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ミーナの訓練3

「……体の震えの原因……それは、ミーナ様が他人を傷つけることを恐れたからですよ」


「他人を……傷つける?」


 思わずポカンと口を開けてしまい、サラスは私に目を向けることなく話を進める。


「王宮の騎士団をやっていたので、ミーナ様のような症状が出た人間は何人も見てきています。酷い人は震えだけに留まらず、吐き気に襲われたり、気を失う人もいました」


 先刻の症状を思い出しただけで冷や汗が沸き、呼吸が乱れそうになる。何とか気を強く持ち、サラスの顔に目を向ける。


「でも私は……過去に他人に物を投げたり、後先顧みず暴言を吐いていたわ」


 ジークにさえ吸血鬼の能力で作りだした炎の剣を投げたこともある。恐れを持つなんて考えられない。


「恐怖とは……その時の心理、タイミングによって訪れます。木製の剣を人に向けても大丈夫な人が、本物の剣を手にした途端、恐怖に心が支配され、冷静さを失うことだってあります。私やソフィアは……痛いほど感じてきました」


「サラス……」


 心なしかサラスの目が悲しそうに見え、今にも泣いてしまうのではないかと心配してしまった。私が心配しているのを察したのか、サラスは両手で自らの頬を軽く叩き、無理矢理笑みを作る。


「ソフィアから聞いたところ、ミーナ様は他人を守る力が欲しいから訓練を所望したようですね?」


 サラスの言うとおりだ。シャフリの父、バルディゴが重症を負った報告を聞いたとき、シャフリが同じ目に遭うのではないかと思い込んでしまい、訓練することを決めたのだ。


 それなのに……私は……自分に負けて。


「おっと。勘違いしないでくださいね」


 私が視線を下に落としたのを見て、サラスが反応する。


「ミーナ様が剣を構えられなかった理由……それは恐怖ではなく、優しいからです」


「私が……優しい?」


 以前、ジークにも言われた。何を根拠に私が優しいって思ってるの?


 呆け顔を浮べている私を見て、サラスはクスクスと笑い、ゆっくりと立ち上がる。


「安心してください。ミーナ様が望むのであれば、私たちは協力を惜しみませんが、ゆっくりで良いんです。ゆっくり……気持ちを固めることが出来れば、震えることはありませんよ」


 扉を開け、サラスは満面の笑みを私に見せる。


「休憩時間が終わりましたので、業務に戻ります。もう少しここにいますか?」


 私は瞼を閉じ、数秒考えた末、冷めてしまったミルクを飲み干し、立ち上がる。




 ◇◇◇




「ソフィア!」


 無表情で門番の仕事を全うしているソフィアに声をかける。私の声に反応したソフィアは即座に体を私に向け、片膝をつく。


「ミーナ様。気分の方はもう良いのですか?」


 私は無言でコクリと頷き、心なしかソフィアは安堵の表情を浮かべる。


「良かった……ミーナ様、あのですね……」


「ソフィア! ごめん!」


 顔を上げたソフィアは目を丸くし、私は背後にいるサラスに目を向ける。サラスはコクリと頷き、私は思いを口にする。


「私がワガママ言ったばっかりにアンタには迷惑かけたわね。本当にごめん!」


「ミーナ様!?」


 突然頭を下げる私を見て、ソフィアは困惑し、私に顔を上げるよう懇願する。


「どうやら私は気持ちが揺らいでるみたい。木製の剣といえども、私は他人に剣を構えることに抵抗を覚えているわ。だけど、私は諦めていないわ。ソフィアさえ良ければ、また私に剣を教えてくればかしら?」


 ソフィアは私の背後にいるサラスに目を向け、対処を求めるが、サラスの笑顔が私の言葉を後押しした。


「……ミーナ様。謝るのは自分の方です。武器を構えさせる前に心理状況を確認するべきでした。ですが、ミーナ様のお気持ちは確かに受け止めました」


 私は顔を上げ、笑みを浮べ、ソフィアに抱きつくカウントダウンを開始していた。


「かかし相手に構えるところから始めましょうか……って!?」


 不意に抱きつかれたソフィアは体勢を崩し、背中から地面に倒れ込む。


「ちょ! ミーナ様!?」


「ソフィア!! ありがとう!!」


 私とソフィアがじゃれているのを見て、サラスはクスクスと笑う。


「ちょっと、サラス!! 笑ってないで助けて!!」


 ソフィアがサラスに助けを求め、サラスは仕方なさそうな表情を浮かべ、私をソフィアから引き剥がす。




 ◇◇◇




 場所は変わり、王宮市街地のとある喫茶店。


 喫茶店でありながらも個室が用意されており、一個室の扉が開く。


「……早かったじゃないか。ジーク」


 個室の中にいたのはエディックで、個室の中に入ったジークは即座に扉を閉めた。


「呼び捨て……ですか。タメ口の方がよろしいですか?」


「当然だ。そのために個室を用意したんだ。さあ、座ってくれ」


 エディックはジークを向かいの席に招き、笑みを浮べてジークを見つめる。


 既にテーブルの上に用意されている紅茶に手を伸ばさないジークを見て、エディックは声をかける。


「紅茶以外が良かったか? 飲みたいものや、食べたいものがあったら言ってくれ。出来れば小遣いの範囲内で……」


「エディックさん! お話とは?」


 大きな声で話すジークに対し、静かにしろとジャスチャーするエディック。誰かに聞かれていないか心配するエディックだが、安全を確認した途端、ホッと胸を撫で下ろす。


「個室とは言え誰が聞いているか分からん。小さな声で話してくれ」


 ジークは納得しがたい表情を浮かべ、紅茶に手を伸ばす。


「……シャフリちゃんは送り届けたのか?」


「林道の途中まで送り、偶然会ったメイドさんに引き継いでもらいました」


「そうか……」


 エディックは紅茶を一口飲み、真剣な眼差しでジークを見つめる。


「薄々分かっているかもしれないが、バルディゴさんを手にかけたのは殺し屋だ」


「殺し屋……一体誰が雇ったのですか?」


「それはまだ分からない……だが、バルディゴが残した言葉には続きがあった」


「続き?」


 数秒の沈黙の末、エディックはバルディゴが残した言葉を口にする。

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