Fラン 1
ヒーローにはランクがある。同様にランク付けされた怪人や怪獣がおり、同ランクならヒーローが難なく倒せる、という目安だ。
上からS、A、B、C、D、E、Fとなっている。
ランクを見ると、塾に通っていた時のことを思い出す。
模試の評価で、塾講師が
S=素晴らしい
A=安全
B=ベター
C=チャンス
D=デッド
E=エンド
F=ふざけんな志望校選び直せ
となるからな、と熱く説明していた時の僕の模試の結果については、志望校の国立大学がF評価だった。
そんな思い出深いF評価は、今のヒーローランクと同じなので感慨深いものだ。
ヒーローのランク付けについては、デビュー戦直後は概ねEからスタートする。
大体のヒーローは強力な遠距離攻撃や必殺技と呼ばれる技を持っており、Fランクに指定されることはない。
つまり、僕のヒーロー変身後の能力は、霞ヶ関の官僚も軽くため息を吐く程度のザコ判定というわけだ。
そりゃ、脳死系誘導型遠距離攻撃の連続でマジ最強の時代に、無誘導の単発パイルバンカーに警棒だけじゃあね。
でも、全身タイツで素手のみの『初代』に比べれば恵まれている気がする。まあ、あれだ、これがゆとり世代というやつの思考というやつだよ。
でも、あれじゃん、最弱からの成り上がりとか格好良くね、と思ったりもするけれど、35歳のおっさんが夢見すぎじゃね、と見づらい現実を直視しなければならない。
例えば、35歳で特殊技能や資格なしでの再就職は難しいのだ。
「馬鹿野郎、遅いうえに、中身足りねえじゃねえか!」
高齢のジジイが怒鳴りやがって。
若干現実逃避していた僕は制服の帽子のつばを握って、たたずまいを直し、頭を下げる。
僕の仕事は『トドクン』という食品や生活用品の宅配サービスをする配達員だ。
仕事自体はたいして大変ではない。決められた人の家に配達することがメインで、たまに面倒だけどウナギとか魚沼産コシヒカリなんかの販売の営業をしたりすることもある。配達する家は大体高齢者の家が多く、いつもありがとう、とか言われて飴玉とか缶ジュースとかくれたりする。
しかし、一番面倒なのは、クレーマー気質の高齢者の配達だ。あいつらは何をしても文句を言う。末端の配達員に怒鳴ってどうすんだ。バカなの。今回のクレームも時間は予定時間に配達しているのに文句を言ってくる。それに、中身が足りないのは僕のせいじゃなくて、荷造りした店のババアどものせいだ。まあ、僕も信じて確認が足りなかったことは原因かもしれないが、でも元凶は店のババアだぜ。ちっくしょおおお!
でも、末端の配達員の僕らは結局、喧嘩腰に話すことはできず、すみません、持ってまいりますのでお待ちください、申し訳ありませんが、今持ってくることはできませんので、いつ持ってきたらよろしいでしょうか、などと謝るしかない。まじふぁっくな仕事だ。
結局、高齢常習クレーマージジイの言いなりになる羽目になり、即時別の職員が商品を持っていくことになった。この後、めっちゃ怒られるの担当した店のババアじゃなくて僕なんだぜ。
そんなわけで、仕事辞めたくなった。
そうだ、椿吾郎はエロヒーローユーチューバーとして名を馳せよう。
まさか、評価やブックマークしてもらえるとは思っていなかったのでびっくりしています。ありがとうございました。
思いつきのまま書いていますので、変な表現、誤字脱字あると思いますが暖かく見守っていただけると助かります。