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豪雨を見て

「ただいま戻りました……お嬢様はどうなされたのですか?」


 部屋に戻ってきたジークが机に顔を伏せて身動きが取れない私を見て、首を傾げる。


「あ、ジークさん。お疲れ様です。ミーナちゃんは……魔力切れです」


 シャフリから状況を聞いたジークは納得の表情を浮かべ、私は体にムチを打って顔を上げる。


「ぜぇ……ぜぇ……やっと、戻ってきたわね。どこ……行ってたの?」


「申し訳ございません。カーリーメイド長の代わりに業務をこなしていました」


 カーリーの代わりと聞いて、私は察する。


「まーた何かしたのね。あの腹黒メイド」


「それと……シャフリ様。シャフリ様宛に通信バットが来ています」


 ジークはポケットから通信バットを取り出し、シャフリに手渡す。シャフリは首を傾げながらも通信バットを受け取り、通信機能を起動させる。


「はい」


『やっと繋がったか。シャフリ』


 通信バットから発せられる声を耳にしたシャフリは顔を青ざめさせ、体を震わせる。


「お……お父さん」


『夕方に商談があるから店番を頼むと言ったはずだ。いつになったら帰ってくるんだ?』


「いや、お父さん……私今ミーナちゃんの所にいるんだけど、豪雨で帰れなくなって……」

『だから?』


「ヒィッ!!」


 ドスの利いたバルディゴの声は迫力があり、シャフリは思わず通信バットを落としかける。


『約束は約束だ。雨が降っていようが、雷が降っていようが帰ってこい。さもないと、今晩の食事はアスパラにするぞ』


「ず、ズルいッ!! 私がアスパラ食べられないのを知ってッ!!」


『嫌なら早く帰ってこい。それじゃあ』


 一方的に通信が切断され、通信バットは眠りにつく。

 通信バットを優しく机に置いたシャフリは冷や汗を流し、私に目を向ける。


「どどど、どうしよう!! ミーナちゃん!!」


 私は帰れって言ったわよ。


「さっさと帰りなさい。私も疲れたし、丁度良かったじゃない」


「良くないよッ!! お父さん本気で怒っているし、今から帰ってもアスパラは確定だよッ!!」


「知るか。とにかく、これ以上バルディゴさんを怒らせたくないんだったら、速やかに帰りなさい」


 焦りながらもシャフリは帰宅準備を始め、持参してきた魔道書と黒の魔女帽子を手に取り、窓を開ける。


「だから窓から出入りするな」


「緊急事態だから許してッ!!」


 いつもそこから入ってくるのは緊急事態だとでも言いたいのか?


「ヒィィ……」


 外は相変わらず豪雨が続いており、シャフリは外に出るのを躊躇っていた。


 その時、シャフリの背後からジークが声をかける。


「シャフリ様」


 ジークの手にはビニール状の何かが携えられていた。


「それは?」


「雨合羽です。使い捨て用のですが、よろしかったら使ってください」


 シャフリは迷うことなくジークから雨合羽を受け取り、身に纏う。


「す、すみません。ありがとうございます! それではッ!」


 ジークが「お気を付けて」と言ったときにはシャフリの姿はなく、窓から入ってくる雨風が身に沁みる。


「……あのバカ。窓くらい閉めて行きなさいよ」


 私は頬杖をつき、ジークがゆっくりと窓を閉める。そして、ジークが振り向く前に私は口を開ける。


「で? 何をしていたの?」


 ジークはキョトンとした表情を浮かべるが、私はジークが珍しく見せた隙を突く。


「カーリーの代わりに仕事? で? アンタはカーリーの代わりに何をしていたの?」


 ジークは顎に手を当て、困った表情を浮かべる。


「……どうしても、説明が必要ですか?」


「命令よ。話なさい。それに、シャフリの勤勉魔法指導で半日も潰されたから、少しは息抜きに付き合いなさいよね」


 ジークは苦笑いを浮べ、その場で説明を始めようとする。


「ちょっと。何突っ立っているのよ……なさい」


「え?」


「私とアンタの分の紅茶を用意して座りなさい」


 ジークは驚きの表情を浮かべ、私に掌を見せる。


「いえいえ……従者ごときが仕える主人と同席するなんて……」


 私はジークの足下を見て、指差す。


「裾……濡れてるわよ」


 ジークはしまったと言わんばかりの表情を浮かべて、頭を下げようとするが、私はジークから目を逸らし、思いを口にする。


「体や髪は濡れていないようだけど、こんな豪雨で外に出て業務をこなして……疲れているでしょ? 今回だけ特別に許すわ」


 再びジークは苦笑いを浮べ、後頭部をボリボリと掻く。


「じ、実はですね……」




 ◇◇◇




 ジークから事情を聞いた私は、新たに淹れてもらった紅茶を一口飲む。


「なるほど……あのお試し2人の様子を見に行っていたのね」


「大変申し訳ございません。勝手なことをしてしまい……」


「確かに不便だったし、疲れたけど、仕方ないわ。全部カーリーが悪いんだもん」


 外から何か聞こえたような気がしたが……気のせいかな?


「本当に、申し訳ございません」


「謝罪はもういいわ。アンタは何も悪くないわ……だけど」


 私は窓の外に目を向け、降り続いている雨を見て目を細める。そして、ため息をつき、瞼を閉じる。


「ジーク」


「はい」


「悪いけど……私のワガママ、聞いてくれる?」

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!

伊澄ユウイチです。


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