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遅い帰宅

 無事屋敷に到着したサロミアは時計台に目を向けると、時刻は23時過ぎを示していた。


「意外と長居してしまったわね。バルディゴ、今日はウチで休みなさい。シャフリちゃんを連れて夜道を歩くのは良くないわ」


「確かにそうですね……それではお言葉に甘えさせてもらいましょうか」


 サロミアは馬車から降りてくるジークに目を向け、手招きする。


「ジークくん。疲れているとこと悪いけど、ゲストルームの準備を……」


「既に用意しております。バルディゴ様やシャフリ様がお泊まりになることを予想していました。すぐにご案内できます」


「流石ね……」


 ジークの働きぶりにサロミアは笑みを溢す。


「それじゃあ、案内もよろしくね」


「御意。それと、奥様。馬車の請求書を預かっております。いかが致しましょう?」


「それは僕が」


 エディックはジークが取り出した請求書を目にも止まらぬ速さで奪い、自分の胸ポケットにしまう。


「あら、そう。それじゃあ、予算から引き落としておいてね。流石に私も疲れたわ。先に寝ているからね~」


「了解」


 一足先にサロミアは屋敷の中に入っていき、ジークとバルディゴも屋敷の中へと歩みを進める。


「それではご案内させていただきます」


「よろしく頼む……」


 闇の中1人残されたエディックはポケットから煙草を取り出し、マッチで火を付ける。煙草の独特な香りと共に煙が闇に漂い、エディックは空を眺める。


「……サロミアちゃん。国王は本当に嘘をついていないのかな?」




 ◇◇◇




 バルディゴをゲストルームに案内している途中、ジークがバルディゴにある提案をする。


「失礼します、バルディゴ様。少し寄り道をしても宜しいですか?」


「寄り道? 構わないが……一体何処に?」


「お嬢様とシャフリ様の様子を見ていきます。ご一緒にどうですか?」


 バルディゴは優しい笑みを浮べて、無言で頷く。そして2人はミーナの部屋に足を運んだ。


「まだ0時前なのでお嬢様は眠っていないはずですが……」


 ジークは静かに、そしてゆっくりと部屋の扉を開け、中の様子を伺う。


 予想とは裏腹に部屋の中は真っ暗で、ミーナが座っているテーブル席には誰も座っていなかった。


「おや?」


 予想外の出来事に驚きを隠せないジークは思わず声を漏らす。


「何をしているのですか?」


 廊下から聞こえた声に反応したジークとバルディゴは、一斉に声の主に目を向ける。


「メイド長」


 そこにはメイド服に着替え、疲れ果てた表情を浮かべるカーリーの姿があった。


「お嬢様たちは?」


「ベッドで寝ているわ。2人共ね」


『2人?』


 ジークとバルディゴは同時に首を傾げ、真っ暗な部屋に入り込む。そしてベッドを覗き込むと、スヤスヤと寝息をかいているミーナとシャフリの姿があった。


「おやおや。困った子だ。ミーナお嬢様のベッドで寝るなんて……コラ、起きなさい」


 優しくシャフリを揺さぶるバルディゴだが、カーリーが止めに入る。


「そのままにしてください。お嬢様の許可は得ていますから安心してください」


「お嬢様が許可を?」


 キョトンとした表情を浮かべるジークに、カーリーは経緯を説明する。


「数時間前まで3人でトランプやボードゲームをしていたのですが、シャフリ様が先に寝落ちしてしまいまして……どうすれば良いのか分からず、モタモタしていたところ、お嬢様が私のベッドに運びなさいって仰いましたので、ここで眠ってもらってます」


「なるほど……」


「ですが、お嬢様も一緒になって寝ているのは予想外でしたけど……」


 シャフリを起こそうとしていたバルディゴは優しくシャフリの頭を撫で、付けたままにしている眼鏡をソッと外し、隣にあるテーブルに置く。


「久しぶりに娘の寝顔を見たよ。大人になったなぁって思っていたけど、寝ている顔を見るとまだまだ子供だなぁって感じさせられるよ」


「そうですか……」


 相づちを打つジークはミーナの寝顔を見て、あることに気づく。即座にカーリーに目を向けるが、カーリーは横に首を振り、言葉を返さなかった。


「それじゃあ、案内をしてもらおうか。ジークくん」


「……あ、はい。お待たせしてしまって申し訳ございません」


 ジークとカーリーがすれ違う瞬間、カーリーが囁く声でジークに伝える。


「……部屋で待ってるわ。話はその時に」


 一瞬だけジークはカーリーに目を向けるが、何も言わずバルディゴと共に部屋から出て行く。


 1人佇むカーリーはミーナの寝顔を見て、軽くため息をつき、姿を消す。

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