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王宮での食事5

 音楽団による演奏が始まり、料理よりも演奏の方に注目が集まる。


 優しくも力強い音色に心を癒やされ始めた者が、思わず表情を和らげる。


「癒やされるわ~」


「ああ。良いセンスだ。ヨハネス」


 母と父は瞼を閉じて奏でられる音色を楽しみ、隣に座っているシャフリも目を輝かせて音楽団に見入る。


「ふぁ~。感動しすぎて何も言えないよ~」


 私も久しぶりの生演奏に心を奪われそうになるが、ある奏者が気になり、私は下座にいるジークに視線を送る。私の視線に気づいたジークは一瞬キョトンとするが、笑みを浮かべて私が思っていることを理解する。


 6分弱ほどの曲が終わり、拍手と共に指揮者と奏者が頭を下げる。拍手が徐々に鳴り止み始めるが、私は拍手を止めることなく、ゆっくりと立ち上がる。


「ミーナちゃん?」


 シャフリが声を漏らし、広間にいる全員が目を丸くする。


「素晴らしい演奏だったわ。久しぶりの生演奏に思わず心を奪われそうになったわ」


「あなたは……ミストレーヴ家のご令嬢。お褒めの言葉、ありがとうございます」


 指揮者が深々と私に頭を下げ、奏者たちも遅れて頭を下げる。


「ただ……1つだけ指摘させてもらうわ」


 周りが一気にザワつき始め、私は女性ピアニストを指さす。すると女性ピアニストが突然ふらつきはじめ、その場に倒れそうになる。


「ジークッ!」


 私の声と共にジークが駆け出し、倒れそうになっていた女性ピアニストを抱きかかえる。


「少々熱っぽいですね。息づかいも荒い。この状態ですと続行は不可能ですね」


 急すぎる出来事にその場は騒然。近くにいた団員が女性ピアニストに声をかける。


「大丈夫? しっかりして!」


「だ……大丈、夫。これくらい……どうってことないよ」


 女性ピアニストがジークの腕から離れ、立ち上がろうとするが、すぐに倒れ込む。


「病む得ない。今日の演奏は中止だ」


 演奏の中止を促したのは国王だった。


「国王様! 大変申し訳ございません。ご期待に添えられなくて……」


 指揮者が深々と頭を下げるが、国王は仕方なさそうな表情を浮かべて頬杖をつく。


「病気なら仕方あるまい。誰か、彼女を休憩室まで運んでくれないか?」


 隅で待機していた兵士が2人がかりで女性を起こし、肩を貸して広間から退出する。


「残念ね……」


「まあ、ヨハネスの言うとおり、病気じゃ仕方ないよ。サロミアちゃん」


 少し残念そうな表情を浮かべる母と父。他の人間も残念そうな表情を浮かべており、奏者たちは悔しそうな表情を浮かべていた。


 奏者たちの悔しそうな表情を見た瞬間、無意識に私の口は動いていた。


「……国王」


「どうした?」


 拳を作り、覚悟を決めて私は思いを国王に伝える。


「ピアニスト……代わりがいれば演奏は続行してくれる?」


 再び騒がしくなる周囲。国王は顎に手を当て、奏者たちは顔を見合わせる。


 すると指揮者が顔を真っ赤にして、私に怒りの声をぶつけてくる。


「寝言は寝て言えッ!! 小娘!! 音楽団で1番ピアノが上手い彼女よりも上手いヤツなんていない!! それに代わりと言ったが、ピアノを弾ける者がこの場にいるとでも言うのか!?」


「いる」


 素っ気ない感じで私は言葉を返し、ゆっくりとピアノに向かって歩を進める。ピアノの近くにいたジークがハンカチで座るところを拭き、私が辿り着くのを待った。


 ピアノに辿り着いた私は鍵盤を優しく撫で、クセがないかを確認する。


「……私が代わりにピアノを弾くわ」


 ジーク以外の全員が驚きの表情を浮かべ、国王が私に尋ねる。


「出来るのか? 他の者と練習もしていないのに大丈夫か?」


「楽譜と指揮者さえいれば大丈夫。指揮者さんがしっかり、リードしてくれるかは分からないけど」


 私は指揮者に視線を向け、全員に視線を向けられた指揮者は視線を落とす。


 その時、カーリーが母と父に近づき何かを話し始める。


「奥様。旦那様。あんなことを仰っていますけど……」


 父は不安そうな表情を浮かべているが、母は満面の笑みを浮かべてカーリーに言葉を返す。


「構わないわ。あの子がしたいようにすれば良いわ。それに、みんなの心配は杞憂に終わるわよ」


「……分かりました」


 カーリーが離れていったことを確認した私は、椅子に座って鍵盤と対面する。するとフルートを手にした女性奏者が私の横に佇む。


「何か用? 言っておくけど、心配は無用よ」


「いえ。心配などしていません」


 無表情で冷たい口調で私に言葉を返すこの奏者……何か感じ悪ッ。


 すると女性奏者は置いてあった楽譜を片付け始める。


「何しているの? 楽譜がなければ演奏できないじゃない」


「これは彼女の楽譜。あなたの楽譜ではないわ。彼女の努力の結晶を横流しするわけにはいかないわ」


 女性奏者は新品で何も書き足されていない楽譜を私に手渡す。


「それじゃあ、頑張ってね」


 女性奏者は自分の席に戻り、演奏準備に入る。


 少しイラついたが、弾く権利がないと言ったわけじゃない。私はスッと目を閉じて、集中力を高める。


「準備は出来ているわ。演奏を再開しましょう」


 演奏する気満々の私を見て、国王は口角をつり上げる。


「ク……アッハッハ!! 良いだろう。続行を認める。ファルトマン。ちゃんとリードしてやってくれよ」


「あ……はい! 分かりました」


 指揮者が再び壇上に立ち、指揮棒を私たちに向けてくる。


 私は鍵盤に指を置き、合図を待つ。

大変お待たせしてしまい、申し訳ございません!

そして、いつも見ていただき、ありがとうございます!


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