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Eternal Fortitude 9

いつも読んでいただきありがとうございます。


 B級戦隊モエレンジャーが蒸発した。

 僕は衝撃波を盾で防ぎながら、彼らが光の中で塵になるのを唖然としながら見ていた。

 鬼ヶ島で桃太郎とキジがやられた猿のように僕は逃げまどいながら身を隠した。

 僕は瓦礫の下にスライディングしてプルプルと震えながら様子を見守った。アルマジロ男は光線を発射し終え、発射口どころか全身から蒸気を噴出していた。

 どうか神様、僕の存在に気付きませんようにと手を合わせて擦り続けた。

 幸運なことにアルマジロ男は僕のいる瓦礫の下の方に気が付かず、そのまま別方向へ動き始めた。ふぅ、死ぬかと思った。後は別のハイスペックでエグゼクティブなヒーローに任せよう。Fラン脳筋近接型の僕には無理なんです。僕はプルプル震えながら瓦礫の下から別の瓦礫の下へ進みながら、アルマジロ男の様子を窺った。

 アルマジロ男の後ろには光線を放ってえぐれた深く幅広い跡が走っていた。そして、やつの正面には高くそびえ立つテレビ塔やビルが見えた。いやあ、ヒーローになるととても遠くのものまで見えるようになりますね。ほんと、見えたくない時に限ってよく見えること。アルマジロ男が頭を開いて光線を放った銃身もよく見えます。近いからまあ当然っすよね。こりゃ、札幌市中央区大通り付近まで真っさらになって、玉ねぎ畑おこしに精が出ますことよ。

 ちっくしょおおお!後ろ向いて何も見ずに逃げりゃ良かった!そんな大惨事予見させられる光景を見ちまったら、逃げるに逃げられないだろ!マジふぁっく!他のヒーローマジキボンヌ!

 でも、あれじゃん、きっと望遠撮影されてるじゃん。逃げたら絶対アップロードされてさらされるじゃん。ネットのさらし板やSNSではヒーローの敵前逃亡なんて恰好の餌だ。社会的に死ぬか、肉体的に死ぬか選べってか!

 悲しいね。ヒーローは敵を選べないのよね。ふぁああああkkkっく!


 僕は瓦礫から飛び出して、アルマジロ男に向かって走り出した。アルマジロ男は接近した僕には全く気付く様子がなかった。ヒーローや怪人、怪獣にはオーラというようなものが体にまとわれているのだが、高ランクの者からすると、ものすごく格下の低ランクは、お前パンジーじゃね?というくらいにしかオーラは感じられないし、その逆だともの凄く威圧感を感じたり、仲間だったら安心感を感じたりするものなのだ。

 僕は車をかっ飛ばすような速度でアルマジロ男に接近しているが、その一歩一歩がとても重く、長く感じた。できれば、そのまま反転して逃げ出したい、と感じるのだ。

 僕は重くなる足を無理やり上げて疾走する。アルマジロ男はようやくこちらに気づいて振り向くと、銃身の前には光が発生していた。やばい、マジヤバい、消し飛ばされる。

 アルマジロ男との距離は十歩程度の距離まで詰めていた。僕は発射される前に勢いよく飛び跳ねた。

 アルマジロ男は僕を追いかけるように頭だけ動かして狙いを定めて、光線を発射させたが僕が通り過ぎた空に向かって発射した。危機一髪、と思ったがすぐに強い衝撃波が身を襲い、吹き飛ばされて瓦礫に飛ばされた。瓦礫から砂煙が舞った。変身していなかったらミートソースの缶詰めをそこら中にぶちまけたようになっていた。

 瓦礫から這い出ようとした時、アルマジロ男はもうこちらに顔を向けていて、銃身には先ほどよりも強く眩しい光が放たれていた。こりゃ、絶対ヤバいやつやん。

 アルマジロ男の後ろには直線状のえぐられた北の大地が続いていた。僕がこの方向のまま撃たれたら、大通り方向間違いなく終わるじゃん。札幌市中央区大通りに玉ねぎ畑を作らせないように戦ったら、最後は自分の失敗で札幌市中央区大通りが玉ねぎ畑か。これじゃあ戦犯じゃん。

 くっそおおおお!

 僕の参戦、マジ意味ねえ! 

 何とか間に合えと、瓦礫を吹き飛ばしてアルマジロ男へ接近する。

 ここで旋回して光線の発射コースをずらすか、またジャンプ回避で空に向かって撃たせるか? いや、多分アルマジロ男は思ったよりもどんくさい感じだ。そのまま大通り方向へ、光線を撃ってしまう可能性がある。

 発射口の直近、光線が広がる前に盾を使えば……盾ごと蒸発するな。チワワのレーザーでもかなりの異臭がするほど盾は溶けた。一瞬だ。加粒子砲をスペースシャトルの底で耐えようとしても17秒が限界なのだ。

 そんな風に思っていると、男だか女だかわからないような声が耳元にささやかれたような気がした。マジこのタイミングでうっとおしいと思った。そして、キュピーンという謎の効果音が聞こえた気がした。サガじゃねんだぞ、と突っ込みを入れたくなるが、そばには誰もいない。

 あ、これ、もしかして、福音というやつか!

 これならかつる、きっとかつると僕は脳みその中にジェル状の何かがしみ込んでくるような感覚に一瞬体を震わせた。

 僕は起死回生する確率が高いと言われる、覚えたての技にかけることにした。

 でもよお、これただの防御技じゃねええかああああ!

 ちっくしよおおお!


「ミラーシールドォォオオ!」


 アルマジロ男とはもう数歩の距離、僕の周囲を囲む半球体の透明な薄い膜が出来上がる。その瞬間、アルマジロ男の銃身からは煌めく光が放たれ、ほぼ同時に轟音が響き渡った。


 ところで、遠距離恋愛というのは成就するのは難しい。

 距離が離れるほど、二人の愛が弱まってしまう。

 遠く離れた時恋人たちは多くの場合

   『会うまでのハードルが高くなり、最終的に自然消滅する』

という結果になりやすい。

 これは、ザイオンス効果というもので説明でき、同じ人やモノに接触すればするほど、次第にそれらを好印象を持つようになるというのがザイオンス効果と言われ、遠距離恋愛はこれの逆になる。

 接触する回数が極端に少なくなることにより、男女関係が消滅してしまいやすいということだ。

 なんでこんな話題をしたかというと、物理でよく言われる逆2乗の法則があって、講師が

「どんなに熱々のカップルでも遠距離恋愛になった途端に二股したり自然消滅して簡単に別かれるでしょ。万有引力や電磁波のエネルギーってそういうのとよく似ているでしょ」

と言われて、なるほどと思ったのを思い出したからだ。

 つまり、その逆はとても灼熱の愛にとろけてしまうということだ。0.01ミリってそういうことですよね。多分。僕使ったことないからわからないっすわ。

 電磁波の性質は光も該当するのだ。

 話は現実に戻るわけだが、僕が今アルマジロ男から浴びている光線の距離は0.01ミリではないけれど、とてつもなく近いのだ。

 轟音と強力なまぶしい光を浴びているが、これでも多分かなり緩和されているはず。ミラーシールドという技はきっとその名の通り反射してくれているに違いないが、光線全てを全反射してはいない。全反射は光が通りにくいものから通りやすい方へ光が出るときに発生する。空気から水に光線を当てる実験したことある方たくさんいらっしゃると思います。今回はその逆なのだ。どんなに反射率が高くても、100%の反射率にはならない。ほんのコンマ数%は通過するのだ。つまり何が言いたいかというと、


「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃあああ!」


とミラーシールドの中でダメージを食らっているということさ。



 ミラーシールドは光線を拡散させて、ほぼすべてを上空へ反射させた。

 でも、僕の体はもう限界。

 皮膚と服がところどころ溶けて体と一体になっている。酷い耳鳴りがして、音もよく聞こえない。

 僕はアルマジロ男を見据えると、蒸気を噴出し、奴はエネルギーを使い果たして賢者モードになっているようにも見えた。

 まだ盾は壊れていなかったようで、スイッチを押すと、盾から警棒が出てきた。一振りし伸ばす。

 震える足を警棒で軽くたたいて、アルマジロ男へ飛び掛かり、警棒を振りぬく。

 警棒はくの字に曲がった。アルマジロの装甲は想像を超えて堅かった。

 警棒を捨てて、右手で銃身を殴ると、ジュワっと肉の焼ける臭いが漂った。自分の右手の甲が酷く痛みが走り、僕は右手を抑えてうずくまった。アルマジロ男のダメージはどうみても0です、本当にありがとうございました。

 マジ勘弁してよ。満身創痍だよ。

 僕は涙目で顔を上げるとアルマジロ男が銃身をチャージし始めているではありませんか。銃身にまぶしさを増していく。


「くそ、こんな無駄に痛い思いして、無駄な死に方するのか」


 僕は歯を食いしばって、アルマジロ男の銃身の筒に左腕の盾の先端をぶち当てた。熱気で腕が焼けるの感じ、盾の先端が蒸発し始めた音が聞こえた。


「銃身の中に異物がはまったら、どうなるんだろうな。せめて、道連れにしてやる」 

 

 僕はパイルバンカーのスイッチを押すとほぼ同時にアルマジロ男も光線を放った。



 どのくらい時間が経ったかわからない。今日は意識がなくなることが多い日だ。

 焼けただれた右手で土をつかみながら立ち上がった。

 直径百メートルのクレーターの中に僕はいた。掘り起こされた地面の匂いはとても焦げ臭い。

 クレーターの中心にはアルマジロ男の銃身の一部が刺さっており、やがて煙を上げて消えていった。

 僕は空を見上げると、あれだけ曇っていたはずの天気だったのに光がさしていた。光線でかき消された雲の間から差し込まれる光が僕の顔を照らした。

 まぶしいなと思って左手で目を隠そうとしたが、いつまでたっても光は遮られなかった。

 左腕が胸の近くまでえぐられていた。

 まあ、気が付いたら左手が吹っ飛んでいくこともあるよね、人生長く生きていたら、なんて強がってワイはショック受けてません的な感じで、吸ったこともない煙草を探すように体を触った。当然、煙草なんて出てこなかった。

 僕はその場で座り込むように倒れ、最後にあのくそ濃い豚骨ラーメン食べたかったなと呟いて、目を閉じた。

朝早くに起きてしまったので勢いで書きました。

変なところがあれば修正するかもしれませんが大きくストーリーを変更することは考えていません。

またしばらく更新できませんが、時間を見つけて少しずつ書きたいと思います。

評価・ブックマークありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この後どうなるんだろうと、とてもワクワクします。 [気になる点] ストーリーの流れに必要無い冗助な表現が散見されます。 物語の中で今伝えたい事は何か? 意識してみてはいかかでしょうか。…
[良い点] 椿は俺が倒れる時は仰向け(相手に正対する)だ、と武士のような精神をしていて好き。
[良い点] お忙しい中更新ありがとうございます! 熱い戦いだった... 地表の被害が大事にならずによかった 衛星さんはあと何機か落ちてそうだけど
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