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Ecstasy6

いつも読んでいただきありがとうございます。

初めてブックマークが100件超えました。

登録ありがとうございます。


 数日後、お医者さんから退院許可をいただいた。

 無事、体に後遺症もなく出られただけでなく、これで出前以外の薄い味のごはんから解放されると思うと喜びもひとしおである。

 よく耐えた、椿吾郎、よく頑張った、椿吾郎。

 感動のあまり、自分を自分で褒めることしかできない。

 退院許可と同時に、ヒーロー局へ早急に出頭するように、とお医者さんから伝えられたので、退院して早速の焼肉ランチは体や服に染みつく匂いがヤバいので諦めなければならない。いや、でもリセッシュすれば、と頭の中で誘惑の言葉が囁かれたような気がするがここは我慢だ。きっと、我慢の先にランチにはなかった素敵な焼肉ディナーが待っているに違いない。一人焼肉とかなかなか難易度が高いけれど。


 札幌市中央区大通。

 大通は雑居ビルや高層ビル、デパートの丸井今井、札幌市で初めて確認されたメイド喫茶があった狸小路、ノルベサというカップルが乗ったら高確率で別れることで有名な観覧車が目印の商業施設のあるオフィス街と飲食店街がある。

 マクドナルドと北海道一有名な交番の薄野交番が面している国道36号線を境に南側に行くと街の雰囲気が変わり、飲食店や風俗店の多いススキノになる。

 大通は行きかう人であふれている。スーツ姿のサラリーマンやOL、観光客の若者や学校帰りの中高生、デパートに買い物に来たおば様、ススキノのお店に出勤するのだろう高級ブランドっぽい服を身にまとったスタイルの良くていい匂いの漂うお姉さん。

 その中に異物として視線を向けられるのは、身長165センチメートルくらい、太陽の光に当たると淡い紫色に輝く銀色の髪、瞳の色は赤く、腰の高さは一般的な日本人よりも高く、白人とアジア系のハーフのような顔つきの15歳くらいの少女。

 つまり、35歳童貞美少女ヒーロー椿吾郎のことだ。

 真実を知る人はいないだろうが、知っている人はマジですまんね。

 最近はヒーローや冒険者という仕事をしていないと思うので無職やニート属性もついているのでマジすまんね。 

 フードを被って歩いていても顔立ちが目立つようで、通りすぎる人の視線が僕の方へ向けられている感じがした。自意識過剰ならそれでいいが、ヒーローになったまま歩けば視線を向けられる感じが結構わかるようになるのだ。もっと鍛えなきゃ、僕の鈍感力。

 ヒーロー局に向かって歩いていると、僕をガン見していた通りすがりのセーラー服姿の女子中学生3人が近寄ってきた。

 やばい、刺客か、それとも怪人か、もしかしたらカツアゲしに来たやっべーやつかもと戦闘態勢を取ろうとした。


「つばきさんですよね。サインください」


 女子中学生の一人に唐突にそう言われて、可愛らしい手帳の真っ白なページとどんなオファーも受けるキティ―さんのボールペンを僕に差し出された。

 僕は、


「え、あ、はい」


としばらく会話をしていなかったコミュ障のように返事をした。もちろん、コミュ障は僕の持病で間違いない。


「やっぱり、本物のつばきちゃんだ」


 女子中学生3人はキャッキャと飛び跳ねるように喜び、握手してください、だとか、いつも応援していますなどと言ってきた。やばい、こんなこと言われると思っていなかった。もしかしたら怪人からの精神攻撃かもしれないと勘繰るが、怪人特有のオーラは彼女らから感じないし周囲からも感じない。むしろ、周囲からは羨望のまなざしを向けられているような視線を感じた。

 サインなんてどう書いていいかわからないので、


「サインなんて、配達で受け取った時に書いたくらいしかないから、普通に書いてもいいのかな」


と僕がそう3人に伝えると


「それだと寂しいから……そうだ、名前の後ろを可愛くしてください」


とレベルの高い要求をされた。可愛くってなんだ。僕は女子力ZEROなんだぞ。

 僕は仕方なく『椿吾郎、童貞さ』と楷書体でおっさんらしく書こうとしばらく迷ったが、すぐに通報されるに違いないと思い、『つばき』とひらがなで書いた後に『き』の最後の部分を伸ばしてハートを書いた。

 女子中学生らは、たいそう慶んでいると、周囲で見ていた方々がどんどん蝟集し始めて写真を撮られ始めた。だから、許可なしの撮影って肖像権の侵害で訴えられるんだぜ。エロを想像し、写真に写るブーメランパンツのだらしない半裸のおっさんを納めさせてやるテロを起こしてやりたい。

 まあ、ブーメランダメージは僕に入るんですけどね。

 僕は他のサインを求めてきた声を


「ごめんなさい、急いでいるので失礼します」


と遮って、宙に舞い、ヒーロー局の建物へ向かった。

ブックマークや評価等ありがとうございます。

とても励みになります。

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