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ミーナのスキル2

 ジークに詰め寄ってから10秒程沈黙が続き、折れたジークがため息をついて、話し始める。


「真剣な眼差しでお嬢様に見つめられては仕方ありません。正直にお話しします」


 ジークが間髪入れずに口を開こうとしたが、右手の平を見せて「待って!」と叫ぶ。ジークと見守っていたシャフリは呆け顔になる。


「……話す前に」


 ツカツカと自分の席に戻った私はティーカップを持ち、空であることを示すため逆さまにする。


「紅茶を淹れて。話はそれから」


 するとジークは満面の笑みを浮べて私に言葉を返す。


「はい! お嬢様」




 ◇◇◇




「ん~。やっぱ紅茶はジークが淹れたのが1番ね!」


 待ちに待ったジークの紅茶を口にした私は、思わず笑みを浮べて頬に手を当てる。対面に座っているシャフリも満足げな表情を浮かべ、「はふ~」と息を吐いている。


 ニッコリと笑みを浮べているジークに目を向けた私は、部屋の隅にある椅子を指差す。


「まあ、座りなさい。アンタも夜の紅茶に付き合いなさい」


「それは……ご命令でしょうか?」


「命令であろうが何だろうが、今のアンタに拒否権はないわ。私に嘘をついた代償は払ってもらうわ」


「……分かりました」


 部屋の隅から椅子を持ってきたジークは私とシャフリの間に入るように座り、自分の分の紅茶を用意する。


「……で? 隠そうとしていたことがあるでしょ? 話なさい」


 私とシャフリの視線がジークに向き、ジークは紅茶を一口飲んでから口を開ける。


「まずはシャフリ様のお父様のことから話しましょうか……」


 ジークは全てを話してくれた。シャフリの父、バルディゴが言い残した言葉から、犯人たちを捕らえる作戦までの全てを。


「……なるほどね。分かったわ。それで、犯人たちを捕まえる作戦を提案したのは誰?」


「自分です」


 ジークの目を見つめ、チラッとシャフリに異論はないかと目で訴えるが、シャフリが口を開けることはなかった。


「……不確定ないことが多いけど、アンタのことだから、ちゃんと計算しているんでしょ?」


「はい。ですが、安全を考慮して、お嬢様とシャフリ様には作戦が終わるまで、カーリーメイド長が護衛として夜間付き添います。どうか、ご了承頂けませんか?」


「ええ」

「分かりました」


 私とシャフリは声を重ねて返事をし、返事を聞いたジークは笑みを浮べて、ゆっくりと立ち上がり、深々と頭を下げる。


「危険な作戦を提案してしまい、申し訳ございません」


「いや……最善の作戦だと思うわ。頭を上げなさい。話してくれてありがとう……丁度日付が変わったわ。これから見晴台に行くけど来る?」


 ジークは残念そうな表情を浮かべて首を横に振る。


「本日の餌はご用意しましたが、自分は他にもやることがあるので、今日はご遠慮させて頂きます」


「そう……分かったわ。シャフリはどうする?」


 するとシャフリは大きなあくびをかきながらも、同行すると答える。


 ジークから小鳥の餌をもらった私は、シャフリを連れて部屋から出て行く。


「それじゃあ、お休み」


「いってらっしゃいませ」




 ◇◇◇




 自室に足を運んだジークは、深く息を吐いて、ベッドの上に座る。その時、部屋の外へ声を向ける。


「もう体は大丈夫なのですか? メイド長」


「あら? 気づいていたの?」


 部屋の扉が開き、ランプを手にしたカーリーが部屋の中に入ってくる。


「質問を質問で返さないでくださいよ」


 クスクスとカーリーは笑みを浮べ、ランプとある物をテーブルの上に置く。


「……グラスとワインですか。その様子だと結構良好のようですね」


「シャフリちゃんが作ってくれた解熱薬のお陰よ。大事を取って夕食後にも飲んだけど、味が酷くてね……口直しがてらに少し付き合いなさいよ」


 ジークはため息をつくも、仕方なさそうな表情を浮かべて、カーリーが持ってきたワインの栓を抜く。


「あら? 今日はノッてくれるのね」


「今日だけですよ。それよりも奥様たちから聞きましたか?」


「貴方の考えた作戦?」


 ジークが注いでくれたワインを手に持ち、香りを楽しんだカーリーは瞼を閉じて言葉を返す。


「悪くはないけど、甘く見ていない?」


「慎重に見積もった結果、あのような作戦になったのです。犯人たちの動きは明確にはなっていませんが、これ以上考えても……」


「違う違う。私は犯人の話をしているんじゃないわよ」


 ジークは首を傾げ、カーリーはジークが持つ予定のグラスに自分のグラスを軽く当てる。そして、ワインを一口飲んだ後、窓の外で輝いている月を見て、口を開ける。


「ミーナお嬢様の事よ」


「お嬢様? お嬢様やシャフリ様の安全は一番最初に考慮しています。だからメイド長に護衛を頼んだのですが……」


「……貴方。以前、奥様と話したときの事を覚えている?」


「奥様と?」


 ジークはグラスの中で波打っているワインを見つめ、カーリーは軽く息を吐く。


「忘れたとは言わせないわ。ミーナ様のスキルのことを」


「スキル……ああ。嘘を見抜くスキル以外にもあると仰っていましたね。覚えていますよ。あの炎の剣ですよね? 仕組みには興味がありましたが……」


「違うッ!!」


 カーリーが突如声を荒けさせ、ジークは目を細めてカーリーを見つめる。その時、カーリーの体が震えていることに気づき、近寄ろうとする。


「大丈夫……ちゃんと話すから、そのままでいなさい」


 心を落ち着かせるため、カーリーはグラスに残っていたワインを飲み干し、覚悟を決めてジークとの会話を再開する。


「ミーナお嬢様のスキル。嘘を見抜くスキルとありとあらゆる所から炎の剣を生成することが出来るスキル……この2つはお嬢様が知っているスキル」


「お嬢様が知っている?」


「ええ。そしてもう1つ……お嬢様が知らない、お嬢様のスキルがあるわ」

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