表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/172

ミーナと音楽団1

 指揮者がフワッと指揮棒を振り、私は鍵盤を優しく弾く。そして、他の楽器奏者もテンポに合わせて音を奏でる。


 サラッと楽譜を見た印象、今演奏している曲は序盤は悲しみ、寂しさが感じるような音を表現し、終盤にかけて明るくハッピーエンドを迎えたような音で締めくくる。


 典型的で何処にでもありそうなストーリー音楽には、必ずしもピアノが肝心になる。


 もし、音程を間違えたら全てが台無し。もし、テンポを速めてしまったり、遅れてしまっても台無し。


 座って演奏し始めてから多少なりとプレッシャーを感じているが、後悔はしていない。だって……久しぶりにピアノと向き合えるんだからッ!!


 転調に差し掛かり、徐々に曲調が早くなる中、私はミス1つすることなく、鍵盤を弾き続ける。


 自分で言うのも何だけど、完璧……いや、言葉では表すことが難しい私の演奏に魅入られてしまった母たちや国王たちは勿論、演奏している奏者数名がミスをしてしまうほど魅入られてしまった。


 演奏モードに入っている私は、奏者のミスに気づき、鋭い目つきでミスの指摘をする。私の眼光に怯みそうになった奏者たちだったが、負けていられないと対抗心に火が付いたのか、集中して演奏を再開する。


「すっごぉ……」


 いつもお喋りなシャフリが目を丸くし、口をポカンと開けたまま、演奏している私に釘付けになる。


「驚いたな……昔から何度も聞いていたが、音楽団に混ざれるほど上手くなっているとはなぁ」


 呆気にとられている父の横で、母がクスクスと笑い始める。


「何が可笑しいの? サロミアちゃん?」


「気づかない? ミーナちゃんの演奏が他の奏者をより引き立てていることに」


 違いに気づいた母の言葉を聞いて、父も集中して耳を澄ませる。


「確かに……少し力強い気もするが、前曲よりも透きとおって聞こえる」


 その時、母と父の背後にいたカーリーが細めた目を指で軽く擦る。


「お嬢様……」


 その他の人物も違いに気づくようになり、自然と笑みを浮かべて演奏を楽しみ始める。


 曲も終盤に差し掛かり、音楽団が完全に私に合わせて演奏する。合わせていることに気づいた私は、少し意地悪をする。


 最高に盛り上がるラスト前でアレンジを加える。


 別に恥を掻かせたいわけじゃない。ただ単に気分が乗ってしまっただけ。


 当然、楽譜に記載されていないため、他の奏者は自然とズレる形になる……が、ただ1人。私のアレンジに対応しきった奏者がいた。その音の存在に気づいた私は、その奏者に目を向ける。


 フルート奏者……まさか、私がアレンジをすると知っていて?


 いや、あり得ない。このアレンジは私が今、即興で考えたアレンジ。何で私のアレンジに対応できるの?


 曲が終わり、楽譜がフィーネに辿り着く。指揮者の腕も止まり、私や奏者たちは楽器から指や口を離す。


 すると、盛大な拍手が私と奏者たちに向けられ、私は奏者たちと同時に頭を下げる。


「見事だッ!! 完璧な演奏だったッ!!」


 国王も満面の笑みを浮かべ、拍手を送り続ける。私は国王に向かって、再び頭を下げ、ピアノの上に置いてある楽譜をたたみ始める。


「あ~。楽しかった。ありがとね。これは返すわ」


 私は指揮者に楽譜を押しつけ、自分の席に戻ろうとする。


「ま、待ってくれ!!」


 指揮者の呼び止めに私は足を止め、顔だけ少し振り向かせる。


「何?」


「その……すまなかった。演奏前の暴言は許してくれ」


 頭を下げつつ私に謝罪の言葉を述べてくる指揮者に、私は体を向け、言葉の続きを待つ。


「君のお陰で演奏を再開することが出来た。感謝している。君さえ良ければ、予定していた数曲も弾いてもらいたいんだが……」


 何か都合の良さそうなことを言い始めたけど……。


「丁重に断らせてもらうわ」


「な、何故だ!?」


「私はただピアノが弾きたかっただけ。それだけよ」


 理由を述べた私は再び背を向け、音楽団から遠ざかろうとする。


「待ってください!」


 女性の声が響き渡り、みんなの視線が一斉に声の方向に向けられる。声の主は私のアレンジに対応しきったフルート奏者だった。


「またアンタ……今度は何?」


 すると、フルート奏者はツカツカと私に歩み寄り、腕を伸ばせば届きそうな場所まで近づいてくる。


 私に対してフルート奏者が何かするのではないかと判断したジークが動こうとする。


「ジークッ!!」


 私の声の意味を理解したジークは、その場で立ち止まる。


 フルート奏者は私に何かするわけでもなく、棒立ちしたままで私を見つめてくる。


「何よ。呼び止めておいて何も言わないわけ?」


 すると突然、フルート奏者が私の前で跪き、自らの胸に手を当てる。


「恐れ入りました。あなたの演奏は私の心を震わせました。私も無礼な態度をとってしまい、大変申し訳ございませんでした」


 頭を下げ続けるフルート奏者に目線を合わせるため、私はしゃがみ込み、気になっていたことを尋ねる。


「態度に関しては許すわ。だけど、1つ聞いても良いかしら?」


 するとフルート奏者は顔を上げ、私と目を合わせる。


「どうして私のアレンジに対応できたの?」


 フルート奏者は表情を変えることなく、私に言葉を返す。


「お答えすれば、再び一緒に演奏してくれますか?」


 やはりコイツも自分の都合で私に頭を下げたのか? と一瞬だけ思ってしまったが、彼女の奏でるフルートの音は興味を引くものがあった。恐らく音楽団の中で1番魂を込めているのを感じる。


 だけど、これ以上私が音楽団に混ざってピアノを弾くことは出来ない。


 なぜなら……。


「それは出来ない。だって、あのピアノの前に座るべき人物は、仲間のピアニスト。私に彼女の居場所を奪う権利はないわ」


 するとフルート奏者は悔しそうな表情を浮かべ、指揮者が彼女の肩に手を置く。


「仕方ない。ここまでだ……」


 その時、広間の扉が勢いよく開き、外の光が入り込む。

大変お待たせしてしまいました。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!伊澄ユウイチです!


続きが気になる方はブックマーク登録よろしくお願いします!

誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告よろしくお願いします。

評価や感想を送っていただけると今後の励みになります。差し支えなければよろしくお願いします!


これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ