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Fラン 7

 35歳無職童貞は自宅のパソコンの前で美少女ヒーロー椿のスレッドを見て、頭を抱えていた。

 好意的に思われている者が思った以上にいたことはとても良い。マジとれびあーん。

 やはり、あのハーフ顔の容姿だと、変なファンやストーカーになりそうなやつがいた。

 変身後は常に変な奴らからカメラで撮影されていると思って賢者モードでいなければ、美少女ヒーロー椿=冴えない童貞おっさんというパワーワードがお茶の間をにぎわすことになる。

 エロいことを出動中に想像すれば、美少女ヒーローの映像が急にブーメランパンツおっさんに代わってしまうのだ。これだけはなんとか避けたい。

 でも、この矮小な脳みそでは数十分も悩んでいたら、脳みそが沸騰してしまう。

 とりあえず、お腹も空いた。


 札幌市東区及びその近辺は、ラーメンの激戦区だ。

 他の区にもうまいラーメン屋はあるが、東区はラーメン屋が乱立し、お互いに切磋琢磨し、殺し合いをしている。和出汁系、魚介豚骨系、鶏出汁系、二郎インスパイア、フレンチから転向系、料亭から転向系などあげるとキリがない。

 僕の好きなラーメン屋はいくつもあるが、魂に一撃ぶっ込みたい時の店は、超英雄という店だ。超英雄と書いてスーパーヒーローと読む。この店のメニューは豚骨ラーメン一つしかない。容器は普通のどんぶりと高さは同じだけど幅は半分くらいしかない。カップヌードルの大盛り程度の大きさだ。スープをけちっているのかと思ったが、そのスープの豚骨濃度がかなり濃い。チェーン店の3倍くらいは濃い。だが、しょっぱいわけではない。店主の豚骨に対する愛を感じた。

 志し高い店主だと思って話をして見れば、近くの看護系大学の女子大生を目当てに店を開いたら、少し離れた体育系の専門学校の男子学生ばかりしか来ないと嘆いていた。この煩悩の塊が!


「吾郎さん、今日休みなのか?」


 僕よりも少し若い30歳前半の海兵隊の新兵みたいなマリンカットのよく似合う細マッチョの店長は、昼営業終わりの時間間際に来た私服姿の僕を不思議そうに見た。


「いや、長い夏休みになった」


「マジ?」


「うん、怪人が配送ルートに現れて、トラック置いて逃げたらその後トラックが潰れていた。それでトラック置いて逃げた責任を取らされてクビになった」


 潰したのは確かに怪人だが、僕が怪人の生首を潰して、さらにぶっ飛ばした先に僕が止めたトラックがあった。まあ、説明不足だけど嘘ではない。


「あっ、つい最近Fランク女ヒーローの倒された玉ねぎ怪人がぶっ飛んでいってトドクンのトラック壊された動画見たけど、あれ吾郎さんのトラックだったか」


「それでハローワーク行くのやめて、ハローユーチューブして稼ごうかなと」


「やめた方がいいっすよ。なんて言うか、吾郎さんそういうの向いてないっす、はいどうぞ」


 辛口な評価をたたきつけながらラーメンを僕の前に置いた。


「知ってる。でも、この年で再就職先なんてなかなか見つからないからなあ」


 僕は割り箸を割ってラーメンをすする。うん、スープがガツンとくる。刻んで入れられた玉ねぎもいい。


「そうですよねぇー。自営業でもやはり前職の経験とかそれ専門の学校とか、修行なんかしないと初めての業界は難しいし、そんなの関係なしで成功するのは本当に頭がめちゃくちゃいいか、イカれてる人しかいないっす」


「ちなみに店主はラーメン屋を始める前は何していたの」


「調理師養成施設に入って、その後ラーメン屋で働いて、まあ、修行みたいなもんですね。その間にこんなラーメン作りたいなって家で研究して、採算取れそうな不動産を探して今に至る、って感じっすわ」


 何となく修行して、とりあえず店を出すんじゃないんだなあ、大変だなと思った。

 修行か……今僕の特殊な技能なんてヒーロー変身しかないし、修行してどうにかなるものではない気がした。

 僕はラーメンのスープをいつも通り腎臓ブレイクよろしく飲み干した。


「ところで、今日のラーメンはいつもより濃い感じがして、さらに美味かったと思うけど、味変えたの?」


「そうなんすよ。ダンジョン産のオーク骨を使った出汁を足してみた試作っす」


 ダンジョンのオークと言えば、豚みたいな二足歩行のモンスターで、よく調子に乗った新人が探索家動画を撮りながら戦闘し、オークの餌食になり、生きたまま食われるグロ動画が散見されている。

 何か込み上げるものを感じた。


「それ、食わせる前にまず説明な!」


「だって、そんなこと言ったら食べてくれないでしょ。で、美味かったんでしょ?」


「美味かったけど、生理的に無理だわ」


「そうっすかー。味は濃厚になるし、元気になる感じもあるんですけどね。あ、吾郎さん、お代はいいですよ」


「いや、ちゃんと払うよ。変な試作品だけど」


「違うっす。退職祝いっす。配送の仕事嫌だって言っていたじゃないっすか」


 ふぁっく!


 店を出て、酷い目にあった、とため息を吐いて、外の空気を吸い込む。すると頭が急に冷えてゆくような感じがした。これはなんか冴えてきたような感覚だ。

 オーク……ダンジョン、修行か。


 そんなとき、あの携帯端末からアラーム音が鳴り響き、街中から警報音がなり響いた。

急に仕事が増えてしまったので、以後の更新はしばらく後になります

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