ジークと門番1
ソフィアとサラスの会話に割って入ったカーリーは笑みを浮べて、2人に注意喚起をする。
「会話をするなとは言わないけど、私の気配も感じられないほど会話に熱中するのはよろしくないわね」
サラスは軽く頭を下げるが、ソフィアはカーリーに背を向け、深く息を吐く。
「よく言いますね。気配どころか、足音まで消して近づいてきたじゃないですか。それに私は真面目に業務に取り組んでいました。喋っていたのはサラスです」
カーリーは「あれ?」と首を傾げ、ソフィアに裏切られたサラスは酷く落ち込む。
「私、耳だけは良いんです。以後、覚えておいてください」
「そう……覚えておくわ」
1本取られたカーリーは後頭部を掻き、いつものラフな姿を見せる。
「まあ、2人とも。頑張りすぎないように気をつけてね。空回りするのが1番良くないからね」
「カーリーさん。ありがとうございます」
サラスは深々と頭を下げ、背を向けてその場から立ち去ろうとするカーリー。しかし、そのカーリーをソフィアは呼び止める。
「待って」
「ん? 何か質問でもあるの?」
真顔を浮べ続けるソフィアを見て、カーリーは首を傾げる。
「確認ですけど……貴女、メイド長ですね?」
ソフィアの質問に、カーリーは胸を張って答える。
「ええ、そうよ。この屋敷で1番長くメイドをしているし、仕事もそれなりに出来るわ」
「なら、頼みがあります」
「頼み?」
カーリーとソフィアの隣にいたサラスは首を傾げる。その時、暴風が3人の間を駆け抜け、乱れる髪に隠れ、ソフィアは笑みを浮べる。
◇◇◇
ソフィアがカーリーに頼み事をしてから2時間後。
カーリーはある人物を連れて、再びソフィアとサラスの前に現れた。
「はい。約束通り連れてきたわよ」
カーリーが連れてきたのはジークだった。
「メイド長。自分はまだ業務が残っているのですが……」
「安心しなさい。ミーナお嬢様のお世話は私がするし、当番仕事も他のメイドに頼んで終わらせておくから、ね?」
全く話を聞いてくれないカーリーに呆れ、ジークは改めてソフィアとサラスに視線を向ける。
「業務中に失礼します。自分に用があると伺ったのですが……」
ソフィアとサラスは視線を合わせ、同時にコクリと頷き、ソフィアはジークの足下に木で造られた模造の剣を突き刺す。地面に刺さっている剣を見て、ジークはソフィアに訊ねる。
「……何の真似でしょうか?」
「手合わせを願いたい」
「理由は?」
ソフィアは胸に手を当て、深く息を吸い込んでから思いを口にする。
「貴方もミーナ様と同じ。今まで戦ってきた手練れたちとは違う音色がする。優しく、包み込むようで気持ちいい。だけど、どこか荒々しさを感じる……いや、正確には何かが潜んでいる。今まで聞いたことがない音色の貴方と戦いたい。これが理由です」
「私からもお願いします。今は門番で、音楽団をしていましたが、それ以前に私たちは騎士でした。力ある人とは戦いたい性分です。どうか、受けてもらえませんか?」
サラスは深々と頭を下げ、ソフィアは迷い無い視線をジークに向ける。
自らでは判断しかねるジークは隣にいるカーリーに助けを求める。
「どうしましょうか?」
「良いんじゃない? 私もジークくんや2人の実力は見ておきたかったし」
カーリーの軽い口調に調子が狂いそうになったジークだが、ソフィアとサラスを見て覚悟を決める。
「分かりました。受けましょう」
サラスは「ありがとうございます!」と大きな声を上げ、ソフィアは瞼を閉じて少し嬉しそうな表情を浮かべる。
「それでは、近くの荒野まで付いてきてください」
ソフィアが門から離れようとしたその時、ジークが口を開ける。
「ただし、条件があります」
『条件?』
ジーク以外の3人が声を重ね、ジークは笑みを浮べる。
◇◇◇
条件を明かされないまま、ミストレーヴ家の屋敷から数㎞離れた荒野に4人は到着する。
「さて……それでは条件を発表します」
サラスとカーリーは唾を飲み、ソフィアは表情を崩すことなく、ジークを見つめる。
「条件その1。2人同時に来てください。模造の剣を使っても構いませんが、殺す気で来てください」
『ふ、2人同時!?』
サラスとカーリーは声を重ね、2人の反応を見て、ジークは笑みを浮べる。
「どういうつもりですか? 見くびっているのですか?」
一般人だと怯んで腰が抜けるほどの鋭い眼光をジークに向けるソフィアだが、ジークは怯むことなく、柔らかい口調で言葉を返す。
「気分を悪くしてしまったのであれば謝罪します。ですが、自分から出す条件です。呑めなければこの話は無かったと言うことで……」
仕方ないと言わんばかりに舌打ちし、ソフィアは条件を呑む。
「ま、待ってください。その1って言いましたよね? 他にも条件があるのですか?」
慌てた口調でサラスがジークに訊ねる。ジークは笑みを保ちつつ、次の条件を述べる。
「ええ。2つ目は……」
ジークは門の前で突き刺された模造の剣を軽く振り回し、自分の背後に向かって投げ捨てる。
「自分に武器は不要です。武器を手にしてしまったら負けを認めます」
『!?』
サラスとカーリーは思わず声を上げて驚き、無表情を貫いていたソフィアも流石に驚きの表情を浮かべていた。
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