会食の外で
私がピアノ演奏を続行したお陰で、音楽団の最後の演奏会を続行することが出来た。みんなの思いが音色から感じ取れ、心の底から楽しんでいたことが分かった。
ここまで楽しそうに演奏しているのに、最後だなんて少し勿体ないような気がするけど、全員幸せそうな顔している。
みんな……本当に音楽が好きなのね。
最後の曲が終わり、広間全員からの拍手を浴び、音楽団全員は深々と頭を下げる。私はホッと一息つき、ピアノに対して頭を下げ、ステージから降りる。
「全員! 最高の音色を紡いだピアニストに最敬礼!」
国王の声で音楽団と大臣たちが一斉に敬礼し、私はどうして良いのか分からず立ち止まる。
「え……え~っと」
私は自然とジークに目を向けてしまい、ジークは満面の笑みで返す。
「た……楽しかった。ありがとう……」
再び拍手が沸き起こり、私は逃げるように自分の席に戻り、顔を伏せる。
敬礼を解いた音楽団が片付けを始め、国王に一礼して広間から出て行った。
「ミーナちゃん凄いね!! 格好良かったよ!!」
隣に座っているシャフリが目を輝かせて私に詰め寄ってくる。
いつもは面倒くさく感じるのだが、ピアノを弾いた後なのか、素直に言葉を返せた。
「あ……ありがとう」
「そうだ!! 今度ピアノを教えてよ。私、昔から興味があったんだけど、教えてくれる人がいなくてね」
「え? 私が? 出来ないよ。他人に教えた事なんて無いから……」
「私も他人に教えたことないけど、ミーナちゃんに魔法を教えてるんだから、ミーナちゃんも出来るよ!!」
私はシャフリから目を逸らし、頬をポリポリと掻き、少し口元を緩ませて言葉を返す。
「……厳しいよ」
「え?」
「私は感覚派だから厳しいよ。それでも良いなら教えてあげる」
「ホント!? やった~!!」
シャフリは両手を頬に当て、満面の笑みを浮べて明後日の方向を見つめる。そんなシャフリを見て、私も笑みを浮べる。
「会話中、失礼します」
私とシャフリの間に入ってきたのはカーリーとジークだった。
「お嬢様。シャフリ様。会食はここで一旦お開きになります。奥様と旦那様は国王様とお仕事の話があります故、先に帰ってくれとのことです。ご一緒に帰るのであれば、しばしお待ちしてもらう形になるのですが……」
ジークが眉をハの字にして、私に返答を求める。
「いや、先に帰るわ。久しぶりの外出とピアノでくたびれちゃった」
「かしこまりました」
「シャフリ様のお父様も残ることになっています。シャフリ様さえ宜しければ、お屋敷で少しお休みになりますか?」
シャフリは間髪入れずに返答する。
「行く!! 休む!!」
お前がいると私が休めないのだが?
「それでは奥様たちに伝えてきますので、しばらくお待ちください」
「自分は馬車の手配をしてきますので、失礼します」
カーリーは颯爽と母たちのもとへ向かい、ジークは指を鳴らし、その場から消える。ジークが消えたことに驚いた私は周囲を見渡す。
「え? え? ええ!?」
するとシャフリは苦笑いを浮べて、私の肩をポンポンと叩く。
「ミーナちゃん……この前教えた転移魔法だよ。もう忘れちゃったの?」
シャフリごめん……私、ピアノ教えられないや。
◇◇◇
時は少し遡り、広間から追い出された王子リギルは、中庭の一角にあるリクライニングチェアに寝そべりながら舌打ちをし、兵士に怒鳴り声で問う。
「おい!! いつから人外種どもが王宮に出入りできるようになった?」
「申し訳ございません……国王様のお客人であるため、なんと申して良いか分かりません」
再びリギルは舌打ちし、空を見上げる。
「リギル様のお気持ちは良く分かります。国王様が何故、人外種と手を取り合うのか理解できません」
「理解なんてする必要はねーよ。さっさとくたばれば良いのによぉ。しぶとく長生きしやがって……」
すると1人の兵士が前に出て、リギルに言葉を返す。
「リギル様。苛立っているのは分かりますが、それは言い過ぎかと……」
するとリギルは兵士を鋭く睨みつけ、軽く息を吐く。
「ああ?」
そして、一瞬の出来事だった。
「ガハッ!?」
兵士の腹部から背中にかけて剣が突き刺さり、ボタボタと地面に血が落ちる。何が何だか理解できない兵士は、その場で跪き、全身が震え始める。
「誰に対して口を利いているんだ? 余計なことをほざく暇があったら、あのクソ国王と人外種どもを抹殺する方法を考えろ」
「義兄様!! 何をやっているのですか!?」
突如響き渡る声にリギルは舌打ちをし、兵士に刺した剣を引き抜く。刺された兵士は倒れ込み、周囲にいた兵士たちは、二階から顔を覗かせている少年に対して敬礼をする。
華奢な体で幼い顔つき。年齢が2桁になるかならないかの少年だが、兵士が血を流していても青ざめることなく、状況を把握する。
そして、少年は二階から飛び降り、滞空魔法を使用してゆっくり降りる。
「何しに来た? クソガキ」
少年の緑の髪がリギルの前を颯爽と通過し、少年は血を流して倒れている兵士に駆け寄り、膝をつく。
「クロノ様。そこに膝をつかれては洋服が汚れます……」
「洋服など換えはいくらでもある。だが、命に換えはない」
クロノと呼ばれる少年は、兵士が出血している部分に手を当て、スッと瞼を閉じる。
「回復魔法・メディ」
クロノの手から白い光が放たれ、光を浴びた傷口がみるみる塞がり、痕1つ残ることなく兵士の皮膚が元通りになる。そして、刺された兵士が意識を取り戻し、クロノの顔を見て、思わず涙を流す。
「クロノ様……あ、ありがとうございます」
「礼には及ばぬ。傷は塞いだが、血は足りぬはずだ。しばらく休むが良い。誰か。この者を運んではくれないか?」
クロノの頼みに対して、数秒遅れで兵士数名が動き出し、倒れている兵士を運んでいった。
「おい。無視するな。クソガキ。こっち向けよ」
クロノは悲しそうな表情を浮かべ、リギルに目を向ける。
「……義兄様」
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伊澄ユウイチです。
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