童貞よ、永遠に 1
いつも読んでいただきありがとうございます。
タイトルは最終章を示すものでもなんでもありません。
ただ、語呂が良かっただけで選んでます。
ラーメンを注文したら携帯をいじる。
僕はそんなにラーメン屋フリークだとか意識高い系ではないので仕方ない。
ラーメンを待ちながら、元道がその後どうなったかインターネットで調べればマジ余裕でした。
しかも、ヒーロー椿のことが書かれた便所の落書きこと有名な匿名掲示板にあった。
若干メンヘラ気味のブラック回復ヒーローとして頑張ってもらいたい。
ヒーロー課直下で囲われるなら、生活環境ががらりと変わるので、もしかしたら一部の病んじゃってる思考は治るかもね。生活環境って大事だ。
ちなみに国家公務員については、懲戒処分の指針にセクハラ・パワハラで重大ものをした場合、処分が免職まである旨の記載があるので、ヒーロー課で冗談でも元道に椿全裸放送事件の話題を向けることはできない。
ある意味で一番、精神的に良かったのかもしれないが、忙しさのあまり過労で心が病むかもね。それは僕のせいじゃないので知らない。だって、僕は所詮童貞だもの。
そんな童貞の僕の筋力等の肉体にかかるものについて、ステータス上の数値がとんでもなく上がった。多分右手をよく使っているからだろう。
嘘だ。
ヒーロー化した元道の回復技のせいだと思われる現象だった。
先祖の元通りんの建物修復技は、他人の記憶から建物等を復元するものだった。
他人の記憶が美化されたものだったり、元通りんが勝手に誤って解釈した場合や手心を加えた場合も、そのとおりに復元されてしまう。元通りんの聖遺物と言われるものは、元通りんが、建物は頑丈に復元された方がいいでしょう、と思っててきとうに直したものだから、200年以上たった今でも怪人・怪獣に攻撃されない限りはほぼ壊れない。
その力の片りんとして、僕の体を回復させた際に、元道は怪人の攻撃を生身の人間が弾いているところを見て、とんでもない力の持ち主、と思い込んだに違いない。そのせいで、元道は僕のステータスがはっちゃけた数値だと思い込んで『復元』してしまったのだろう。そういうわけで、冒険者のレベルは低いにも関わらず、ステータスがレベル100越えの人間と同等の数値になっていた。もちろん、魔力と運はそのままだ。
イケメンオーク怪人との戦闘は、本当にオークとの戦闘で身に刻んだ技術のみだ。火事場のバカ力ではないし、ヒーローの力が漏れ出ていたとか、主人公補正とかそういうちょっと憧れる素敵な現象ではなかった。
とにかく、そんなせいで、常時ステータス低下リング、通称ドクロリングを着けなければならない。
東区には数少ない良心の塊と言える店舗がある。もちろん、個人の主観だから本気にしてはいけない。
そのうちの一つ、麺屋優しい月曜日だ。場所は北12条通りを北海道大学から伏古方向へ進行し、おぼっちゃまお嬢様中高一貫校を通り過ぎ、交番を通り過ぎて信号交差点を2つ進むと、東13丁目になり、そこにそのラーメン屋がある。
周囲にはアパートが立ち並ぶ他には保育所があり、子供のはしゃぐ声が微笑ましい。
ラーメン屋の裏には道道273号線が通っており、餃子屋さんやセブンイレブンがある。
店内は、アイボリーの壁紙が貼ってあり、無骨な手作り感のある木製テーブルと木製椅子、小上がりは木製の床によく綿が膨らんだ座布団が置かれている。
そこの店主は珍しい女店主で、ここで僕が勧めたいラーメンも女性らしい考案だと思う。
エスニックカリーラーメンミニサイズ、中ライス付きのセットだ。男性なら物足りない感じのするセットメニューだが、意外とちょうどいいサイズ感なので、若い男性も安心して注文してほしい。
このラーメン、いわゆる半ラーメンになる。しかし、このラーメン、普通のカレーラーメンではない。スパイスの香り高いスープカレーにラーメンが入っている感じだ。しかし、ラーメンにすごく合う。カレーラーメンをあえてラーメン屋で選ばないのだが、この店はあえて選ぶべきだ。ラーメンを食べた後、そう、中ライスだ。よく考えたもんだ。スプーンにご飯を少し入れてカレーラーメンスープに浸せば、スープカレーとしても楽しめるということなのだ、このエスニックカリーラーメンというやつは。
小出しにして満足感を最大限に引き出す、店主、貴様、できるな、と呟きながらラーメンを今日もすする。
ここのカレーラーメンを食べて心のデトックスをしよう、そう思う時によく来る。
心のデトックスをする理由、それはなんだかんだで元道との冒険者生活が急に消えた喪失感のせいだろう。
美少女と一緒にダンジョン潜るだなんて、なろう小説ぐらいでしか存在し得ない。まあ、ヒーローに変身すれば同じ顔なんですけどね。
ラーメン屋から出る時に、店主の娘さんらしき若い子が会計をしてくれた。おっさんみたいにつまんない大人なるなよ、とそっと祈りながらお店を出た。あと、回復ヒーローにも、絶対に、間違っても覚醒しないことを祈った。
札幌市は地下鉄もバスも通っているが、車がなければ生活は難しい。暇人の僕は車を使わないけれどね。ぶらぶら歩いて地下鉄駅を目指し、食後の運動で一駅分歩こうかなとさらに距離を伸ばそうとした。
北方向に歩いていると、獣臭が漂ってきた。少し遠くを見れば、ああ、熊だね。ありゃヒグマだ。
そうそう、道民は地位の高い人ほど大きなヒグマを飼うのがステータスとなっている。よく観光客が、手綱にひかれたヒグマと散歩をしているおば様を見て腰を抜かすのなんて、札幌大通りではあるあるネタだし、テレビニュースで天気予報の他に、必ず熊予報が放送されており、「今日はお腹を空かせたヒグマが降りてくる確率は80パーセントですよ」とか、「コグマの出現率は50パーセントですので、もしかしたら捕まえて飼いならせるかも」とかキャスターさんがニコニコしながら放送されるのだ。
んなわけねえだろうが。
そんなこと道民の前で、特に酪農農家さんの前で楽しそうに言ったらぶっ飛ばされるぞ。実は鹿予報が北海道にある、とか抜かせば野菜農家さんや新車を大破させられた鹿事故被害のドライバーや、何故あの巨体に体当たりするのバカなのと汽車の下でピクピクしている鹿に時刻ダイヤが狂わされた怒りで震えるJR職員に首をねじ切られるぞ。
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小説内に出てくるラーメン屋さんの元ネタのお店に興味ある方は是非行ってみてください。ちなみに超英雄の元ネタのお店は閉店されてます。とても好きだったのですが残念です。




