ミーナのスキル3
眠そうにあくびをかいているシャフリと日課を楽しみに待っていた私は、見晴台の入り口付近に辿り着く。
「ふぁ~……あ。元気だね~ミーナちゃん」
「まあね。半分吸血鬼だからなのか、短時間の睡眠で、長時間動くことが出来てしまうの。羨ましい?」
シャフリはフルフルと首を横に振り、再びあくびをする。
「全然。私は長時間寝て、短時間動ければいいや」
将来ダメ人間になる典型的な言葉ね。
普段はしっかりしているシャフリだが、眠気から思考まで鈍っていた。
「バカなこと言っていないで、さっさと登るわよ」
「ふぁ~い」
見晴台の扉に手を掛けたその時、私は地面に転がっているあるものを見て、思わず手に持っていた餌を落とす。
「あ……そんな」
「ミーナちゃん? ……あ」
シャフリも私が見ている場所に目を向け、残念そうな表情を浮かべる。
「残念……だね。ミーナちゃん」
私は地面に転がっているあるものをすくい上げ、呆然とする。
「見たところ襲われた様子もないし、大きさ的にも老衰だね」
私がすくい上げたもの……それは、いつも餌をあげていた小鳥の一匹だった。
「そんな……そんな……」
思わず手が震え、知らないうちに涙が溢れていた。
「……埋葬、してあげよっか」
優しい口調でシャフリは私に提案し、私は言葉を返すことなくコクリコクリと頷く。
見晴台の近くに老衰死した小鳥を埋めた私は、数十秒ほど冥福を祈った。
「……気持ち良く飛んで行きなさい」
未だに溢れてくる涙を指で拭い、背後にいるシャフリに頭を軽く下げる。
「ごめんなさい。ちょっと取り乱してしまって……」
「気にしないで。大丈夫だよ。そんな優しいミーナちゃんに見送ってもらえた小鳥さんはきっと喜んでいるよ」
私が我慢しているのを察したのか、シャフリは笑顔を浮べて私を慰める。また泣きそうになったがグッとこらえ、見晴台に目を向ける。
いつもの上階で餌を待っている小鳥の鳴き声が聞こえ、強引に笑みを浮べる。
「結構待たせているし、行きましょうか」
シャフリは何も言わずに、ニッと笑みを浮べ、私の後に付いてきてくれた。
◇◇◇
「……メイド長。お嬢様が知らないスキルとは……まさか、以前奥様が話していた」
「そうよ。お嬢様が自我を失って、無差別にメイドたちを殺したあの事件。言いそびれていたけど、あの事件はお嬢様は何一つ覚えていないの」
ジークは目を細め、ワインを飲むカーリーを睨みつける。
「覚えていない? と言うことは……お嬢様には一連の騒動を話していないと言うことですか?」
「当たり前でしょ!? お嬢様は人を殺したのよ!? それに奥様からは隠し通せって言われているし、あの日、話を少し聞いた貴方も奥様から口止めされてたでしょ!?」
「あれは掘り返してはいけないお嬢様の過去だと思い、自分は黙っていました。ですが、お嬢様は何一つ知らないという話であれば、変わってきます!!」
カーリーは持っていたワイングラスを力強くテーブルに置き、ジークに反論する。
「変わらないわよッ!! ただでさえ精神が不安定なお嬢様がメイドを殺したと知ったら自殺しかねないわよッ!!」
「このまま隠し通す方がお嬢様のためになりません!! 自分が何をしたのかを知ってもらい、命の重みを理解させるべきです!!」
「お嬢様だって命の重みは理解できているわよ!! ただ、今のお嬢様には現実を受け止めるほど心は強くないのよ!! 万が一、精神が崩壊してあのスキルが発動したらどうするのよ!? 私はあのスキルが発動してしまうリスクを減らしたいのッ!!」
「あのスキルあのスキルと言いますが、詳しい事を教えてくれないじゃないですかッ!! それともなんですか? そのスキルが発動したときのことを考えて、お嬢様の周りには誰も配置するなと言いたいのですか?」
カッとなったカーリーは勢いよく立ち上がり、目にも止まらぬ速さでジークの首を掴む。ジークは抵抗することなく、カーリーを睨み続け、歯ぎしりをする。
「誰もそんなことはッ……いいえ、本音を言えばそうよ。もう誰1人として犠牲者を出したくない。常にお嬢様の近くにいる貴方も含めて……さっきは遠回しに言ったけど、私は今回の作戦には反対よッ!!」
カーリーが言葉を言い切った瞬間、ジークはゆっくり右腕を伸ばし、カーリーの首を掴む。そして、首を掴んでいる右手に黒い炎のようなものがまとわりつき、カーリーは驚きの表情を浮かべる。
「何よ……本気?」
「本気です。たとえお嬢様の心が壊れようとも、自分は自分を犠牲にしてでも受け止めます。それが専属の執事の仕事です!! メイド長とあろうお方が主人を見放すような発言……許すわけにはいきません!!」
ジークが握力を強めようとしたその時、無数のコウモリが四方八方から現れ、ジークとカーリーの間に群がり始める。その後、コウモリたちはある人物の姿に変わり、その人物はジークの腕を掴む。
「……そこまでよ。ジークくん。カーリーちゃん」
『奥様……』
ジークとカーリーは声を重ね、サロミアが間に入ったことにより、2人は互いの首から手を離す。
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