プロローグ2
子供の恐怖で歪んだ顔へ、全身タイツ野郎が腕を伸ばした。
僕は、前に、前にと進む、するとどういうことだろうか、少しずつ力が出てきた。
確か、人間は死ぬ瞬間にすごく幸福物質を脳みそから分泌すると聞いたことがあるので、それが原因かもしれない。
僕は子供へ伸びる、変態タイツの手を払おうと左手を伸ばした。
すると、不思議なことに、左手の先には大きな楕円形の盾が付いていた。
僕はその盾で変態タイツの手を弾いた。すると変態タイツ野郎は瓦礫の方へ吹き飛ばされた。
いったい何が起こっているんだ、と思って呆然としていると、楕円形の盾の端の縁にReadinessと赤字で書かれているスイッチが二つあることに気が付いた。
Readinessは確か、準備ができていること、とか、すぐ使える状態を意味していたはずた。
Readinessと書かれているスイッチの一つを押そうとすると、左手が自然に変態タイツの方へまっすぐ向いた。
そのまま僕はスイッチを押すと。強い衝撃と共に全身が後方へ吹き飛ばされた。
僕はぶつかった壁から身を起して変態タイツの方へ目を向けると、変態タイツの胸に長さ1メートル、太さ直径10センチメートルの白色の筒が刺さっており、言葉にならない声を出して、のけぞっていた。
Readinessと書かれていたスイッチはGetting Readyと青字で書かれているスイッチに代わっていた。
Getting ReadyはおそらくReadinessの反対の意味、準備中のことなのだろう。試しに押しても何も出てこない。
僕はもう一個のReadinessと記載のスイッチを押すと、今度は強い衝撃はなく、カチンという音が盾から聞こえ、盾の先端から、黒っぽい棒が出てきた。
黒っぽい棒を取り出すと、どう見ても小型の3段階特殊警棒です、ありがとうございました。
どうやってこの3段階特殊警棒を伸ばすのかと思うと、頭の中に何かが囁くように使い方をイメージさせた。ただ、力の限り一振りしろと。パチンと音をたてて、警棒が伸び切り固定される。変態タイツの方を見据えて懐まで飛び掛かると同時に振りかぶり、素早く変態タイツの頭を殴打した。
すると変態タイツ野郎の頭が陥没し、脳漿らしきものと目玉が飛び散った。
変態タイツ野郎は倒れ、体が砂で出来ていたかのように崩れて消えていった。
僕は強く息を吐いて、深呼吸する。
僕は生きていた、良かった、生きている。
そう心の中でつぶやいていると、後ろから、ドンと何かがぶつかってきた。別の変態タイツ野郎か、と思ったら、さっき助けた子供が僕の太ももにしがみついていた。
「助けてくれてありがとう、ヒーローのお姉さん」
おい、子供よ、目が腐ったか、僕は35歳の童貞おっさんだぞ、と口を滑らせそうになって、ポケットの中に入れていた携帯電話を取り出し、自撮りモードに切り替えた。
なんだこれ、僕の携帯電話に映し出されたのは、盗撮したら絶対に犯罪になるようなハーフ顔で銀髪、赤い瞳の美少女が左手にでっかい盾を持って、足元に絡みついている子供がいるような、そんな絵面なんだけど。
この美少女、僕か?
35歳童貞の美少女爆誕か?