Ecstasy8
いつも読んでいただきありがとうございます。
更新が遅くて申し訳ありません。
かの昔、瑞宝舎という2つの大きなビルを構えた問屋があった。
場所は札幌市北区北10条西3丁目、札幌駅北口よりも北側、ヨドバシカメラよりも北側で地下鉄南北線北12条駅よりも南側と言えばわかるだろうか。
その問屋は一般販売もしており、区分けはされているが、ビル内に敷き詰められた商品を探す状況はいわば迷路のようで、現在のドン・キホーテの走りのような大型ディスカウントショップのようだった。
元々は高級時計やカメラ、宝石、貴金属等を売っていたが、お客さんの要望なのか、贈答用のお皿や電化製品、事務用品、食料品、スキー用品や釣り具、5月人形にひな人形、トロフィー、さらにはタイヤまで売っていた。
値段も問屋だけあって安く、特に指輪や宝石は5掛け(50%引き)、7掛け(30%引き)で販売されていた。
時代の流れか、ネット販売に押され、また後継者がいないということで、この瑞宝舎をよく知るお客さんたちからは惜しまれながら閉店した。
しかし、ダンジョンがこの世に発生したことを契機とし、同社の縁者が立て直しを図った。
そして、その店は従来どおりの品ぞろえの他、専属の職員をダンジョンに潜らせて、同ビルの地下にダンジョン産のアイテムを並べ、ダンジョンアイテムの問屋として存在している。
今、札幌で第二瑞宝舎を知らない人はいない。
僕は第二瑞宝舎の地下3階ダンジョン産アイテムの装飾品販売所へ来ていた。
薄暗く、少ししっとりした湿度はダンジョンに来てしまったような、アンダーグラウンドに来たような胡散臭い感じがする。でも、この胡散臭い気分が良いのだ。
僕は指輪の棚へ歩き、ショーケースを覗いていると、男性の店員さんが近づいてきた。
「女性へのプレゼントですか……ああ、もしかしてお子さんに?」
「ああ、そうなんだ。今年ボーナスが良かったんで、甥っ子にね」
適当に僕は店員に誤魔化しながらじっくりと見ていた指輪は『賢者の指輪』と言われるものだ。
賢者の指輪はIQ100の者が装備した場合、概ねIQ110まで引き上げる効果が認められており、特に計算速度や記憶力が上昇するそうだ。
テストや入試試験の時の着装は禁止されているが、勉強時には勉強の効率が上がるため、教育熱心な家庭はこぞって購入している。
そのため、値段を高く設定しても飛ぶように売れる。
僕は半ば諦めていたが運よく見つけられた。
値段もFラン怪人1人分の討伐報酬が持っていかれる。僕みたいな底辺サラリーマンの1年分の手取りだぜ。
「お客様は運がいい。これは3日前に入手してきて、今日お店に出したばかりなんです。その代わり、性能が劣っていまして、IQ100がIQ105程度に底上げされるものです。その代わり、お値段は少しお安くなっています」
「そうか、他にはないのか?」
「他は1点だけありますが、IQ115相当へ引き上げる物なので、普通の物に比べると1桁値段が高くなってしまうので、お得感はあまりありません」
「まじか、1桁は流石にお手上げだな」
「個数を多くつけても効果は上乗せされますので、こちらの棚の商品もなかなかの掘り出し物と思いますよ」
「そうですね……では、これ包んでもらっていい。支払いは現金だけどいい?」
一瞬、店員の顔が引きつった。数百万の商品を現金で買うやつとか、普通に迷惑だ。そもそも、このキャッシュレスの時代に。
「かしこまりました」
店員は何もなかったように、ショーケースを開けて、丁寧にラッピングをしていった。
第二瑞宝舎を出た僕はガッツポーズを決めた。なんだなんだと視線を向けられて、僕は
「治まれ、僕のディザイアッ!」
と心で叫んで、正気に戻り、自宅に向かって歩き始めた。
賢者の指輪は僕自身の頭を良くしようと思って買ったわけではない。でも、こんなバカな行動をするくらいなら、もっと早くに着けた方が良かったなと思った。
賢者の指輪の副作用の方が大事なのだ。勉学に励む者には不必要なもの、性欲の著しい減退。その効果は強力で、冒険者で若い女性がいるパーティにいる者が、目のやり場に困るということで実験的に付けたところ、何をしても股間が反応しなかった。そして、その実験をしている自分自身がバカなんじゃないかと冷静に思ったと記録される程だ。
まさに、この賢者の指輪の副作用とは名前のとおり、着けたものを賢者モードにしてしまうのだ。
ちなみに賢者の指輪のことを冒険者同士では『EDの指輪』と言って馬鹿にされたり、着けているものをチキン野郎と嘲笑されることがある。
全国放送の取材で、僕はブーメランパンツおっさんとして報道されないように、これを着けて取材を受けるッ!
とりあえず、賢者の指輪の効果について確認せねばならない。
丁寧にラッピングされた指輪の箱を破り、自分の左手の中指に着けて、一通りお世話になっているエロサイトを閲覧した。
マジでムラつかない。やばい、男性としての尊厳を奪われた気分だ。
しかし、動画や静止画ではなく、生身の人間ではどうだ。
取材に来たスタッフがボンキュッボンの若いめっちゃ美人のお姉さんで、且つ胸元等を剥き出しにするような薄着だったら、僕はきっと、一部にずっと視線が行ってしまう。指輪の効力がなかった日には、映し出された僕の姿に視聴者が目を塞ぐことになるだろう。
僕は札幌市中央区大通りを南下し、国道36号線を渡る。
そこにはススキノと呼ばれる、繁華街がある。飲食店や居酒屋もあるが、北海道の性の都だ。一部の男性には聖都と呼ばれ、神聖視されている。
風俗店で実験して効果を確認できれば間違いない。
感想やブックマーク、評価等ありがとうございます。




