暴走3
「ジークくん!?」
突然現れたジークの姿を見て、サロミアは目を丸くする。
「サロミアちゃん!」
「奥様!」
サロミアに駆寄ったカーリーとエディックは、サロミアの無事を知ってホッと胸を撫で下ろす。
「皆様。大変勝手ながら、お嬢様は自分に任せていただけませんか?」
「ジークくん。貴方に出来るの? ミーナちゃんを本当に止められるの?」
エディックに支えられながら、サロミアはジークに尋ねる。ジークはニッコリと笑みを浮べる。
「……覚悟は決めています。自分はお嬢様の専属執事です。主人が苦しんでいるのに黙って傍観することは出来ません」
「ジークくん……」
サロミアとジークの間にカーリーが入り込み、真剣な表情を浮かべた後、眉をハの字にして自らの胸に手を当てる。
「奥様と旦那様は私に任せなさい。貴方は……お嬢様を頼むわ」
「そうです!!」
カーリーの言葉を後押しするかのように屋敷から声が響き、燃え盛っている部屋の火が徐々に勢いを失い、煙だけが上る。
「ソフィアさん……サラスさん」
「帰ってきてみれば屋敷は燃えてるわ、お嬢様は暴走しているし……大事は1つで十分ですよ」
「屋敷の炎は私たちが消しますので、思う存分戦ってください!!」
「……感謝します」
懸命に水魔法を何発も放つ2人に笑みを送り、ジークは吹き飛ばしたミーナに目を向ける。
土煙の中、ユラリと立ち上がる影を目撃したサロミアたちは驚きの声を上げる。だが、ジークは笑みを浮べて余裕を見せる。
「流石はお嬢様。攻撃を受ける瞬間、身を退いて威力を最小限に抑えましたか……」
感心しているジークの足下が紅く光り、攻撃の予兆と知ったジークはその場から離れる。紅く光った場所からは炎の剣が生え、後に爆発する。
「……なるほど。そういうことですか」
技を一度見ただけでジークは何かを理解し、ジグザグステップを踏んでミーナに近づく。対照的にミーナは真っ直ぐジークに襲いかかる。
ミーナが剣を振る瞬間、ジークは目を細め、拳に黒い炎を纏わせる。
「全力で行きますよ。鬼神……」
力強く踏み込み、ミーナが持つ炎の剣めがけて拳を振るう。
「ヒビキ・ストライクッ!!」
黒い炎を纏った拳が炎の剣に触れた瞬間、剣は粉々になり、攻撃の余波によって再びミーナの体が吹き飛ばされる。
一瞬の出来事を見ていたエディックとカーリーは、目を丸くして驚きの声を上げていた。
「何ということだ……僕たち3人掛かりで止めていたミーナちゃんを」
「拳1つで止めた上……弾き飛ばした?」
その時、サロミアにはジークがある人物に見えていた。
「ヒビ……キ?」
攻撃を受けたミーナは体勢を立て直し、再び炎の剣を作り、ジークに襲いかかる。
ジークはまるで剣が通っていく場所を知っているかのように体を動かして躱し、適度に殴打する。
手、脚、腹部、剣に1発ずつ攻撃を受けたミーナは倒れそうになるが何とか踏ん張り、再び剣を作り出そうとする。
「そこまでです。お嬢様」
剣を作り出そうとする腕をジークに掴まれたミーナは剣を作り出せず、驚きの表情を浮かべる。
「無駄ですよ。鬼神の炎に触れている状態だと如何なる魔法、スキルが無効になります……が、暴走は収まりそうにありませんね」
掴まれている腕とは逆の腕で剣を作り出そうとするミーナだったが、ジークは剣が生成されるよりも早く行動する。
ジークの行動に気づいたサロミアが思わず声を上げる。
「やめなさいッ!! ジークくんッ!!」
「奥様……申し訳ございません」
ジークはミーナの後頭部に手を伸ばし、自らの首筋にミーナの顔を近づけさせる。
強制的に顔を動かされたミーナは思わず口を開けてしまい、吸血する牙がジークの首筋を貫通する。
「ムグッ……!?」
少量の血がミーナの目の前を通過し、何かに噛みついた事を知る。そして、視線を横に逸らし、ジークの顔を見た瞬間、暴れ始める。
「ムグッ!! ムグゥッ!!」
「……ふぅ。暴走していても、噛みついてはいけない相手を理解しているのですかね?」
ジークは自分の首筋からミーナが離れないように、頭を押さえ続ける。
「大丈夫です……お嬢様。大丈夫ですよ。自分は……お嬢様を信じております」
耳元でジークが囁き始めた瞬間、ミーナは動きを止め、目を見開く。
「この通り……身を投げ出すほど、自分はお嬢様を心からお慕いしており、愛しております。お嬢様は……自分の事をどう思われていますか? お聞かせ……願いたいです」
次の瞬間、ミーナの瞳から涙が溢れ、空気と共にゆっくりとジークの血を吸う。血を吸った瞬間、ミーナの体が紅く輝き、数秒経った後、意識を失い、ジークの腕の中で眠りにつく。
静かな寝息をかくミーナを見て笑みを浮べるジークだが、首筋に激痛が走り、思わず表情を歪める。
「ウグッ……」
「ジークくん……」
痛みに耐えながらもジークは顔を上げる。そこには眉をハの字にしたサロミアがいた。
「奥様……」
「……バカね。こんな無茶して。下手すれば拒絶反応が出て、お互い死んでいたかもしれないわよ?」
「すみません……ですが、お嬢様から答えを聞くまで自分は死ぬつもりはありません。そして、お嬢様も……自分に答えを返すまで死にませんよ。恐らくですが……」
笑みを浮べるジークを見て、サロミアも思わず笑みを浮べる。
「ほんっと……あの人に似てバカね」
「恐れ……入ります」
いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!
伊澄ユウイチです!
今後の続きが気になる方は、是非ブックマーク登録をよろしくお願いします!
誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告お願いします。
面白かったら評価や感想を送っていただけると今後の励みになります。差し支えなければよろしくお願いします!
これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします!




