ジークと門番4
「あ~、やっぱり魔法の練習は疲れるわ~」
疲労感に襲われている私はテーブルに顔を伏せ、魔道書を問答無用で閉じる。
「でも、前よりスムーズに詠唱出来ているし、中級魔法程度ならいつでも唱えられるでしょ?」
つきっきりで私に魔法の指導をしてくれたシャフリが、笑みを浮べて私を励ます。
「まあ……そうだけど」
「サロミアさんの言うとおり、ミーナちゃんは覚えが良いからこっちも教え甲斐があるよ」
「ケッ!! あのクソババアは私の何を見て言ってるのやら」
他愛も無い会話をしている最中、扉がノックされ私とシャフリは扉に目を向ける。
「誰?」
「お嬢様。ジークです」
「入りなさい」
扉の向こうにいるジークに入室許可を出し、許可を得たジークはゆっくりと扉を開けて中に入る。
「長時間、不在にしてしまい申し訳ございません」
「全く……カーリーには困ったものね。急に入ってきてジークを借りるだなんて……しかも私の返答も聞かずに……最近緩んでいるわね」
疲労と怒りが入り交じり、顔の筋肉が引きつる。自分では見えないが、シャフリとジークの表情から見て、恐らく醜い表情を浮かべている事が想像できた。
「確かに返答を待たないのはマナーとして如何なものかと思いますが、メイド長も急ぎのようだったので、どうか寛大な処置を」
「別に……カーリーは私のメイドじゃないから、処分する権利は私にはないわよ」
「そう……ですか。ところでお嬢様、シャフリ様。見たところ先ほどまで魔法の勉強をなさっていたのですか?」
ジークはテーブルの上に置いてある魔道書を見て、私たちに尋ねる。
「はい! ミーナちゃん凄いんですよ。短い期間で中級魔法はマスターしたと言っても過言じゃないくらい上達していますよ!」
シャフリが自分の事のように嬉しそうな表情を浮かべて、ジークに経過を報告する。
「ちょ、変なこと言わないでよッ!! アンタは私を過大に評価しすぎよッ!! それにアンタと比べたらまだまだよッ!!」
「おお……その台詞が出たと言うことは、お嬢様はまだまだ向上を目指していると言うことですね」
あ。もしかして余計なことを言った?
「それではシャフリ様。これからもお嬢様の魔法の先生としてよろしくお願いします」
やっちまったぁぁぁぁッ!!
「それでも、根を詰めすぎるのは良くないので、ここらでティータイムにしませんか?」
「わぁ~、ジークさんの紅茶ッ!!」
シャフリは幼い子供が新しいおもちゃを貰えたときのようにピョンピョンと跳ね回り、部屋の中を駆け回る。
「子供かッ!! 良い歳して、落ち着きってものはないのッ!?」
部屋中を駆け回っていたシャフリだが、窓の外を見るなり足を止め、呆け顔になる。
「あれ?」
「アンタのテンション波がありすぎじゃない?」
私は呆れ顔を浮べながらシャフリの横に並び、窓の外を見る。
「雲行きが怪しくなってきたね……一雨来そうだね」
雨雲だと思われる灰色の雲が空を覆い始め、風も吹き荒れ始めた。
「さっきまで良い天気だったのに……帰るの面倒だなぁ。泊まっちゃおうかな?」
「いや、帰れよ」
私の辛辣な言葉に少し傷ついたシャフリは涙を浮べ、私の肩を揺すってくる。
「そんな酷いこと言わないでよ~。ミーナちゃんは私の事が嫌いなの?」
「嫌いじゃないけど鬱陶しい」
その一言がシャフリの涙腺を崩壊させ、駄々をこね始めるシャフリを私は懸命になだめる。
その時、視界の端にジークの姿が入り込み、一瞬だけ意識をそっちに向ける。ジークは窓の外を見ているが、空ではなく、下に目を向けていた。
「ジーク?」
「お願いだよ~、ミーナちゃ~ん」
ジークに声をかけようとしたが、シャフリが突然抱きつき、私はシャフリを引き剥がそうとする。
「いい加減にしてッ!! 良い歳して駄々をこねるなぁぁッ!!」
◇◇◇
雲行きが怪しくなり始めて数分後。
ポツポツと雨が降り始め、天候の変化に気づいたソフィアとサラスは雨合羽を着用する。
「ソフィア。風も強くなるから、気をつけて」
「サラスこそ。無理しないで」
次第に本格的に雨が降り始め、雨合羽が音を鳴らすほどの豪雨になる。2人は余計な会話を交わすことなく、門の前に立ち続ける。
雨合羽を着ているとはいえ、次第に雨が染みこみ始め、体温が低下し始める。
「……ボロ合羽め。街から出てくる前に新調してくれば良かった」
「今はお試し期間だし、本採用されたら買いに行きましょうよ」
本採用という言葉に不安を抱いたソフィアは一度視線を落とし、サラスにある質問をする。
「サラス」
「どうしたの?」
「もし……ミーナ様に認めてもらえず、暇をだされたらどうする?」
サラスも同じ心境だった。
屋敷主、サロミアはともかく、自分たちが仕えたいと言っているミーナが自分たちを拒み、追い出そうとする展開を想像すると、不安でいっぱいだった。
「ソフィア……」
その時、ソフィアの耳が音を拾い、ソフィアは玄関に目を向ける。ソフィアにつられてサラスも視線を向ける。
そこには傘を差し、布袋を携えた男性の姿があった。
「お疲れ様です」
『ジークさん!?』
2人は驚きの表情を浮かべながら声を重ね、2人の反応を見たジークは笑みを浮べる。
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伊澄ユウイチです。
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