暴走2
ミーナの部屋から離れたジークは、流血しているシャフリの腕を処置していた。
「血は完全に止まりました。かすっただけなので跡も残らないでしょう」
処置が終わった自分の腕を見つめるシャフリ。微かに痛みが残る中、彼女はその腕でジークの腕を掴む。
「お願いします……ジークさん。私もミーナちゃんのところに連れて行ってください!」
「シャフリ様……残念ながらその体では無理です」
「無理は承知の上です」
「それでも同意しかねます」
ジークはシャフリの手を握り、ニッコリと笑みを浮べてシャフリの瞳を見つめる。
「大切なご友人のために、覚悟を決めるなんて……どこまでもお嬢様が羨ましいです」
「じ、ジークさん?」
「自分がお嬢様を迎えに行きます。それが自分の役目です。シャフリ様は戻ってきたお嬢様を笑顔で迎えてください。それが貴女の役目です」
「そ、そんな……」
「全く……言うことを聞かないのは母親そっくりだな」
暗闇の向こうから聞き覚えのある声が聞こえ、シャフリは目を丸くし、近づいてくる人物に抱きつく。
「お……お、お父さん!! どうして!?」
「刺される前に自然治癒強化の魔法薬を飲んでいたから最速でここまで回復できた。心配かけてすまなかった。まだ安定して歩けない。すまないが、私の補助をしてくれないか? シャフリ」
「お父さん……でも、私」
「分かっている。だが安心しろ。ミーナ様は必ず戻ってくる。そうだろう?」
優しく娘の頭を撫でた後、バルディゴはジークに視線を向ける。目が合ったジークはコクリと頷き、手袋を取る。
「……ジークさん」
バルディゴに肩を貸したシャフリは涙を浮べながら無理矢理笑みを作る。
「私、待ってます。ミーナちゃんとジークさんを信じています!」
シャフリの心の底から出た言葉を受け止めたジークは再びニッコリと笑みを浮べ、シャフリに背を向ける。
「今しばらくお待ちください。シャフリ様」
シャフリに言葉を残したジークはミーナの部屋に向かい、シャフリはバルディゴと共に屋敷の外に出た。
◇◇◇
暴走しているミーナを殺す気で飛び込む3人だが、ミーナの体から溢れる炎と熱により苦戦していた。
「なんて熱さ……私と旦那様じゃ長時間戦闘はキツいですね」
「せめて近づければ……」
「2人とも泣き言はやめて頂戴。これを放っておいたら国1つ消えるわよ。なんとしてでも倒すわよ」
「奥様……」
「サロミアちゃん……」
普段ゆるふわ口調の人物から出たとは思えないほどの冷たい口調に、2人は一瞬攻撃するのを躊躇う。
その一瞬の隙を見たミーナが不気味に笑う。
「キャハハハハハ!!」
笑い声と同時にカーリーとエディックの足下から数十本の炎の剣が生え、回避する2人に向かって弾け飛ぶ。
「カーリーちゃん! エディック!」
「何とか凌げました……」
「あ、危なかったぁ……」
カーリーは防御魔法を駆使して身を守り、エディックは剣が飛んでくる方向を全て見切り、掠めることなく躱す。
しかし、安心したのも束の間。
「カーリーちゃん!! 危ない!!」
カーリーに向かって容赦なく炎の剣を振るミーナ。
間一髪防御魔法が間に合い、カーリーはミーナを押し返そうとする……が。
「クフフ……アハハッ!!」
防御魔法が展開されていない側面から炎の剣がカーリーの大太刀を弾く。
「しまった!?」
弾かれた太刀に視線が行ったカーリーの隙を突いて、ミーナは部屋の壁を蹴り、死角からカーリーに襲いかかる。
しかし、ミーナが持つ炎の剣が、とある方向から飛んできた炎の弓矢によって粉砕される。
怯んだミーナに対し、カーリーは容赦なく格闘技を使い、回し蹴りにてミーナを隣の部屋まで吹き飛ばす。
「大丈夫? カーリーちゃん」
「奥様……すみません。お手を煩わせてしまって」
「気にしないで。それよりもどうだった?」
「……結構手応えあったのですが」
ミーナを吹き飛ばした方向に目を向ける3人。
目を細めて隣の部屋を見ていたが、エディックが殺気を感じ、2人を抱えて窓を突き破り、外に出る。外に出た数秒後、ミーナの部屋が爆発し、瓦礫が庭に落ちる。
「まさか……効いていないなんて」
「デタラメすぎるわよ……ミーナちゃん」
「前回の暴走よりも動きが俊敏で攻撃が苛烈すぎる……これ以上は僕たちでも」
炎と煙が上がる部屋からミーナの姿が現れ、3人を見たミーナはニヤリと笑みを浮べ、狂気じみた声で笑い始める。
「いよいよね……仕方ないわ。エディック」
サロミアからのアイコンタクトを理解したエディックは、サロミアに駆寄ろうとする。
しかし、2人の間に炎の剣が刺さり、数秒経った後、爆発が生じ、2人は接触することが出来なかった。
「エディック!!」
エディックの心配をするサロミアだったが、爆煙の中から炎の剣とミーナがいることに気づく。
硬直している体を動かそうにも、防御や回避が間に合わない距離まで炎の剣の切っ先が迫っており、サロミアは死を覚悟した。
「……鬼神・滅戦火」
「ガアァッ!?」
サロミアに届くはずだった炎の剣は消え去り、ミーナの体は勢い良く真横に飛んでいった。
「奥様。大変お待たせしました」
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