シャフリの部屋
「ちょ、ちょっと!! 聞いてないわよッ!! ウチに住むなんて!!」
「だって私もさっき聞いたばかりだもん。知らなくて当然だよ」
何故だろう……シャフリが開き直っているのが腹立つ。
「そういうのは戻ってきてすぐに話すものでしょう!? 何で私に一言も声をかけずに勝手に部屋決めて掃除しているわけ?」
シャフリは後頭部をカリカリと掻き、笑いながら言葉を返す。
「いや~。ミーナちゃんが真剣に剣の練習をしていたから声を掛けづらくて~。勝手は承知の上だけど、エディックさんには了承を得ていたから、この部屋の掃除をさせてもらっているよ」
承諾したのはあのクソ親父か。全く……それは良いとして。
「何でサラスは掃除しているの?」
私の視線はシャフリからサラスに移り、サラスもシャフリ同様、笑いながら言葉を返す。
「確かに私の仕事は門番です。ですが、メイド長が寝込んでいる以上、門番の仕事だけというわけにはいきません」
言っていることはごもっともだ。返す言葉もない。それにシャフリがウチに居候するのも納得できる。だが……。
「何で物置みたいなこの部屋を選んだのよッ!! 他にも部屋があるでしょッ!? 手間でしょッ!?」
するとシャフリとサラスは顔を見合わせ、満面の笑みを私に見せてくる。
「それはね……」
シャフリが近くの本棚から一冊の本を取り出す。長い間放置されていたのか、本は埃を被っており、かなり黄ばんでいる。
「何よこれ……って」
表紙を見た瞬間分かった。シャフリが手にしていたのは超級魔道書だった。
「超級の魔道書?」
「そう!! 上級魔法よりも詠唱が難しい分、強力な魔法を使うことが出来る超級魔法の魔道書!! あまりにも詠唱方法が難しかったため、販売は中止になって、この世には出回ることはなくなったんだけど、たまたま見つけちゃってね。これだけじゃないよ。他の本も魔法に関する本ばっかりで、興味が沸いちゃって……」
「それでこの部屋を住処にしたいと?」
シャフリは無言でコクリコクリと頷き、私は呆れ顔で息を深く吐く。
「それにね……私もミーナちゃんみたいに努力したいの」
「え?」
思わずポカンと口を開けてしまい、シャフリは本棚に目を向けて、思いを語り始める。
「……サラスさんから聞いたよ。ミーナちゃん。私のために剣の練習を始めたんだって?」
サラスめ……余計なことを。
「ミーナちゃん……ありがとう」
突然のお礼の言葉に、私はつい照れてしまい、シャフリから目を逸らす。
「べ、別に……アンタのためじゃないわよ。私は少し……体を動かしたかっただけだし」
「だから……頑張るミーナちゃんに負けないよう、私も魔法の勉強をする。だから……お願い。ここに住んでも良い?」
ダメだ……シャフリの潤んだ目を直視してしまった。あんな目を見てしまったら……断れないじゃない。
シャフリは深々と頭を下げ、私は後頭部をガリガリと掻いた後、通信バットを取り出し、屋敷にいるメイド全員に招集をかける。
「忙しい中、悪いわね。急だけど、1階の書庫に来てくれないかしら? 掃除を頼みたいんだけど?」
『はい! かしこまりました!』
メイド全員の声が通信バットから放たれ、シャフリは不抜けた顔をしていた。
「ミーナちゃん?」
「みんなで掃除した方が早く終わるでしょ? 日が暮れる前にちゃっちゃと終わらせるわよ」
私の言葉を完全に理解したシャフリは勢いよく私に抱きつき、私を押し倒す。
「ちょ!! 嬉しいからって抱きつくのはやめなさいよッ!!」
「ミーナちゃん!! ありがとッ!!」
◇◇◇
十数名のメイドたちの力を借りながら、日が暮れたのと同時に書庫の掃除が終わる。
「ふー……やっと終わった」
「ミーナちゃん! ありがとッ!! まさかミーナちゃんも掃除を手伝ってくれるなんて」
「ただの気まぐれよ。汚れてもいい服だったし、ついでに手伝っただけよ。お礼ならメイドたちに言いなさい」
「それでも……ね?」
シャフリは満面の笑みを浮べ、私はなるべく顔を見ないように視線を逸らす。
「サラスさんも手伝ってくれてありがとうございます! 門番の仕事もあるのにごめんなさい……」
サラスは笑みを浮べながら手を横に振り、装着していたマスクを外す。
「いやいや。ミーナ様のお友達の願いを聞くのも従者の仕事ですからね。お気になさらず。それよりも、今度魔法の練習に付き合っても良いですか?」
「え? 魔法の練習ですか!?」
シャフリは目を輝かせ、サラスはコクリコクリと頷く。
「こう見えても魔道士の端くれです。シャフリ様さえ良ければ、一緒に練習しませんか? 私も超級魔法の魔道書はあまり見たことがないので」
「是非是非ッ!! 喜んでッ!!」
昼間は父親が襲われたって聞かされて泣きじゃくっていたのに……良い顔で笑うじゃない。やっぱりシャフリには笑顔が1番ね。
思わず私も軽く笑みを浮べてしまい、2人から見えない角度でクスクス笑う。
私も……もっと頑張らなくちゃ。
「みんな~。お疲れ様。夕食の用意が出来たよ~」
聞き覚えのある声が聞こえ、私とシャフリは慌てて廊下に出る。そして、食堂近くの廊下には……。
「か、カーリー!? アンタ、何しているの? 具合が悪かったんじゃないの?」
「あ、お嬢様!」
カーリーは私たちの存在に気づき、駆け寄ってくる。
「それがですね~、シャフリ様から頂いた解熱薬のお陰ですっかり熱も下がり、元気になりました。掃除などの重労働は大事を取って控えましたが、夕食の用意だけは出来そうだったので無理しちゃいました」
「それは良かったです!! でも、無理はしないでくださいね。また熱が上がりますよ?」
シャフリとカーリーが笑い合うのを見て、少し嬉しい気持ちになった。
振り回されることも多いが、シャフリと居ると自然と笑える。本当に……改めてシャフリと友達になれて良かったと思う。
シャフリだけは……バルディゴさんみたいになって欲しくない。絶対……守ってみせるからね。
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