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事後処理1

 ミーナの暴走が収まり、ジーク、サロミア、エディックは門番休憩部屋付近で一息ついていた。


「イツッ!!」


「我慢してください。少し痛むのは薬が効き始めている証拠ですよ」


 首筋の手当を受けるジークは思わず顔を歪め、シャフリは真剣な表情で患部の処置を施す。


「すみません。シャフリ様」


「ジークさんが謝ることはないですよ。それよりも……ありがとうございます。ミーナちゃんを助けてくれて」


「自分はお嬢様の専属執事。当然のことをしたまでですよ」


「それでもです。はい。もう大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。シャフリ様」


 手当を終えたジークは立ち上がろうとするが、視界が眩み、思うように立ち上がれなかった。


「ジークさん!?」


「す、すみません。少し目眩が……」


「吸血鬼に血を吸われると、一時的に体調不良を起こす。少し休めば回復する」


 ジークの様子を見ていたエディックが、不調の原因を口にする。


 さらに隣にいたサロミアが言葉を付け足す。


「それにミーナちゃんは初めて他人の血を吸ったから加減を知らない。貧血も起こしているわ」


「そう……ですか」


「悪運強いわね。一歩間違えば全ての血を吸われていたし、ミーナちゃんは拒絶反応を起こし、死んでいたわ。奇跡としか言えない結果よ」


 ジークは少し笑みを浮べて地面に視線を移し、その様子を見たシャフリも視線を落とす。


「でも……良くやったわ。お陰でミーナちゃんの暴走は収まったし、被害も少なく済んだわ。まあ、屋敷が少し燃えたのは予想外だったけど」


 サロミアとエディックはその場で片膝をつき、ジークに最大の感謝を送った。


「さあ。今日はもう休みなさい。ミーナちゃんも暴走した次の日は丸1日寝ているわ。片付けは他の人がやるから、明日は休暇よ」


「奥様……お断りしたいですが、体が言うことを聞きません。有難く、休暇を取らせていただきます」


「ジークさん。肩を貸します。どうぞ」


「ありがとうございます」


 シャフリに肩を借りながら屋敷の中に戻っていくジークを見送ったサロミアは、ある人物に目を向けた。


「さて……具合は良いの? バルディゴ」


「まだ傷が痛む上、立つのもやっとです」


「その割には平気な顔しているわね。さては、治癒魔法薬以外にも治療薬でも飲んだの?」


「さあ? どうでしょう」


 2人はクスクスと笑い、サロミアは煙草を咥え、バルディゴは小さな炎を作り出し、サロミアの煙草に火を着ける。


「もう少ししたらカーリーちゃんが来るわ。貴方も休みなさい」


「そうさせていただきますよ」


 安らぎの時間が流れる中、サロミアの背後にある人物たちが現れる。


「奥様。お時間宜しいでしょうか?」


 声を掛けてきたのはソフィアとサラスだった。そして、2人の足下には拘束された暗殺者3人が横たわっていた。


「2人ともご苦労様。何だかんだジークくんの作戦は成功に終わっていたのね」


「はい。ご要望通り、生け捕りに成功しました」


「ミス1つなく」


 胸を張ってノーミスだと言い張るサラスに対し、ソフィアはため息をつく。


「ほとんど私がやったでしょ? あまり胸を張らないで。サラス」


「そ、そんなぁ……冷たいよぉ~。ソフィアちゃん~」


 駄々をこね始めるサラスを無視して、ソフィアはサロミアに命令を求める。


「それでは奥様。この者たちはいかがなさいますか?」


 サロミアはクスクスと笑みを浮べ、3人の暗殺者たちに尋ねる。


「さて……お話ししましょうか? 貴方たちは誰の依頼で私たちを狙ったのかしら?」


 サロミアの問いに対し、1人が答える。


「依頼人の話はお答えしかねる」


「知らないってわけ?」


 さらに別の暗殺者たちが口を開ける。


「知っていても俺たちは口を割らない」


「そうだ! たとえ拷問されようが、野垂れ死のうが、俺たちは何も話すことはない」


 サロミアに対し、殺意を込めた目で睨む3人。


 しかし、サロミアはニッコリと笑みを浮べて3人を指差す。次の瞬間、3人の腹部に紅い弓矢が刺さる。


『ガハッ!?』


「拷問? 勘違いしないで。貴方たちが私の前に横たわっている時点で死が確定してるの。たとえ私の質問に答えなくてもね」


「じょ……上等だ。悪魔め……」

「お前らのような人外種はいずれ……」

「あの方に……始末されるんだ」


「お喋りが過ぎるわ……虫ケラが」


 サロミアが指を鳴らすとソフィアとサラスはその場から後退し、エディックはバルディゴを庇う体勢に入る。


 3人の腹部に刺さっている紅い弓矢が発光し、爆発する。


 3人は跡形もなく消え去り、サロミアは軽く息を吐いて屋敷に戻ろうとする。


「サロミアちゃん……本当に良かったの?」


「ん? 何が?」


「有力な情報を持っているヤツらだよ? それをあっさりと……」

「エディック」


 エディックの言葉を遮るサロミア。そして、振り返った時の表情は、その場の全員が恐怖に怯えてしまうほど怒りに満ちた表情だった。


「自分の娘や娘の友達が傷つけられて黙っている親っている? いないでしょ?」


 エディックは勿論、口を開ける者はいなかった。


「それに、彼らは本当に話す気がなかったみたいだし、仕方ないわ……もうこの話しは終わり!! はぁ~疲れた」


 サロミアは煙草を吹かしながら屋敷に戻っていき、離れていくサロミアの背中を見て、エディックは思わず声を漏らす。


「久しぶり見た……本気でキレているサロミアちゃん」

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