Ecstasy 11
更新遅くなりすみませんでした。
札幌市東区と札幌市白石区の境界は豊平川であることが一般的に知られている。
同所付近の豊平川は幅は約100メートルくらいあり、サイクリングロードという道路が対岸共に走っており、自転車しかり、ランナーしかり、登校下校する高校生しかり、登校下校する高校生狙い撃ちのカツアゲするクズ不良がいる。
雑木林や緑地公園等があり、札幌市の中心部に近い中で数少ない自然あふれる場所だ。たまに首つり死体やミイラ化死体が見つかったり、川に流れた人が見つかったりもするドキドキスポットだ。
豊平川の東側、つまり白石区側になるのであるがその岸の一部が東区の飛び地だったりする。
住所的には東区東雁来なのだろうか、実際はよくわからない。
付近には札幌市白石区米里の住所表記があり、札幌新道の直近の南側から豊平川の河川方向へ走行すると、最後に通行止め看板があり、その直近に駐車場がある。
その場所に進行する200メートル手前くらいの分岐には関係者以外立ち入り禁止の看板が立てられている。夜中勝手に入っていちゃついているカップルが警察に職務質問されていることがよくあり、その場面に気が付いた時は、ざまああwwwと思う35歳童貞です。どうもみなさん、こんにちは。童貞美少女性格クズヒーロー椿吾郎です。
撮影スタッフの女性が運転する車の助手席に乗っていた僕は、その駐車場で降車した。
――タクシーで向かいたかったんですが、怪人とかの場合だと危険に他人を巻き込むな、という指示なので会社の車なんですよ。
喫茶店まで軽ワゴン車を他のスタッフの方が乗ってきて、危険地帯では最低人数での撮影、ということで僕を取材していた女性スタッフ1人だけ一緒に怪人出現場所付近に来たのだ。
男女平等ということで、女性1人だけでも向かうらしい。ちなみに車を持ってきた男性スタッフはつい最近別の怪人との戦闘の撮影を単独で行ったので、免除ということらしい。
――不謹慎なんですけど、取材の時に出動要請が入って良かったです。たくさん良い絵を撮るので、よろしくお願いします。直近で独占撮影だなんで、ボーナス期待できそうだなぁ。
生きて帰れるだなんて誰も保証もできないのにお金の心配をするなんて……なんてメンタルの強さ。
本音だだ洩れすぎて裏を感じない人だなと僕は思った。
怪人との戦闘直前にはほとんど見る機会がなかった配布された携帯端末の液晶を見つめる。
そこには、予測される怪人または怪獣の特徴等が表示され、今回は珍しくスクランブルではないのでじっくりと見ることができる。
怪人・怪獣予報
90パーセントの確率で過去に出現したデロリアンが出現するでしょう
デロリアン
スライム系怪人 Eランク
触れたものをゆっくりと溶かす
体の中心にある拳大の核を破壊すると死ぬ
今までの対処事例
1 遠距離技で核を破壊
2 近距離技を繰り出す際の衝撃波でスライム部分を吹き飛ばしつつ核を破壊
なんと対処方法まで表示されるとかなんという素敵な設定に、僕は感動を隠せない。
スクランブルで出動すると、こんな表示なんて全くない。
なんでいつも、ハードモードなんすかね。
出現予定時刻が迫ってきたので、出現地点から十分離れるように、テレビ局の女性スタッフに移動を促した。
予定時刻から数分遅れて、確かに人型のスライムが現れた。
色は水色で、棒人間みたいな感じだけど、ネトネトしている感じは見た目だけでなく聴覚からも感じる。
早く片付けよう。Fランクに毛が生えた怪人だと思って油断したら死亡フラグだ。大体僕の敵は、想像や対策の斜め上を行くことが多い。僕は盾に一体化したパイルバンカーをデロリアンに向けて構える。
パイルバンカーの照星と照門を核に合わせる。核に、あわせる?
おい、核がねえじゃないか。
ちらりと女性スタッフの方へ視線を向けると、カメラを持っていない左手を大きく振っていた。
――すみませーん! 核どこにあるんですか? ヒーローだと見えるんですか?
見えねえよ、ふぁっく!とは流石に言えない。だって、カメラ回っているんだぜ。そもそもカメラ回っていなくても、小心者の僕にはできないしできるはずがない。
「見えないです! 予想が外れたみたいです!」
やっぱり、そういう運命なんですよね。予定外の怪人を引くさ。
僕はため息を吐きながら、天をあおいだ。
――き、来てますよ!
シューと地面を這うように滑る音と女性スタッフの声で、我に返ると既に、体に人型のスライムが絡みついていた。剥がそうとしても、一部がちぎれるだけで、全く効果がなく、どんどんスライム人間は薄くなって僕の体を包んでいった。
終わった。全身溶かされるか窒息させられるパターンだ。
Eランクだからと言って舐めてかかるとろくなことがない。EはエンドのEだ。まさに、ジエンドだ。
じゅわじゅわと響く音が聞こえてきて、僕の終末は近いと悟った。
でも、痛みは全くない、既に痛覚まで失うほど溶かされたのかと思っていると、何かがおかしい。
女性スタッフはカメラを僕に向けて、カメラの赤色ランプ点灯のRECモードで撮り続けている。それに何か開放感すら感じられる。
僕は左腕を見ると、確かに盾が溶けてなくなり、コスチュームもほぼすべてが溶けてしまっていた。皮膚は、おかしい。異状ない。
まさかと思って全身を見るとコスチュームがほぼ溶けてなくなっているが、皮膚への浸食は全くなかった。
くそっ、僕の敵はやっぱり変態系ばっかりじゃねえか!
このスライム人間、僕の体以外を溶かしているんだ。
しかし、よく見ると、左手に着けたEDの指輪と、靴下は溶けていなかった。
おそらくこの怪人の性癖なのだ。溶かすのは指輪と靴下以外の着衣。
くそっ! 何たる屈辱! 何たる侮辱!
僕のほぼ全裸が全国生放送じゃねえか!
僕の裸は僕だけの物だ! 許すまじ!
「と、撮らないでください!」
僕の声に、女性スタッフが、ハッとしてカメラを別方向に向けた。
そして、遠望で撮影しているだろう、各テレビ局の基地局の方へ睨みつけた。
カメラを止めろ、止めないと日本の法律、公然わいせつ物陳列罪が黙っちゃいねえぞ。さらに見た目状は児童ポルノ禁止法違反に該当しかねるぞ、と目で訴えた。
全身に炎をまとう様に僕の怒りのボルテージが上がっていく。すると、キュピーンと音が頭に響いた。
必殺技を覚える福音が響くと、その使い方も一瞬で理解できる。しかし、今回は必殺技ではなかった。装備の仕様変更、改変だった。
僕は全速力で走りはじめ、トップスピードになった瞬間、急ブレーキをかけた。
すると、スライム人間がべしゃりと剥がれて前方に飛んで行った。
僕はそのスライム人間の飛んでいく先に左腕を突き出し、盾を召喚した。
盾は今までの盾とは形が変わり、楕円形の盾が逆三角形を伸ばしたような形状に代わっていた。
盾に付いたスイッチを押すと、先端から白い棒状の金属が勢いよく飛び出し、スライム人間の付着した地面に突き刺さった。
そして、爆発した。
土砂が飛び散った中から僕は這い出て、盾で庇っていた女性スタッフを起こした。
――酷い目に遭いましたが、いい絵が取れました。
咳払いをしながら、ニコニコと笑顔の女性スタッフさんの言葉を聞いて、彼女のメンタルの強さが僕には眩しかった。
カメラの動作を確認して、異状がないようで、赤色のランプを点灯させたカメラレンズを僕に向けた。
――とりあえず、何か着た方がいいですよ
なぜ、全裸の僕を撮影するんだい。
僕は爆心地を見ると、跡形もなく吹き飛んだ状況を確認できた。
破壊の範囲は直径50メートルくらいの範囲をぺんぺん草も生えないほどに破壊し尽くしており、怪人のオーラも完全に消失していた。
パイルバンカーの破壊力がとんでもなく向上した。
ぶっちゃけ、ミサイルよりもヤバいか何かだ。
そこで、僕はふと大事なことに気が付いた。
僕は多分スクランブル以外での出番無くなる。
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