ミーナを訪ねて3
私の拒否という言葉が部屋中に響き、ジークとシャフリは「ですよね……」と言わんばかりの表情を浮かべ、母たちは呆け顔を浮べていた。
「どうして拒否なの? ミーナちゃん?」
「どうしてもこうしても……これ以上人を雇ってどうするの? 十分屋敷は回っているじゃない。2人に与える仕事は無いはずよ?」
「そんなことはありません。お嬢様」
私の抵抗に対して、ジークが異議を唱える。
「お嬢様の身の周りのお世話は自分が行っていますが、奥様たちの補助、屋敷の管理。その他にも人員を割いていますが、正直足りていない現状です」
「1番痛いのはジークくんが動かせない事ね」
母は眉をハの字にし、皮肉を込めた言葉を私に向ける。
私の所為にすんな。クソババア。ジークも望んで私に仕えているんだから文句言うんじゃないわよ!
「むぅ……人が足りないのは理解したわ。で? 2人を雇うとして、何処に置くつもりなの?」
母とサラスは満面の笑みを浮べ、ソフィアは腕と足を組んで目を閉じる。
「門番よ。門番」
「門番?」
◇◇◇
数時間に及ぶ私の抵抗も虚しく、2人はお試し雇用になり、私は自室の窓から門を守る2人を監視する。
「ねぇ~。ミーナちゃん。気になるのは分かるけど、魔法の勉強するか遊ぶか、どっちかしようよ~」
シャフリが構ってくれと言わんばかりに私に話しかけてくる。
「別に気になってるわけじゃないわよ。ただ監視しているだけ」
「それ気にしているってことだよ」
シャフリが何か叫いているが、無視して紅茶を飲みながら私は2人の監視を続ける。
「お嬢様……どうして拒否し続けたのですか? 未だに理由に納得していないのですか?」
私の隣で窓を拭いているジークが私に訊ねてくる。
ジークと目を合わせず、私はため息をつき、いつもの定位置に戻る。
「いや……理由には納得しているわ。ただ……私の気持ちの整理が追いつかなくて……」
私の気持ちを察したジークは作業を中断し、私のカップに紅茶を注ぐ。
「いきなり従者が増えるって言われても、私はどう振る舞えば良いか分からないし、嫌われたらどうしようって思っちゃって……」
「ミーナちゃんって意外とマイナスに考えるんだね」
シャフリの言葉を返すことが出来ず、私はカップの中で揺れている紅茶を見つめていた。
表向きは強がっているけど、赤の他人と向き合ってしまうとマイナス思考になってしまう。
ジークとシャフリに出会って少しは変われたかな? って思っていたけど、王宮での会食で国王に近づかれたときに、呼吸が荒くなったことは鮮明に覚えている。
やっぱり私は何も成長していない。
「不安になることはありません。お嬢様」
紅茶を飲むのを中断し、ジークに視線を向ける。ジークは優しい笑みを浮べて、続きを述べる。
「2人から黙っていてくれと口止めされていましたが、お嬢様が苦しむのであれば話は別ですね。あの2人……いえ、ソフィア様はお嬢様の言動を、ピアノの音色を聞いて、死ぬまで仕えたいと仰っていました」
「え? あのソフィアが?」
たった数分の会話に数曲だけの演奏で、あの女は私から何を感じ取ったの?
「それに彼女たちは雇われていたといえど、騎士です。騎士はいかなる事があろうとも、主人に忠を尽くし続けるのです。そして、彼女たちはお嬢様が自分たちの思いを受け止めてくれるであろうと信じています」
「……でも」
私はジークから視線を逸らし、逃げようとするが、静かに話を聞いていたシャフリが紅茶を一口飲んで、口を開ける。
「ミーナちゃん。ミーナちゃんなら出来るよ」
「ッ!? どうしてそんなこと言えるのよ!?」
声を荒けさせる私に動じることなく、シャフリはカップを静かに置く。
「だって……ミーナちゃんは私を受け入れてくれたんだよ。他人と触れ合うことを避けていたミーナちゃんが、私から……自分からも逃げなかったんだよ? だから私はミーナちゃんなら2人の思いを受け止めることが出来ると思うの」
シャフリからもっともなことを言われた私は、視線を床に向け、数秒沈黙した後に顔を上げる。
「……2人とも、ありがとう。お陰で私の気持ちは固まったよ。だけど、2人に私の思いを口にするのは、お試し期間が終わった1週間後。それまでは、2人に何も言わないで」
「お嬢様」
「ミーナちゃん」
ジークとシャフリは笑みを浮べ、私は窓の外に目を向ける。
◇◇◇
ミストレーヴ家の門を守るソフィアとサラスは、直立を崩すことなく立ち続ける。
「ねえ、ソフィア」
「業務中よ。無駄口を叩くと、雇って貰えなくなるわよ」
暇になったのか、サラスはソフィアに話しかけるが、ソフィアは目を合わせることなく、前だけを見続ける。
「そうかもしれないけど、1つだけ聞いてもいい?」
「しつこいわね。簡単に答えられるものならね」
「どうして、ミーナ・アリスト・ミストレーヴ様に忠を尽くすことにしたの?」
「愚問ね。あの人こそ……一生付いていくべき存在。あの人の音色……クロノ様とは違う、良い音色」
「そんなに良い音色だったの?」
「人生初めて鳥肌が立った。体が震えた」
「へぇ~。ソフィアがそこまで言うのなら間違いないわね」
「2人とも楽しそうね~」
2人は背後から会話を遮った人物に目を向ける。
「確か貴女は……カーリーさん?」
名前を呼ばれたカーリーはニッコリと笑みを浮べ、その笑みを見たソフィアは目を細める。
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