ミーナと仕事1
私は今、非常に機嫌が悪い。
理由? それは私の前にいる母が朝早くから呼び出して、狂気じみたことを抜かしているからだ。
「何で私がアンタの仕事を手伝わなくちゃいけないのよッ!!」
「だって~、カーリーちゃんが熱を出して寝込んじゃったから……」
ちょっと待て……前日のジークの話を聞く限り、大雨降ってる中、カーリーに庭の手入れをしろって命令したのはアンタでしょ? そりゃあ、カーリーに非があるらしいけど、体調崩させるような罰を与えるんじゃないわよッ!!
「ざっけんじゃないわよッ!! 自分が下した罰でカーリーが体調崩したんでしょ!? それで人手が足りなくなるのは自業自得よッ!!」
「うぬッ……返す言葉がないわ。でも、今日だけ手伝って欲しいの」
しつこい……いつになく食い下がってくる。
「どうしても王宮街で商談してこなくちゃいけないの。1件2件程度ならエディックに行かせるんだけど、件数も多い上に、急を要するものが数件あるから、エディックだけじゃ捌けないし、私も出なくちゃいけないの。だから今日だけジークくんと一緒に書類整理して欲しいのッ!」
私の横で一言も発することなく笑みを浮べているジークを見て、私はさらに声を大にし、執務机を思いっきり叩く。
「だからって何で私が!?」
すると母は背もたれに背を預け、思いを口にする。
「話すのはまだ早いかなって思っていたけど、仕方ないわ……ミーナちゃん。貴女はいずれこの屋敷を継ぐ事になるのよ?」
「屋敷を継ぐ? 私は継ぐ気なんてないわ」
「そうはいかないわ。代々続くミストレーヴ家の土地を管理し、人々に分け与える。これは初代アルカディア国王と初代ミストレーヴ家当主で交わされた絶対に破ることが出来ない約束。末代まで続く約束よ」
勝手な約束交わしやがって……初代ミストレーヴ家当主をぶん殴ってやりたいわ。
「それに、書類整理をミーナちゃんに手伝ってもらおうって言い出したのはジークくんよ」
私の視線は即座にジークに向き、私は流れるようにジークの胸ぐらを掴み、前後に揺さぶる。
「またアンタは余計なことを提案してッ!! もう少し私の思いを尊重しなさいよッ!!」
揺さぶられているジークは笑みを保ったまま、私に言葉を返す。
「ハハハ……お言葉ですがいつもお嬢様の思いを尊重していますよ。それに、これはお嬢様が成長できるチャンスだと考えているのですが……」
成長という言葉に反応した私は手を止め、ジークを解放する。
「成長? まーた訳の分からないことを……」
「言葉の通りですよ。王宮での会食以降……いや、その前からお嬢様の心の成長を感じておりました」
「だったら良いじゃない」
「いえ。心は成長していても、一般常識はお世辞にも成長しているとは言えません」
言っていることは間違いなく正論なはずだが……何かムカつく。
「かといって、いきなり外に出て学ぼうにも、まだお嬢様は他人に対して抵抗があると自分は見ています。なので、屋敷の中で一般常識を身につけられないか模索していたところ、奥様から手伝って欲しいと声をかけられたのです」
「お願いッ!! ミーナちゃんッ!! もちろんタダとは言わないからッ!!」
手を合わせて懇願する母を横目に、私は顎が痛くなるくらい歯ぎしりし、苦渋の末、答えを出す。
「だぁーッ!! もう!! 分かったわ!! 今日だけよッ!! 2度はないからね!!」
すると母は明るい笑みを浮べ、ジークは「よしよし」と言わんばかりの表情を浮かべる。
「ありがとうッ!! ミーナちゃん!! それじゃあ、仕事内容はジークくんに説明してあるからジークくんに全部聞いてね。それじゃあ、もう行くからね」
「あ、ちょっと!!」
「あと、ジークくんや他の人に迷惑かけちゃダメよ?」
アンタは今、私に大変迷惑をかけているんだけど?
「ちょっと待てッ!!」
私の怒鳴り声では母は止まらず、颯爽と部屋から出て行ってしまった。
「あんの……クソババアァァッ!!」
「まあまあ……お気持ちは分かりますが、落ち着いてください」
「落ち着けるかッ!! 第一アンタが……」
ジークの顔に指を指した瞬間、怒りが呆れに変わり、母が座っていた椅子に腰を下ろし、ため息をつく。
「……はぁ。半ば強引だったけど、引き受けてしまったものは仕方ないわ。で? 書類整理って何をすれば良いの?」
「業務に取りかかる前に1つ良いですか?」
人がやる気を出そうとしているのに何よ?
「さっさと言いなさい」
するとジークは出入り口に向かっていき、廊下に出て、ワゴンを押しながら部屋に戻ってくる。
「まだ朝食を取っていませんでしたね。何かをするにしても、朝食を食べないと最高の働きをすることは出来ません。どうぞ」
微かに香る紅茶の香りと……クリーミーな匂い。恐らくポタージュだろう。嗅覚を刺激され、私の腹部が突然鳴る。
「クッ……」
するとジークは笑みを浮べて紅茶をカップに注ぎ、私の前に置く。
「どうぞ」
我慢できなくなった私は紅茶に手を伸ばし、一口飲む。
紅茶を飲んでいる間にジークは料理を私の前に並べ、紅茶によって思考を停止させられた私は、次々と料理を口に運んでいた。
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