ミーナの成長2
「……ん? ん~」
自然と目が覚めた私は瞼を擦り、薄暗い部屋を見渡す。
隣で気持ちよさそうに寝息をかいているシャフリを見て、反射的にため息をつく。
「気持ちよさそうに寝て……」
ふとシャフリの体に目を向けた私は、弾かれたかのようにベッドから離れる。
私の記憶に間違いがなければ、シャフリは白の魔法使い服を着たまま寝ていたはずだったが、知らない間に下着姿で寝ていやがる。
こんな奴の隣で寝ていたら勘違いされるわッ!!
私はシャフリの体を隠すように布団を掛け、時計に目を向ける。
「……あれ? もう5時過ぎ? 確か……日付が変わる前に寝たような……」
3時間以上も寝るなんて人生初だわ。それに少しダルい気もする……まあ、良いか。
気になることを綺麗さっぱり忘れ、私はベッドの下に隠していたパンの耳を持って部屋から出る。
「……怒ってるかな? あの子たち」
いつも日付が変わる頃に餌をあげている小鳥たちの事を思いながら、私は廊下を駆け足で移動する。
◇◇◇
見晴台の天辺に近づくと、小鳥たちのさえずりが微かに聞こえた。
息を切らしながら階段を上りきると、そこには小鳥に餌付けしているジークの姿があった。
「ジーク?」
ジークに声をかけた瞬間、手乗りしていた小鳥たちは餌をもらう定位置に戻り、私とジークの邪魔をしないように待機していた。
「お嬢様? こんな時間に如何なされましたか?」
「如何って……ここに来る理由は1つしかないでしょ?」
手に持っているパンの耳をジークに見せると、ジークは笑みを浮べて私に場所を譲る。
「皆様。お嬢様が来るのを心待ちにしていましたよ」
「そう?」
私は掌に小さく千切ったパンの耳を乗せる。すると待っていたかのように、小鳥たちが一斉に私の掌に集まる。
「遅くなってごめんね……ちょっと寝ちゃってた」
「チッ! チィッ!!」
「ごめんって! 今度からはいつも通りの時間に持ってくるから」
時間通りに餌を持ってこなくて怒っている小鳥に謝りながら、私は笑みを溢す。そして、私より一足先に見晴台に来ていたジークに目を向け、色々と尋ねる。
「……私に訊いたことをそのまま返すわ。こんな時間に何していたの?」
「お嬢様が日課を行う前に就寝していたのを思いだし、今に至ります」
「ふーん。昨日何時に帰ってきたのか分からないけど、私に何か言うことはないの?」
私は目を細め、ジークの瞳を見つめる。すると、ジークは片膝をついて、私に頭を下げる。
「昨日はお嬢様の傍に居られなかったことを謝罪します。ですが、奥様の命令でもあり、国王様の希望でもありましたので、勝手ながらあのような行動をとってしまいました。大変申し訳ございません」
真剣に謝るジークを見て、思わず口元が緩みそうになるのを必死に堪え、言葉を返す。
「……まあ、アンタにも事情ってものがあるものね。アイツの命令ってのは気に食わないけど、今回は目を瞑るわ」
「お嬢様……」
「ただし、許すには条件があるわ」
「条件?」
ジークは首を傾げ、私は残っていたパンの耳全てを小鳥たちの近くに置き、ジークの目線に合わせるようにしゃがむ。
「ちょっと前にお預け食らったアンタの過去を聞きたい。少し話してくれたら今回のことは許すわ」
ジークは数秒ほど目を瞑り、仕方なさそうな表情を浮かべ、私に言葉を返す。
「……分かりました。ですが、今回もほんの少しだけです。ご了承願いますか?」
私はコクリと頷き、ジークと共に近くにあった石材に腰を下ろす。
◇◇◇
前回のあらすじを簡単に説明し、続きの話を語り部のように語ったジークは朝日が見えたのを見計らって、立ち上がる。
「今回はここまでで」
「え~!? また良いところ~。服とか食器とか買って、その後何処に行ったの? ヒビキって人はどんな人なの? ねえ、教えてよ~」
「私も勢いづいてきたのでもう少し話したかったのですが、日が昇り始めてきたので、今回はここで切り上げさせてください。皆様の朝食の準備もしないといけないので……」
ジークは苦笑いを浮べ、それ以上話したがらなかった。
「むぅ~……まあ、良いわ。一気に聞いてしまうと楽しみがなくなってしまうからね」
「納得していただき、ありがとうございます」
「続き……また聞かせなさいよね」
「勿論です。またお時間がありましたらお話しさせていただきます。話は変わりますがお嬢様」
「何?」
「ご希望の朝食はございますか?」
私は顎に手を当て、食べたいものを捻り出す。
「うーん……こんがり焼いたトーストとスクランブルエッグ。あと、ハムかベーコン。当然飲み物は紅茶で!」
「かしこまりました」
ジークは懐中時計で時刻を確認し、今後の予定を組み立て始める。
「現在時刻、もうすぐ6時ですか……シャフリ様がお目覚めになる7時過ぎにお部屋にお持ちします」
「分かったわ。私ももう少ししたら部屋に戻るわ」
「それでは、失礼します」
瞬きした次の瞬間にはジークの姿はなく、餌を食べ終えた小鳥たちは一斉に羽ばたいていった。
残された私は細目で朝日を眺め、部屋に戻ろうと立ち上がろうとする。その時、背中側で何かが引っかかった感覚がし、咄嗟に振り向く。
「え? ……なんで、翼が?」
吸血鬼状態の時に生えてくる翼を見て、私は固まる。
すると、6時を告げる時計の音が鳴り響くのと同時に、私の姿が吸血鬼から人間に変わる。
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