ミーナと仕事2
朝食を食べ終え、不本意ながら頼まれた仕事に取り組もうとする。
「改めて……で? 何をすれば良いの?」
ジークが私の前に1枚の書類を差し出し説明する。
「まずはメイド長や旦那様が作成された請求書の合計金額に間違いが無いかをチェックしていただきます」
「合計金額?」
書類を手に取り、頭から順に目を通す。
「はい。請求金額から控除する金額を差し引いてもらい、記載されている金額と照らし合わせてください。計算する際は、こちらの算盤をお使いください」
ジークが算盤を私の前に差し出すが、私は言葉を返さず、書類に目を通す。
「お嬢様?」
「少し黙って……1項目差し引かれていない部分があるわ」
私はジークに書類を返し、理解が追いついていないジークは目を丸くする。
「……と言いますと?」
「言葉の通りよ。この……継続居住割引? ってやつかしら? これを差し引いていないわ」
私の見解を聞いたジークは笑みを浮べ、私に拍手を送る。
「暗算とは……これは恐れ入りました。しかも、早くて正確ですね」
「数字にはちょっと強くてね。8桁までなら暗算できるわ」
「流石です! お嬢様! それなら予定していた工程を変更して、引き続きお嬢様には……」
ジークは次々と書類を執務机の上に置き、あっという間に書類の山が出来あがる。
「この書類全ての計算をチェックしていただき、誤りが無いものはそのまま自分に渡してください。もし、誤りがあるものが出てきたら、誤りの部分にメモを書いて渡してください。自分は書類の修正を行い、請求書の発送準備に取りかかります」
「ちょ、ちょっと待ってッ!! 流れのまま説明しているけど、この書類の山は何枚あるのッ!?」
思わず怯えてしまうほどの書類の山を見て、ジークに尋ねる。ジークは満面の笑みを浮べて、はっきりと答える。
「お話を聞いた限り、5,000枚はあるかと」
ご、5,000ッ!?
「ば、ばっかじゃないのッ!? この量を今日中に終わらせろって言ってるのッ!? 出来るわけ無いわッ!!」
「今日中とは伺っていませんが、出来る限り処理しておいて欲しいとのことです」
あ……あ、あのクソババアァァッ!! 帰ってきたら覚えてろよッ!!
◇◇◇
「ミーナちゃんッ!! 遊びに来たよッ!!」
元気溢れる声で、いつもみたくミーナの部屋の窓から侵入しようとするシャフリだが、部屋の中には誰もいなかった。
「あれ? ミーナちゃん? ジークさん?」
いつもそこにいるであろうミーナとジークの名前を呼ぶが、返事がくることはなく、シャフリは靴から持参してきたスリッパに履き替え、部屋の中に入る。
「何処行ったんだろう?」
窓の外や廊下を探索するが、ミーナの姿を見つけることは出来なかった。
「見晴台かな?」
しかし、予想は虚しく外れ、見晴台にもミーナの姿は無かった。
「中庭?」
中庭にも足を運ぶが、そこにもミーナの姿は無かった。
「え~? いないの?」
再び屋敷の中に戻り、鍵が掛かっている部屋はノックし、反応があるかないかを確かめ、鍵が掛かっていない部屋は少しだけ開けて、中を確認する。
数十もの部屋を周り、シャフリはとある部屋のドアノブを回す。
「ミーナちゃん? ……いないかぁ、ん?」
その部屋に設置されているベッドで誰かが寝ており、乾いた咳が部屋中に響いていた。
布団に籠もっていたため誰か分からないが、シャフリは恐る恐るベッドに近づく。
「……あ、あの~。大丈夫ですか?」
返事をするかのようにその人物は咳き込む。咳に驚きながらも、シャフリは顔を拝見しようと、さらに近づいてしゃがみ込む。
「あれ? カーリーさん?」
咳き込んでいた人物の顔を見て、シャフリは首を傾げる。シャフリの存在に気づいたカーリーは、気力を振り絞って目を開ける。
「ゴホッ……シャフリちゃん? どうしてここに?」
「ミーナちゃんを探してたら迷い込んじゃいました」
「そう……申し訳ないけど、私風邪引いているから早く出て行った方が良いわよ。ゴホッゴホッ!! ……移ったら大変だし」
しかし、シャフリは部屋から出て行こうとはせず、カーリーの額に手を当てる。
「ちょ、シャフリちゃん?」
「結構熱がありますね……少し待っててください! 今、解熱薬を調合しますので!」
シャフリは腰に携えているポーチから試験管と数種類の薬草、そして液体ポーションを床に広げる。
「気にしなくて良いわよ。寝ていれば風邪は治るから……」
「熱や咳で苦しんでいるのに、放っておくことは出来ませんよ! こう見えても魔法薬を取り扱っている店の娘ですよ? 解熱薬程度の調合なら朝ご飯前ですよ!」
口を動かしているにも関わらず、シャフリの手は流れる水のように動き、1分も経たないうちに液体の解熱薬を完成させた。
「出来ましたよ! さあさあ、飲んでください!」
無理矢理カーリーの上半身を起こし、解熱薬を口の中に流し込む。
「あ、そうそう。飲むと30分ほどで熱は下がると思いますが、即席で作った解熱薬なので、味の保証は出来ません」
解熱薬が半分ほど口に流し込まれたカーリーは顔を青ざめさせ、解熱薬を戻そうとする。
「ああッ!! ダメですよッ!! 吐いたら意味ないじゃ無いですか!!」
(にっがッ!! うわッ!! にっがッ!!)
40年間、生きてきて味わったことの無い苦みがカーリーを襲い、必死に吐き出そうとするがシャフリが戻させまいと手でカーリーの口を塞ぐ。
あまりの苦さに気を失ってしまったカーリーはベッドの上で痙攣し、シャフリは「あちゃ~」と声を漏らす。
「薬草の苦みが強すぎたのかな? まあ、良薬口に苦しって言うから仕方ないか~」
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