや警棒を格納している楕円状の盾に向かって、
「パージッ!」
と叫ぶと、盾は外れて床に落ちる。
すると、隣の部屋から、ドンドンドン、と叩く音が聞こえる。ちぃ、壁ドンかよ。ぶちのめすぞ、パンピーめ。
僕はいそいそと慣れないコスチュームを脱いでいく。白色を基調にし、ところどころ赤い花があしらわれた衣装だ。まるで、白い椿と赤い椿が乱れて咲いているようだった。
フヒヒ、全裸だ。全裸。槍を持てば裸族だ。
胸の奥から、消えた息子から、熱いリビドーを感じる。初めて買ったエロ本を手にした時のようだ。震える手、憤る肺胞、暴れる心臓。
僕は、今日、僕という世界の歴史の1ページに偉大な功績を記すのだ。
僕は、駆け足で洗面所の鏡の前に立った。
鏡の中には顔を火照らせた35歳のメタボリックな童貞おっさんがブーメランパンツを穿いて立っていた。
よし、死のう。