表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/172

ミーナの成長5

 気まずい空気を肌で感じながらも、私はジークと向かい合う。ジークは私と目を合わせず、視線を落とす。私は覚悟を決めて、いつでもジークに触れられる間合いまで近づき、思いを口にする。


「……私を見なさい。ジーク」


「……はい」


 恐る恐る視線を私に合わせるジーク。視線がぶつかり合うことにより、自然と鼓動が早くなる。


「お嬢様……その……」


 ジークが何か伝えたそうにしていたが、容赦なく遮る。


「ジーク」


 私は右手の小指を差し出し、それを見たジークは呆ける。


「え?」


「その……さっきは言い過ぎた。態度も悪かったわ……気分を悪くしたでしょ? は、反省しているわ……だから私のことを許して」


「お嬢様……」


 無意識に手が震え、心の中で止まれと叫んでも手の震えは止まらなかった。その時、ジークが私の小指に自分の小指を絡ませ、笑顔を浮べる。


「え?」


「元は自分が勘違いし、余計なことを口にした所為です。お嬢様は何一つ悪くありません」


「でもッ!!」

「それと……お嬢様」


 ジークは手に持っていた食器をシンクに置き、自分と私の手を指さして笑みを浮べる。


「これは約束事をするときの行為ですよ」


 私は自分の手とジークの顔を交互に見て、顔を真っ赤にする。


 あ、あのクソババァッ!! 仲直りの仕方じゃなくて、約束を取り付ける行為を教えるんじゃないわよッ!!


「違ッ!! これは……その」


「いいえ。違いませんよ」


 私の小指に小指を絡めたまま、ジークはその場に跪く。


「もし、お嬢様が心から自分の事を許してくれるのであれば、シャフリ様も許していただけませんか?」


 一瞬の静寂が訪れ、ジークは絡めている小指に力を入れる。


「で……でも、シャフリは」


「大丈夫です。約束、していただけませんか?」


 優しい笑みを浮べ続けているジークに、私は無我夢中で抱きつく。


「ジークッ!!」


 抱きついた私を優しく受け止めるジークは、私の背中に手を回す。


「私……私、酷いことを言ったのに、何で許してくれるの? なんで……シャフリの事も気遣ってくれるの?」


 嗚咽しながらも私はジークにしがみつき、質問をぶつける。優しい口調でジークは言葉を返す。


「一言で言うなら、お嬢様の気持ちが成長したからです」


「気持ちが……成長?」


「以前のお嬢様なら自分から謝罪の言葉を口にすることはありませんでした。ですが、自分のような一執事に謝罪の言葉を贈ってくれました。自分はそれだけで満足です。それだけで嬉しいです」


「ジーク……」


「あの時……いや、数秒前も浮かない顔をしてしまい、申し訳ございません。あの時はシャフリ様に対してお嬢様が怒り心頭だったのが少し悲しくて感情を表に出してしまいました。決してお嬢様のことが嫌いになったわけじゃありません。どうか、ご安心を」


 大粒の涙が流れ始め、私は声を殺しながら泣きしきった。




 ◇◇◇




「落ち着きましたか?」


 自室に戻って落ち着きを取り戻した私は、無言でコクリと頷き、顔を上げる。


「ありがとう。やっと顔を上げられたわ。もう少ししたらシャフリの所に行きましょう」


「承知しました。それでは馬車の手配をしておきま……」


 その時、背後の窓ガラスが割れ、部屋に誰かが突入してくる。


「お嬢様ッ!!」


 ジークが身を挺して私を守ったお陰でガラス破片が刺さらず、無傷ですんだ。そして、部屋に突入してきた人物は……。


「ミーナちゃん!! 遊びに来たよ!!」


 数時間前、私に怒られたにも関わらず、シャフリは元気溢れる声で私に話しかけてきた。


「シャフリ様!」


 ジークがシャフリに空気を読めと言わんばかりの表情を浮かべる。気づいたシャフリは顔を青ざめさせ、ガタガタと体を震わせる。


「……シャフリ」


「ヒィッ!!」


 ジークの腕から離れた私は、シャフリに目を向け、ゆっくりと歩み寄る。


「あ、あの~、ミーナちゃん?」


 無言で近づくことにより、シャフリの恐怖感を強く抱く。


「あわわわ……ご、ごめんなさいッ!!」


 シャフリは勢いよく頭を下げるが、私はその頭を優しく撫でる。撫でられていることに気づいたシャフリはゆっくり顔を上げ、私と目を合わせる。


「よく来たね、シャフリ。さあ、座りなさい。ジーク。あとで窓ガラスの修理を頼むわ」


「み、ミーナちゃん。怒らないの? と言うか、怒ってないの?」


 自分の定位置に座った私は、キョトンとした表情を浮かべているシャフリに目を向け、笑みを浮べる。


「怒ってもないし、怒らないわよ。だけど、怪我したら大変だから、次からは玄関から来なさい」


「ミーナちゃん……」


 するとシャフリはいつもの明るい笑みを浮べ、私の横に座る。2人分の紅茶をジークが用意し、私はそれをゆっくり味わう。


 そして、ジークとシャフリに思いを伝える。


「2人とも……」


 ジークとシャフリは口を開けることなく、私を見つめる。


「これからもよろしくね」


 シンプルな言葉だが、私の口から出た言葉がそんなに嬉しかったのか、2人は満面の笑みを浮べる。


 なんだかんだ文句を言い続けてきた私だが、今回で良く分かった。


 私は……この2人がいないとダメなんだ。半端者の私を軽蔑せず、歩み寄って理解してくれたこの2人はかけがえのない宝物。


 だから……壊しちゃいけない。壊れちゃいけない。そのためにも、もっと成長しなくちゃ。


 2人につられるように私も笑みを浮べる。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!


続きが気になる方はブックマーク登録よろしくお願いします!

誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告お願いします。

評価や感想を送っていただけると今後の励みになります。差し支えなければよろしくお願いします!


これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ