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ジークと門番2

 2つの条件を提示したジークに対し、驚きの表情を浮かべていた3人だったが、ソフィアの目つきが鋭くなる。


「ハンデですか……私たちが王国騎士団であった事を忘れていませんか?」


「もちろん存じております。決して舐めているわけではございません。ですが、自分も戦うことに関しては自信があります。だから、この条件を提示させてもらいました」


 ジークの表情から笑みが消え、本気だと察したソフィアはため息をつき、サラスに声をかける。


「サラス。準備するわよ」


「え?」


「何を言っても無駄みたい。だったら、私たちにハンデを与えたことを後悔させるだけよ」


 ソフィアはジークに背を向け、数メートルほど離れ、模造の剣を手にする。ソフィアの後を追い、横に並んだサラスは魔道書を手に取り、2人とも臨戦態勢に入る。


「ジークくん……」

「メイド長」


 カーリーが何か伝えようとするが、ジークは言葉をかぶせる。


「できるだけ手短に終わらせるよう善処します」


 ジークの表情から何かを感じ、カーリーは思わず一歩後退し、それ以上言葉を口にしなかった。


 カーリーが安全な場所まで離れたのを確認したジークは2人に目を向け、準備が完了したと伝える。


「先ほども言いましたが、全力で……殺す気で来てください」


「言われなくても」

「分かっています!」


 ソフィアは力強く地面を蹴り、一気にジークとの間合いを詰める。切っ先が触れられる範囲まで辿り着くと、ソフィアはジークの喉元めがけて剣を振る。


 しかし、剣の軌道の先にはジークの姿は無かった。


「!?」


「どこを狙っているのですか?」


 ソフィアの視界にジークが再び映ったのは、数メートルほど奥に離れた場所だった。


「そんなバカな……」


 ソフィアの動きは決して遅くは無く、剣を振った先には確かにジークの姿があった。しかし、ジークは瞬時に剣の軌道を読み、瞬間移動したかのような速さで後退していた。


「間合いの管理は完璧です。ですが、一撃で仕留めることに拘り、軌道が簡単に読めてしまいます」


 ソフィアは自分の動きを即座に分析され、ジークを睨みつけながら舌打ちする。


「おっと」


 何かを感じたジークはその場から離れる。


 1秒後、ジークのいた場所に火柱が上がり、荒野の雑草を燃やし、大地を焦がす。


「炎属性の遠隔起動魔法ですか。危うく直撃するところでしたが、魔力が強すぎます。魔力を感知できる相手に当てるのは不可能に近いですよ」


 ジークは魔法を放ったであろうサラスに目を向ける。不意を突いた魔法が躱されたが、サラスはショックを受けることなく次々と魔法を詠唱する。


「アクアトルネードッ!!」


 サラスが詠唱した後、ジークの周囲に水の竜巻が数個現れ、ジークを囲む。


 チラッと周囲を確認したジークは地面を思いっきり蹴り、空中に逃げる。


「空中に逃げるのは予定通りです! フレイムッ!!」


 無数の火球がサラスの周りに現れ、宙を舞っているジークめがけて飛んでいく。


 飛んでくる火球の数と軌道を一瞬で見極めたジークは体を捻り、空気を蹴って空中移動を行い、全ての火球を回避する。


「え? 今の避けます?」


「追い込み方も仕留め方も悪くないですが、一呼吸遅いですね」


 ジークが地上に降り立った瞬間、着地隙を狙っていたソフィアが背後から剣を振る。


 ソフィアの動きを予想していたジークは視線を向けること無く、攻撃を全て避ける。


「見事な剣技。文句の付け所はありませんが、真っ直ぐ過ぎます。動きが予想しやすいですよ」


「チッ……分析にアドバイスまでする余裕があるとは……やっぱり私の耳は正しかった」


 舌打ちし、険しい顔を浮べていたソフィアだったが、ジークの動きを見て笑みを浮べる。ソフィアの笑みから何かを感じ取ったジークは目を細め、姿勢を低くし、大きく距離を取る。


「良い判断ですね。あのまま私の間合いにいたら、胴体が真っ二つになっていましたよ」


「怖いですね……異変に気づけて良かったです」


 再びジークと距離を詰めようとするソフィアだが、あることに気づき、体全体の力を抜く。


「ソフィア様?」

「ソフィア?」


 ジークとサラスはキョトンとした表情を浮かべ、サラスは魔道書を閉じる。


「如何なさいましたか?」


「どうして攻撃してこないのですか? 私の最初の攻撃を躱したときも反撃できたはずです。何故ですか?」


 するとジークは笑みを浮べ、腕を後ろに組む。


「様子見がてら、体が満足に動くか確認していました。そして、今の貴女たち……まだ本気を出していない貴女たちに攻撃するのは、些か気が引けまして……」


 ソフィアとサラスは一瞬驚いた表情を浮かべ、共に笑みを浮べる。


「やっぱりバレていましたか……ソフィア。キリもないし、仕方ないでしょ?」


「そうね……全力で来いと言われているのに全力で挑まなかったことは謝罪します。それでは、ここからは全力を出させてもらいます。そして……貴方が攻撃せざる得ない状況に追い込みます。覚悟は良いですか?」


 ジークは笑みを浮べ、2人の出方を窺う。


 サラスがソフィアの横に並び、2人は首に吊していた小さな笛を手に取る。


『護符演奏・フォルテ』


 笛を口に咥え、軽く息を吹きかける。そして、甲高い音が荒野に響き渡り、2人の足下に白い魔方陣が現れる。

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