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ミーナと遊戯1

 色々ありながらも朝食を済ませ、部屋でゴロゴロしている私は、あることに悩まされていた。


 暇だ。


 生まれて18年間、幾度となく悩まされてきた症状が、再び私に襲いかかってきた。


 窓から景色を見るのも飽きたし、屋敷にある本は全部見てしまったし、遊ぼうにも相手がいないし……どうすれば良いかしら? 仕方ない。またアイツに頼るか。


「ジークぅ!」


 私が声を発した数秒後に、ジークが扉をノックする。


「失礼します。ミーナお嬢様。ご用件は何でしょうか?」


 相変わらず、待っていたんじゃないかと思うくらい早く来たわね。


 私はベッドから腰を上げ、ジークにある質問をする。


「ジーク。私を見て何を感じる?」


 ジークは顎に手を当てて、真剣に考え始める。そして、悩んだ末に出た答えが。


「少々暇を持て余してますね」


 ド直球過ぎるわ! でも当たっているのは事実。まあ、私の執事でいたいって言うのであれば悟って当然ね。


「そう。私は暇なの。そこであんたに命令を下すわ。私が暇にならないよう、毎日何か遊戯を考えてきなさい」


「日替わりでですか?」


「そう。毎日同じ事をしても飽きる。私を飽きさせないで」


 命令を承ったジークは軽く笑みを浮かべる。


「承知しました。お嬢様。それでは早速、お嬢様に体験していただきたい遊戯があります」


「説明しなさい」


「それでは中庭に行きましょうか」


 私は頭上に疑問符を浮かべながら、ジークと共に中庭へと向かった。



 ◇◇◇



 中庭に着くと、木のある程度の高さに板が取り付けられており、その板に鉄の輪とネットがぶら下がっていた。そして、ジークに目を向けると、オレンジ色のボールを指先で回していた。


「何をするつもりなの?」


「お嬢様にはバスケットボールをやっていただきます」


「バスケット? バスケットなんてどこにもないじゃん」


「遠足などに持っていくバスケットではなく、競技の名前です」


 聞いたことのないワードに困惑する私に構うことなく、ジークは遠距離からボールを板にめがけて放つ。手首のスナップにより回転しながら飛んでいくボールは、鉄の輪に吸い込まれていくように入っていった。


「おお~」


「改めてご紹介させていただきます。木に取り付けられているあれがゴールです。そしてリングにボールを入れて、得点になります」


「要するに玉入れって事ね」


「簡単に説明しますと、そうなります。そしてボールを持っている状態で移動するときは、地面にボールをバウンドさせながら動きます」


 ジークが実際にやって見せながら私に説明してくる。巧みなステップを混ぜ、目にも止まらぬ速さでドリブルしながらゴールに近づく。そしてボールをしっかり持ち、膝を思いっきり曲げて高く跳び、ボールをリングに直入れする。


「取り敢えず、お嬢様もやってみましょう……っとその前に」


 私は首を傾げて、近づいてきたジークの目を見つめる。


「動きやすい服を準備しましたので、着替えてください」


 ジークは私にある服と靴を手渡す。困惑しながらも、近くにあった化粧部屋で着替えた私は、再び中庭に戻る。


「着替えたわよ。何かダサいわね」


「デザインに関しては同意します。ですが、動きやすさと、耐久性に優れた洋服です。ジャージと呼ばれていて、外の世界の技術を取り入れ、素材も出来る限り代用品なしで作った最新の運動服です。それに伴って作られたのはその靴です。速く走るため、高く跳ぶためだけに作られた靴です。今度から外で運動をするとき、それらを着ていただきます」


 性能をサラッと聞いた私は、試しに軽くジャンプしてみる。するとビックリ! 普段着ている服よりも体の曲げ伸ばしがしやすく、靴のお陰か最後に跳んだとき以上に跳べて、足にも負担が全く掛からなかった。


「え? ええッ!? 何コイツら!? メチャクチャ動きやすいし、跳べる~!」


 嬉しさのあまり、私は何度も跳びはねる。


「お気に召して何よりです。それではボールに触れる前に、軽く準備運動をしましょう」


「その必要はないわ! この服と靴さえあれば問題ないわ」


 私は地面に転がっているボールを拾い上げ、ゴールに向かって駆けていく。


「いけません!! お嬢様!!」


 ジークの注意を無視して、私は地面を思いっきり蹴り、リングに向かってボールを投げる。勢いよく飛んでいったボールは、リングの中には入らず、私の顔面めがけて返ってくる。


「ブハァッ!!」


 ボールが顔面に直撃した私は、体勢を崩し、変な角度から地に足を着ける。


「ハウッ!!」


 激痛のあまり、変な声を出した私はその場で蹲る。ジークは頭を抱えながらも、私を抱きかかえ、日陰に寝かせる。


「イツツツッ!!」


「痛いところはどこですか?」


 言葉を出せない私は、痛みが走っているところを指さす。


「顔と右足首ですね。顔は鼻血が出ているだけですので大丈夫ですが、足は捻挫していますね」


 するとジークはどこから持ってきたのか、救急箱を開け、常備していたハンカチで私の顔を拭く。そして布きれを私の鼻の穴に押し込ませる。


「失礼しますね」


「ふぉあ……いたい」


「しばらく、その布は押し込んだままにしててください。そうすれば血は止まるはずです……次は足ですね」


 ジークは私の右足首にグルグルとテープを巻き付け、動かないように固定し、氷の入った袋を押し当てる。


 そしてジークは悲しそうな表情を浮かべて、私にポツリと言葉をこぼす。


「申し訳ございません……」


 その言葉を聞いた私は、ジークの注意を無視したことを後悔した。

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