ミーナを訪ねて1
何事もなく平穏な日々を送っているミストレーヴ家の屋敷にて、2人のメイドが門の前を清掃していた。
「今日も良い天気ね~」
「そうだね~」
2人は手を止め、空を見上げる。
澄み渡った青空に、汚れた心を浄化してくれるような風。そして、元気を与えてくれる太陽。平穏と言う言葉がぴったりな環境に、2人は表情を緩ませる。
「気持ちいいから、ここの掃除が終わったら休憩しましょうか」
「いいね! さっさと終わらせよう!」
2人が本気モードで掃除を再開したその時。
「すみません~。少し良いですか?」
メイド2人は声が聞こえた方向に目を向け、再開したばかりの作業を仕方なしに中断する。
「はい。何でしょうか?」
メイド2人の前に現れたのは2人の女性だった。
1人は女性の平均身長程度で、金髪に金色のケモ耳が生えていた。もう1人は男性の平均身長程で、銀髪でこちらも銀色のケモ耳が生えていた。
銀髪の女性はニコニコと笑みを浮べていたが、金髪の女性は不機嫌そうな表情を浮かべていた。そして、銀髪の女性が口を開ける。
「ミストレーヴ家のお屋敷はこちらで間違いなかったですか?」
「あ、はい。そうですが……」
メイド2人が戸惑っているのを構うことなく、銀髪の女性はさらに口を開ける。
「そうですか! それじゃあ、お願いがあるのですけど……」
メイド2人は首を傾げる。
◇◇◇
私は今……非情に悩んでいる。
ジークに夕食はカレーかシチューのどちらが食べたいかと聞かれたとき並に悩んでいる。どうすれば良いものか……。
「ねぇ~、ミーナちゃん。そんなに悩むことないでしょ?」
「急かさないで、シャフリ。今ここで手を抜くわけにはいかない。じゃないと今までの苦労が……」
「2人でやるババ抜きで、そこまで真剣になるのはミーナちゃんだけだよ?」
シャフリの言葉を軽く聞き流した私は長考の末にシャフリの手札1枚を手元に持ってくる。そして、引いたカードは……ジョーカー。
「……は?」
シャフリは必死に笑いをこらえ、私は持ってきたジョーカーを背後に投げ捨てる。それを見たシャフリは表情を固まらせる。
「あら?」
「ジョーカーなんてなかった。さあ続きをしましょうか」
「ちょっと!! ちょっとッ!! なんでジョーカー投げ捨てているの!? ダメだよッ!! と言うかお互いの勝利がなくなったじゃないッ!!」
「良いじゃない。誰も勝つことなく負けることもない。1番幸せだと思わない?」
「開き直らないでよ~」
シャフリは呆れた表情を浮かべ、私はテーブルの端に置いてあった紅茶に手を伸ばし、一口飲む。
その時、入り口の扉がノックされ、私とシャフリは同時に目を向ける。
「誰?」
「私です。ジークです」
扉の向こうからジークの声が聞こえ、私は中に入る許可を出した。
「入りなさい」
「失礼します。お取り込み中のところ、申し訳ございません」
「別に取り込んでなんかないわよ」
「いや……なかったことにしないでよ。ミーナちゃん」
横で何か呟いているシャフリを無視して、私はジークに用件を尋ねる。
「で? 何の用? 昼食はさっき食べたし、紅茶のおかわりは間に合っているわ」
「いえ。実は、お嬢様に会いたいと仰っている方々がお見えになりまして……」
「拒否」
ジークの言葉を最後まで聞くことなく、私は言葉を返す。ジークは「ですよね……」と言わんばかりに苦笑いを浮べ、私は紅茶を啜る。
「私に会いたいヤツなんているわけないでしょ? 母と勘違いしてない?」
「私はミーナちゃんに会いたいから来てるんだけど?」
私に会いたい変人は隣にいたかぁ……。
「いえ。確かにお嬢様に会いたいと仰っていました。客間にて奥様と旦那様が応対しております。奥様からもお嬢様に顔を出して欲しいと言われてるのですが……」
あんのクソババァ……どこまで私を振り回せば気が済むんだ?
「……で? 何人来てるの?」
「女性の方が2名」
「過去に面識は?」
するとジークは顎に手を添え、記憶を振り絞る。
「ありますよ。一度お嬢様はお会いになっております」
私も記憶を掘り返すが、中々顔が浮かばず、首を傾げてしまう。
「……さっぱり分からん」
するとシャフリが私の肩に手を当て、輝いた瞳を向けてくる。
「お客様が来るなんて羨ましいよ! 私の家なんて、商売上のお客さんは来ても、遊びに来る人なんて来ないよ!」
いや……多分、今来ている2人も遊びで訪ねてきているわけじゃないと思うんだけど……。
「如何なさいますか? やっぱり拒否されますか?」
ジークから視線を逸らしても、シャフリの輝いた瞳が視界に入り、私はため息をついて、方に置かれているシャフリの手を払う。
「仕方ないわね……少しだけよ」
承諾の返事を確認したジークは微笑を浮べ、軽く頭を下げる。
「それでは、お客様のところに案内させてもらいます」
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