王宮での会食2
兵士がとある部屋の前に足を止め、大臣たちが中にいるであろう国王に入室許可を得る。
「国王様。ミストレーヴ家、クリスティ家の皆様をお連れしました」
「ご苦労様。入りなさい」
「はッ!」
大臣たちが扉を開け、私たちに道を譲る。母が先に入り、私たちはそれに続いた。
「それでは会食の準備ができ次第、お迎えに上がります」
兵士と大臣3人は深々と頭を下げ、ゆっくりと扉を閉じた。
そして、私たちは部屋の窓付近にいる国王に目を向けた。
国王というのだから、白髪で肥えた老人なのかと想像していたが、現実は違った。
私の目の前にいる国王は若々しく、白髪1本もない黒髪。筋肉質だが長身であるからなのか、細く見える。アルカディア国の紋章が刺繍された紅服を身に纏い、腰には剣が携えられていた。
「……久しぶりね。ヨハネス」
いつものゆるふわな口調ではなく、重く緊張が走る口調で母は国王に挨拶をする。
「サロミア……そしてエディック。昔と変わりは無いか?」
「ご覧の通り、健在でございます」
父が片膝をつき、数秒遅れて私と母以外の人たちも片膝をつき、胸に手を当てる。
「え?」
世間知らずの私は、周りの様子を見て、合わせることにした。
「今日の会食。楽しみにしていたわ。まずは心から感謝をさせてもらうわ」
頭を下げた母を見て、国王は執務椅子に座り、クスクスと笑い出す。そして、その笑いは高笑いに変わり、何が起きたのか分からない私たちは、挙動不審になる。
「あ~、やっぱり堅苦しいのは国民の前だけで十分だ」
すると真剣な表情を浮かべていた母も口元を緩ませ、口に手を当てて笑い出す。
「ウフフ……堅苦しく話すとどうなるか観察させてもらったけど、中々様になってるじゃない。流石に20年も国王をやっていれば染みついたの?」
「15年だ。就任したのは15年前だ。間違えるな。あいかわらずゆるふわな口調と性格だな」
部屋中に2人の笑い声が響き、突然始まったゆるふわな会話に、目を丸くして動けない私たちを尻目に、父はゆっくりと立ち上がり、国王に声を掛ける。
「ヨハネス。サロミアちゃんに会えて嬉しいのは分かるが、自己紹介を」
すると国王は私やシャフリ、バルディゴさんに目を向けて、後頭部を掻きながら舌を出す。
「これは失礼。少し浮かれすぎたな。名前はご存じかもしれないが、私は39代アルカディア国王のヨハネス・アルカディアだ」
国王は笑みを浮かべ、私とシャフリは思わず頭を下げる。
「紹介、恐れ入ります。自分は繁華街の外れに魔法薬専門店を経営している……」
「バルディゴ・クリスティだろ?」
自己紹介をしようとしたバルディゴさんは、名前を言い当てられて驚きの表情を浮かべ、深々と頭を下げる。
「一々頭を下げなくてもいい。君のことはハルカから聞いていたよ」
ハルカという人物の名前が出た瞬間、バルディゴさんは驚きの表情を浮かべ、隣にいたシャフリも「なんで?」と声を漏らしていた。
シャフリの顔をチラッと見た国王はニッコリと笑みを浮かべて、簡単に説明する。
「君のお母さん、ハルカ・クリスティとは旧知の仲でね。だから、君の存在は知っていたし、生まれたときに顔を見に行かせてもらったよ」
「そんなことが……」
足の力が抜けたバルディゴさんがその場に座り込み、国王はシャフリの前まで歩み寄り、膝をついてシャフリの頬に手を添える。
「失礼させてもらう。少し顔を見せてくれないか?」
「あ……え?」
戸惑うシャフリに構うことなく、国王はシャフリの目や鼻、耳の形などをじっくりと観察し、微笑を浮かべて、シャフリから離れる。
「雰囲気こそ違うが……お母さんそっくりだな」
「私が……お母さんに?」
「バルディゴ・クリスティ」
国王が再びバルディゴさんに目を向け、名前を呼ばれたバルディゴさんは足に力を入れ直し、姿勢を正す。
「今まで苦労だったな。よく頑張った」
「え? いや……きょ、恐縮でございます」
「色々と話をしたいところだが、会食の時にネタが尽きてしまう。後ほど話を聞かせてくれないか?」
「は、はい!!」
バルディゴさんとシャフリは深々と頭を下げ、国王は2人に笑みを贈る。
次に国王が目を向けた先は、私だった。
「久しぶりだね。ミーナ・アリスト・ミストレーヴ」
「何で私の名前まで? 私は初めて会うんですけど……」
「クリスティ家と同じで、サロミアとは長い付き合いなんだ。もちろんエディックも。2人が結ばれ、君が生誕したとき、心から祝福させてもらった。ちょくちょく顔を見させてもらっていたが、国王に就任してからは中々会いに行けなくてね。忘れられているのも無理はないさ」
「そう……ですか。生誕の祝福、感謝します」
すると国王はシャフリと同じように、私の頬に手を差しのばそうとした。
国王とはいえ、他人が急接近し、自分の体に触れてこようとするのを察した瞬間、私の体は震え始め、接触を拒もうとする。
「ヨハネスッ!!」
私の様子に気づいた母が声を大にして国王を止めようとするが、国王は止まらなかった。
国王の手が私の頬に触れようとした瞬間、国王の手の動きが止まった。
「ん?」
「ジ、ジーク?」
ジークが国王の手を掴んで、私から遠ざけようとしていた。
「ご無礼。お嬢様は訳あって他人に触れられるのを恐れています。大変申し訳ございませんが、お触れになるのはご遠慮を」
すると国王はジークの手を振り払い、目を細めてジークの顔を見つめる。
「無礼は構わない。だが、名を名乗らない者に抑止されるのは癇にさわる」
「申し遅れました。私はミーナお嬢様の専属執事、ジーク・アルヴェルドと申します」
ジークの名前を聞いた瞬間、国王は驚きの表情を浮かべ、冷や汗を流しながら母に視線を向ける。母は何も言わずに瞼を閉じて、コクリと頷く。
そして、ジークは笑みを浮かべて片膝をつく。
「ご無沙汰しています。ヨハネス様」
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