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ジークの作戦1

 日が昇り、目が覚めると同時に吸血鬼の姿から人間の姿に戻った私は、ベッドの横に置いてある呼び鈴を鳴らし、ジークを呼ぶ。ものの数秒もしないうちにジークは扉をノックし、入室の許可を得てきた。


 相変わらず、来るのが早いわね。


「入りなさい」


「おはようございます。お嬢様」


 しかし、ジークの顔色を見て、私は思わず「えッ?」と声を漏らしてしまう。


「どうしたの? 真っ青な顔色しているわよ?」


「いえ……その、少し考え事をしていたら夜が明けてしまって……」


 ジークは後頭部をガリガリと掻きながら私に言葉を返す。心配した私はジークに駆け寄り、他にも異常がないか確認する。


「……疲れているなら言いなさい。休んでも良いわよ」


「いえ。今日から作戦を開始しますので、提案者の自分が休むわけにはいきません」


「でも……」


 ジークは私と目線を合わせるため姿勢を低くし、笑みを作る。


「心配してくださってありがとうございます。ですが、本当に自分は大丈夫ですので、どうかいつも通り業務をさせてください」


 真っ直ぐ見つめてくるジークから私は少し目を逸らし、ため息をついた後、笑みを作る。


「分かった。でも無理だと判断したら反論せずに休みなさいよね」


「承知しました」


 笑みを浮べたままジークは姿勢を戻し、用件を尋ねてくる。


「それではお嬢様。何をご所望でしょうか?」


「紅茶の用意をして。あと数分したらシャフリも来そうだから、2人分ね」


「承知しました。では、お嬢様の分はこちらに」


 用件を先読みしていたのか、ジークはティーポットと私専用のティーカップを用意していた。


「仕事が早くて結構ね」


 いつもの定位置に座った私の前に、ジークはティーカップを置き、湯気が立つ紅茶をなみなみと注ぐ。


「お待たせしました」


 ジークが紅茶を注ぎ終えると同時に私はティーカップを持ち、火傷に注意して紅茶を啜る。


「……ん~。今日も良い味ね。ところで、確認なんだけど、夜間の護衛はカーリーだって聞いたけど、日中は誰が私とシャフリの護衛をするの?」


「そのことなんですがお嬢様。メイド長は他の業務もあって夜間の護衛をすることが出来なくなってしまいまして……」


「あ、そうなの? じゃあ、誰がするの? 他に変更点があったら言いなさい」


「日中はソフィアさんとサラスさんが交互に護衛していただけることになりまして、夜間は自分が勤めさせていただきます」


 変更内容に疑問を抱いた私はティーカップをゆっくり置き、質問を口にする。


「アンタが考えた作戦なのに、私たちの護衛をするの? 大丈夫なの? クソババァや、クソ親父の護衛に行かなくて良いの?」


 ジークは笑みを浮べて、質問に答える。


「大丈夫です。メイド長には出来るだけ奥様たちの近くで業務をしてもらい、いざとなったら駆けつけてもらいます。一応、先輩方に奥様たちの護衛をお願いしておりますので、安心してください」


「……なるほど。分かったわ」


「既に奥様たちは作戦通り、東棟の4階、最奥の執務室にて業務を行っております」


 この屋敷は東棟と西棟の2方向に部屋があり、西棟は主に物置部屋やメイドたちの個室、さらには応接室などがあり、東棟は私の部屋、クソババァたちの寝室、浴室、執務室などがある。


 今クソババァたちが仕事をしている部屋……4階の最奥。


 暗殺者が屋敷に侵入して、犯行に及ぼうとすると、一番遠い部屋でルートも1つしかなく、道中は人目に付きやすい場所が多々ある。


 正直、犯行を行うのは不可能に近い……屋敷に侵入してならね。


「……狙撃1点狙い、か」


「今日明日犯行に及んでくるとは思っていませんが、相手はこちらを観察してから動くはずです」


「で、アンタなら狙撃を選択すると?」


 ジークはニッコリと笑みを浮べて「ええ」と言葉を返す。そんなジークを見て、私は紅茶を啜る。


「成功することを祈っているわ。シャフリのお父さんのためにも絶対にね」


「はい」


 その時、扉が勢い良くノックされ、私とジークは同時に目を向ける。


「おはようッ!! ミーナちゃん!!」


「来たわねシャフリ。まあ、座りなさい。紅茶も用意してあるわよ」


 シャフリに座るよう促すが、シャフリは苦笑いを浮べて後頭部を掻く。


「紅茶は欲しいんだけど、ちょっとジークさんを借りても良いかな?」


「ジークを?」


 突然の提案に私とジークはキョトンとしてしまい、シャフリはジークの手を掴む。


「実は家具の位置に問題があって、私1人じゃ動かせそうにないの。だからお願い!!」


 懇願するシャフリを見て、数秒考えた私の答えは。


「仕方ないわね、少しだけよ。ジーク。すぐ戻ってきなさいよね」


 シャフリは満面の笑みを浮べ、ジークは「承知しました」と言葉を残して、シャフリと共に部屋を出て行った。


「全く……昨日のうちに気づきなさいよ」




 ◇◇◇




「すみません。無茶を言ってしまって」


「いえいえ……お気になさらず」


 シャフリの気に入る場所に家具を移動したジークは、シャフリの表情を見て、目を細める。


「……シャフリ様。家具の移動以外に、自分に何か用があるのでしょう?」


「えッ? いや……何もないですよ」


「隠しても無駄ですよ。少し表情が曇ったのを見逃せませんよ。自分で良ければ、相談に乗りますよ」


 オロオロするシャフリだが、ジークの真剣な眼差しに屈したシャフリは、素直に思いを口にする。


「昨日の……いや、厳密には今日ですね。ミーナちゃんの事なんですが……」

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伊澄ユウイチです!


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