ジークの作戦2
「ミーナちゃんの事ですが……何か、変なものを感じたのですが」
「変なもの……ですか?」
シャフリは悩みながら慎重に言葉を選び、ジークに説明する。
「具体的に言うと……えーっと、なんて言えば良いんでしょうか。それを体で感じた瞬間、寒気が走って吐き気を催したんです。ミーナちゃんの前では耐えたのですが、見晴台から離れ、緊張が解けた瞬間、我慢していたものがこみ上げてしまって……」
「そうですか……その後、お体の調子は?」
シャフリは笑みを浮べて、その場でクルリと回る。
「見ての通り大丈夫です! ですが……魔法使いを目指している以上、些細なことでも気になってしまって……知っていることがあれば教えてくれませんか?」
元気そうなシャフリを見て、ジークは微笑を浮べるが、すぐに表情を曇らせ、シャフリに見えないように背を向ける。
「残念ながら、自分から話せることはありません。お力になれず、申し訳ございません」
ジークはシャフリを置いて部屋を出ようとするが、シャフリはため息をついて、扉に向かって腕を伸ばす。
「ん?」
ジークがドアノブに手を掛けようとした瞬間、白い魔方陣がドアノブを護り、触れることを許さなかった。
「……一体何のおつもりですか? シャフリ様」
「引っ掛かります。ジークさん。さっき自分から話せることは無いって言いましたよね? おかしくないですか? 知らなかったら普通は知らないと返答するものですよね? ジークさん……正直に話してくれませんか?」
真剣な表情を浮かべるシャフリを見て、ジークはクスクスと笑い、シャフリに向き直る。
「これは油断していました。言葉というものは難しいものですね。捉え方1つでここまで疑われるとは」
「茶化さないでください。私は真剣なんです。知っているなら話してくれませんか?」
「先ほども言いましたが、自分から話せることはありません。お願いです。この魔方陣を解いてくれませんか?」
シャフリは目を細め、魔方陣を解こうとはしなかった。
「嫌です。力ずくでも話してもらいます」
するとジークは仕方なさそうな表情を浮かべ、再びシャフリに背を向ける。そして、自分の右手を見つめ、ボソリと呟く。
「……仕方ない。仕方ないですねぇ」
呟き終えた瞬間、ジークの右手が黒い炎を纏い、その黒い炎をチラッと見たシャフリは目を丸くする。
「え?」
「そちらが力ずくで足止めするのであれば、こちらも力ずくでここを出るとしましょうか」
ジークは黒い炎を纏う右手で、ドアノブを護っている魔方陣に触れる。すると、黒い炎が魔方陣に触れた瞬間、魔方陣が音を立てて崩れ、何事もなかったかのようにジークはドアノブを回す。
「それでは、失礼しました」
「ま、待ってくださいッ!!」
部屋から出て行こうとするジークを呼び止めるシャフリ。律儀にも、呼び止めに反応したジークは振り返りはしなかったが、足を止めた。
「今の……炎は?」
シャフリの問いに対して、ジークは落ち着いた口調で言葉を返す。
「シャフリ様」
振り向かないまま、ジークは言葉の続きを述べながら歩みを進める。
「自分からアドバイスが1つ。この世の中、好奇心という軽い気持ちなどで知りすぎてしまうと、後悔することもあります。これ以上の詮索は、シャフリ様自身のためにもやめることを勧めます」
重圧のあるジークの言葉に何も言い返せなかったシャフリはその場にへたり込み、遠ざかっていくジークの背中を見つめ続けた。
◇◇◇
ミーナの部屋に戻ろうとするジークの前に、ある3人が立ち塞がる。
「今日はよく立ち塞がられますね。正直、今の時間は忙しいのですが……」
ジークの前に立っている人物……それは、門番をしているはずのソフィアとサラス、そしてカーリーだった。
「シャフリ様の部屋の窓から見えましたよ。ジークさん。あの黒い炎、何ですか?」
ニッコリと笑みを浮べて、サラスが黒い炎の素性を尋ねる。
「答える必要は……ないですよね?」
ジークは呆れ顔を浮べて3人の間をすり抜けようとしたが、1本の剣がジークの足下に刺さる。その剣を見たジークは、剣を投げた人物、ソフィアに目を向け、目を細める。
「メイド長から少し聞きましたが、詳しい事を伺いたいです。お願いします」
「しつこいですね。お嬢様を待たせているので、道を空けてくれませんか?」
「嫌と言ったら?」
終始腕を組んで様子を伺っていたカーリーが真剣な眼差しでジークを見つめ、ジークは再びため息をついて、指をポキポキ鳴らす。
「シャフリ様の時同様、力ずくでも道を空けます」
今度は両手に黒い炎を纏ったジークは3人に拳を向け、ソフィアは地面に刺している剣を引き抜き、サラスは属性魔法の詠唱準備に入り、カーリーは空間魔法を使い、別空間からあるものを取り出そうとした。
しかし、今にもぶつかろうとする4人を、ある人物が言葉だけで制止させた。
「やめなさい。4人とも」
『お、奥様!?』
ジークの作戦通り、4階の最奥の執務室で仕事をしているはずのサロミアがジークの背後に現れ、全員目を丸くし、それぞれ武器を収め、構えを解く。
そしてサロミアは深くため息をついて、ジークに目を向ける。
「……ジークくん。ここの従者たちのことは信用しているんでしょ?」
「……はい」
「だったら……話してあげなさい。仕事が一段落付いてからでも良いから、ね?」
ジークは反論することなく、3人に後ほど説明する約束をし、深く頭を下げる。
「それと……シャフリちゃんも呼んでくれないかしら?」
「シャフリ様もですか?」
ジークは少し嫌な顔を浮べるが、サロミアは笑みを浮べながらシャフリを呼ぶ理由を口にした。
「ミーナちゃんの事……探っていたでしょ? 丁度良いじゃない。知ってもらいましょうよ」
言葉を言い切ったサロミアの表情からどことなく圧を感じ、その場にいる全員、反論することなく「はい」と返事をした。
いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!
伊澄ユウイチです!
今後の続きが気になる方は、是非ブックマーク登録をよろしくお願いします!
誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告お願いします。
面白かったら評価や感想を送っていただけると今後の励みになります。辛口でも構いませんので、よろしくお願いします!
これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします!




