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Eternal Fortitude 1

 ダンジョンはロマンの宝庫。

 一攫千金の財宝や、男女でダンジョンでアバンチュール、

レベルアップによる基礎ステータスの向上。

 色々な思惑と欲望が渦巻くダンジョンは、政府が管理することで、ある程度の治安、秩序の維持ができている。


 レベルアップは9レベルまでが一般的に推奨されている。理由は10レベルには条件があり、どんなに経験値を積んでも2階層突入しなければ10レベルにならない。また、10レベル以上になると税金が追加される。レベルによって異なるが、10レベルになった国民からは、年間50万円を請求する様になっている。

 ダンジョンの1階層は死ぬような場面はほぼほぼない。

 2階層にはアクティブモンスターというやつがおり、容赦なく襲い掛かってくるようになる。

 そこで、天秤にかけるのだ。命と得られる利益、引かれる税金を。


 多くの会社では雇用条件にレベル9以上と書いてくる。レベル1の天才よりもレベル9の凡才の方が『モチ』がいいからだ。体力的なものもあるし、病気にもかかりにくいし、まあ、ブラックな環境にも耐えられるからということさ。

 当然、僕もレベル9だ。

 ところで、ヒーローを生業とする人は何故ダンジョンに潜らないか。

 理由は簡単。法律で罰則はないが禁止されているのと、旨味がほとんどないからだ。

 国はヒーローに守られているけれど、自滅しかねない行動を取ろうとするヒーローを保護しなければならない。

 ヒーローの最高の価値であるヒーロー変身はダンジョンではできない。

 ダンジョンではヒーローもただの人で、簡単に死んでまうのだ。

 だから、国は、ヒーローがダンジョンの2階層以降へ潜ることを禁止した。

 次に、旨味がほとんどないというのは、レベルアップによる恩恵だ。

 レベルアップによる基礎ステータスの向上は、力、体力、素早さ、魔力、幸運であった。

 レベルアップしたステータスはダンジョンの外でも適用されているが、ヒーローにとってはあまり恩恵がない。

 ほとんどのヒーローは遠距離攻撃を主体としており、これに該当するステータスはないのだ。魔力ではないか、と研究されたこともあったが、レベル1からレベル9までの威力上昇を調べるも、結果は有意差なしであった。

 また、ダンジョン外では魔法も使えなかったので、ダンジョンで使えた魔法は怪人と怪獣の戦いに意味を成さなかった。別に彼女を悪く言うつもりではないが、ヒーロー魔女っ子のせいでダンジョン外でも魔法を使える可能性があるはずだと思われていた時代もあった。しかし、彼女の魔法はヒーロー変身後に使える能力だった。

 しかしながら、ステータスの力や体力、素早さの上昇はヒーロー変身後も効果あった。


 例えば、冒険者を生業とするレベル39の者がある日ヒーローに目覚めた。彼は覚醒した直後から近接の攻撃や素早さはB級のヒーローに匹敵していた。

 レベルアップのステータスは基礎ステータスに加算されるが、ヒーロー変身によるステータス上昇は、今現在のステータスを数百倍以上したものになる。

 ちなみに、ヒーローも怪人や怪獣を倒すとその倍率が若干上昇し、遠距離攻撃の威力が上がる。稀に新たな技に目覚めることもある。

 なお、先述の説明の冒険者ヒーローが最終的に主体にした攻撃方法は敵の周囲を旋回しながらの連続遠距離攻撃だった。

 テレビなどで行われるヒーローインタビューで、彼が語ったのは、冒険者もヒーローも安全を優先した戦いをすることが大切だ、とのことだった。

 近接攻撃は当然相手の射程範囲だ。無理してそこに入り込む必要はない。

 なお、冒険者の収入よりもヒーローとしての収入の方が良かったので、彼は冒険者をやめてヒーローに専念することにし、政府の特例処置でレベルアップによる増税については免税になった。

 まあ、冒険者を本業でやっていた人がヒーローになってしまったのに、法律でダンジョンの2階層へ行くのを禁止されたら、そのくらいしてくれないと困るよね。


 つまり、ごくごく普通のヒーローをやるならば、レベルよりも怪人や怪獣をたくさん倒す方がおすすめだ。


 東区モエレ沼公園モエレ山、たった標高62メートルの人工の山。その麓には屋台があり、お祭り騒ぎのように人がごった返していた。さらにそのモエレ山と麓の境界には白い枠で囲まれた、大きさ1メートルくらいで、周囲が青くて中心部が暗い球体があった。

 その球体に触れると、ダンジョンに侵入することができる。

 通称、モエレ山ダンジョンと呼ばれている。


 僕は携行食などを詰め込んだ背負い鞄と、左手に金属製の盾、右手に金属製の細い棍を持ってダンジョン突入の球体を触れようとする。

 するとダンジョン管理をしている政府の職員が近づいてきた。

「個人番号の確認をします。ご協力ありがとうございます。滞在予定は?」

「一日です」

「良いダンジョンライフを」

 職員が離れていくのを見て僕は胸を撫で下ろした。

 美少女ヒーロー『椿』の個人番号を政府には教えていないので、職員から2階層へ行くなと注意されることはなかった。

 僕がダンジョンに潜ろうとする理由、それは近距離・格闘に今後を賭けるためだ。

 イロモノばっかりのFランク怪人だったが、同じような幸運は続くとは考えない方がいい。

 ちなみについ最近倒したS嬢は、Fランクヒーローを4名殺害していた。

 たまたま僕とは相性が良かっただけだったと思うべきだ。

 安全に戦うにはレベルアップと戦闘技術の研磨だ。

 ヒーローを細々とやりながら、死なないよう老後の生活資金を貯めるにはこれしかない。

 税金が上がることは必要経費だ。

 童貞には妻の収入なんて絶対に期待できないしな。


 僕はノンアクティブモンスターのゼラチンスライムたんを棍で潰しながら2階層の階段へ向かった

ブックマーク、評価ありがとうございます。

誤字脱字の連絡ありがとうございます。

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