表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/172

ミーナのスキル4

 サロミアの登場により、ジークとカーリーは強制的に定位置に戻らされ、それぞれが座っていた場所に腰を下ろす。


 2人が落ち着いたのを確認したサロミアは深く息を吐いて、近くにあった椅子に座る。


「……ごめんなさいね。言い争っているのが部屋まで聞こえて……危険だと判断してお邪魔させてもらったわ」


 気持ちが落ち着いたのか、ジークは視線を床に向け、頭を抱える。


「いえ……止めていただき、ありがとうございます。あのまま奥様が止めに入っていなかったら、自分は取り返しのつかないことをしていました。メイド長、申し訳ございません」


「いえ……私も感情的になってごめんなさい」


 2人が謝罪をしたのを見て、サロミアは微笑を浮べるが、すぐに表情を曇らせる。


「ジークくんから作戦を聞いて、カーリーちゃんが反対するのは予想できていたわ。正直、私も賛成しかねたけど、不確定な要素を考慮していたら、一向に問題を解決できないと思って仕方なく賛成したの。カーリーちゃん。貴女の気持ちは痛いほど分かるわ」


「そう……ですよね」


 カーリーは視線を落とし、薄らと涙を浮べる。


「奥様……失礼ながら、1つ伺ってもよろしいですか?」


 視線を落としたまま、ジークがサロミアに尋ねる。サロミアは無言で頷き、ジークの質問を待った。


「お嬢様のスキルの暴走……その日、何が原因でスキルが暴走したのですか?」


「……勘違いしているわ。分かりやすく説明するためにスキルの暴走って言ったけど、スキル自体は発動していないわ」


 ジークとカーリーは驚きの表情を浮かべ、サロミアはソッと瞼を閉じる。


「ミーナちゃんのスキルがあるものを欲し、その欲しているものをミーナちゃんが見た結果、自我を失って暴走した。そしてそれは……血よ」


「血? それだと以前……」


 ジークはバスケットボールを教えた際、ミーナの顔面にボールがぶつかり、鼻血を流していたのを思い出した。しかし、サロミアは手を横に振って、ジークが口にしようとしている内容を否定する。


「もちろんミーナちゃん自身の血を見てじゃないわよ。他人の血よ。暴走した日全て……血を見てしまっていたのよ」


「ちょ、ちょっと待ってください!! 記憶に新しい暴走は、密室状態でお嬢様1人の状況だったのに暴走するのはおかしくありませんんか?」


 カーリーが疑問に思ったことを口にし、サロミアは深くため息をついてから言葉を返す。


「あの日も見ていたのよ……外の景色を見て」


 カーリーの表情がどんどん青くなり、サロミアは当時の状況を口にする。


「たまたま外で子供のゴブリンたちが木の枝で剣術ごっこをしていたの。そして、何らかの拍子に1人が転倒してしまい、両膝から血が流れていたの」


「それを……ミーナお嬢様が」


「ものの数分もしないうちに騒がしくなったから、恐らく見てしまったんでしょうね」


 納得したカーリーは視線を落とし、恐怖からなのか、体が震えていた。


 そして、サロミアは扉の方に目を向け、声を掛ける。


「廊下で突っ立ってないで、入ったらどう?」


 ジークとカーリーは同時に扉に目を向け、ゆっくりと扉が開く。そして、扉の向こうにいたのは……。


「ソフィアさん? サラスさん?」


 ソフィアとサラスの突然の訪問に驚いたジークは思わず2人の名前を口にする。


「夜分遅く失礼します。盗み聞きするつもりはありませんでしたが、ソフィアがどうしてもって……」


「ソフィアちゃん……貴女のスキルを忘れていたわ」


「超聴覚……集中していれば、半径50メートル以内の微量な音でも聞き取れます。もちろん先ほどの会話も聞こえていました」


 サロミアは真剣な表情を浮かべて、深呼吸をした後に口を開ける。


「みんな……落ち着いて聞いてくれる?」


 4人は真剣な眼差しでサロミアを見つめ、サロミアからの言葉を待った。


「ジークくんが提案した作戦……決行するわよ。決行するに至って、ミーナちゃんが暴走する可能性は十分考えられるわ。私やエディックが本気で立ち向かっても無力化できるかどうかのレベルよ。もし、貴方たちがミーナちゃんを心から慕っているのであれば……」


 全員固唾を呑んで、再びサロミアの言葉を待った。


「ミーナちゃんに殺されるか、ミーナちゃんを殺すか……どちらかを選択しなさい」




 ◇◇◇




「ほーら。いっぱいお食べ」


 小鳥たちの餌を掌に乗せた私はソッと腕を差し出す。見晴台の窓辺に待機していた小鳥たちが一斉に私の掌に群がり、一生懸命餌をついばむ。


「懐かれているね~。ミーナちゃん」


「まあ、10年以上も続けている日課だからね。懐いてもらわないと困るわよ。シャフリもあげてみる?」


「いいの?」


 私はコクリと頷いてシャフリは私に近づこうとしたその時。段差に躓いたシャフリは前のめりになって倒れる。


「だ、大丈夫? シャフリ?」


 痛みをこらえながらもシャフリは起き上がり、パンパンと服に付いた汚れを払う。


「あたた……大丈夫だよ。またドジ踏んじゃったね。あーあ、膝擦ってるよ~」


 シャフリはスカートを少し捲り、自分の膝の状態を確かめる。


「全く……しっかりしな……さい……よ」


 シャフリの膝を見た瞬間、私の胸の奥から大きな鼓動音が聞こえ、私の視線はシャフリの膝から流れている赤い液体に釘付けになっていた。


「傷治しの魔法薬と包帯を常備していてよかった~。これを塗ればすぐ治るんだよ~……ミーナちゃん?」


 近くに居るはずのシャフリの声がどんどん遠くなり、次第に目の前が真っ白になりかける。


 しかし、目の前が真っ白になる前に、右の頬に痛みが走り、私はシャフリの膝から視線を逸らした。


「チュンッ!!」


「イテッ……。何するのよッ!!」


 肩に乗っている小鳥が餌をくれと言わんばかりに私の頬を連続でつついてくる。


「もぉ~。やめなさいよ!! やめないと餌あげないんだからねッ!!」


「ミーナちゃん? 大丈夫?」


「え? 何が?」


 シャフリは私の顔をジロジロと見るが、特に変化がないと知ったシャフリは首を傾げた後、大きなあくびをかく。


「ふぁ~……ごめん。やっぱり眠気が酷いし、もう戻るね」


「あらそう? ゆっくり休みなさい」


 見晴台の階段を降りていくシャフリに目を向けることなく、私は小鳥に餌をあげ続けた。




 ◇◇◇




 見晴台の階段を降り、見晴台から少し離れた場所でシャフリは突然倒れ込み、冷や汗と共に吐き気がこみ上げてきた。


「はぁッ……はぁッ……何なの、今の。ミーナちゃんから感じた……あれは?」

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!

伊澄ユウイチです!


今後の続きが気になる方は、是非ブックマーク登録をよろしくお願いします!

誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告お願いします。

面白かったら評価や感想を送っていただけると今後の励みになります。辛口でも構いませんので、よろしくお願いします!


これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ