明かすべき事4
執務室の鍵を掛けたジークはサロミアの前に立つ。
「これで密室です。大声で話さない限り、誰にも会話は聞かれることはないでしょう」
「気遣い感謝するわ。それじゃあ、気になっていることを話しちゃいましょうか」
軽く笑みを浮かべながらサロミアは話を始める。ジークは真剣な表情を浮かべ、近くに居るエディックは自分のデスクにつき、2人を見守る。
「嘘を見抜く力……これはミストレーヴ家の吸血鬼のみが持っている力。他人が嘘をつくと、一瞬だけ耳鳴りがするの」
「耳鳴り……ですか」
「そう。だけど、何のために嘘をついているのか分からないのは欠点だけどね。カーリーちゃんがミーナちゃんの報告をしたときも、貴方が誰にも見破れない芝居をしても、私には分かるの」
すると、何か引っかかったのか、ジークは顎に手を当ててサロミアに疑問をぶつける。
「ミストレーヴ家の吸血鬼が持っていると仰いましたが、お嬢様は持っていないのですか?」
サロミアは得意げな表情を浮かべてジークに言葉を返す。
「勿論持っているわよ。だけど、知っての通り、あの子は半分人間で半分吸血鬼。人間の部分が濃く出ているときは嘘を見抜く力は使えない……それに」
「それに?」
サロミアは一瞬ジークから視線を逸らすが、軽く息を吐いて、続きを口にする。
「……混血だからなのか、ミーナちゃんには嘘を見抜く力とは別の力があるの」
「別の力……一体どんな力なのですか?」
するとサロミアは瞼を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。
「それは……まだ分からない」
「分からない? どういうことですか?」
サロミアは再度、部屋の周りに誰もいないか確認し、ジークの傍に歩み寄る。
「このことは私とエディック。カーリーちゃんの3人しか知らない事よ。心して聞きなさい」
◇◇◇
あっという間に時は流れ、王宮会食の日が訪れ、早朝から屋敷は慌ただしくなる。
「うーん……前日までシャフリと服を選んでいたけど、2つで迷っちゃったなぁ」
ハンガーに掛けられた洋服2つを交互に見る私に、ジークとカーリーが声を掛ける。
「お嬢様。そろそろお決めにならないと出発時間になります」
「正直。どっちも似たような色合いなんだから、どっちでも良い気がするけど……」
他人事だからって適当なことを言うな! バカカーリー!
「シャフリは黒地に赤線が入った洋服の方が良いって言ってたけど、私は黒地に白線が良いの!!」
「ほーんと、どっちでも良いですよ」
私は無言でカーリーの腹部を殴り、殴られたカーリーは声を上げることなく、その場で蹲る。
同じ女だと思って相談を持ちかけた私がバカだった。
「ジークはどっちが良いと思う?」
すると、ジークは顎に手を当て、真剣に考え始める。
「うーん……今回はシャフリ様が提案された洋服の方が良いと思います」
「どうして?」
ジークはシャフリが選んだ服を手に取り、私に重ねる。
「黒白服は死者を送るときに着るものです。お嬢様が選んだ服は縁起が悪い服だとご指摘させてもらいます」
「なッ!?」
「一方、シャフリ様が選んだ服は派手過ぎず、パーティーに着て行っても違和感がないように感じられます」
意見を否定された私は頬を膨らませ、ジークを見つめる。
「安心してください。どちらの服を着ても、お嬢様は綺麗ですよ」
その時、私の耳に一瞬だけ鼓動が聞こえ、私はジークから目を逸らす。
「お嬢様? どうかなさいましたか? 顔が赤いように見えますが、具合でも悪いのですか?」
「う、うっさいわね!! 分かったわよ!! アンタの言うとおり、今回はこれを着ていくわ!!」
ジークから洋服を奪い取り、背を向ける。
「……着替えるから出て行って」
「分かりました。それでは着替えが終わりましたら、声を掛けてください」
ジークが出て行ったのを確認した私は、身に纏っていた部屋着を脱ぎ始める。
その時、視線を感じ振り向くと、ダウンしていたカーリーが嬉しそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「いや~。相変わらず成長途上の体だね~。あ、私の事は気にしないで続けて」
私は大きく息を吸って、カーリーの首めがけて足を振る。
「とっとと出て行けぇッ!! この変態メイド!!」
「ブハァッ!!」
◇◇◇
「大丈夫ですか? メイド長」
ミーナの部屋前で待つジークは、横に居るカーリーの体の状態を見て心配する。
「大丈夫。昔からヤラレ慣れているから」
「慣れるよりも懲りたらどうです?」
ジークの冷たい返しに、カーリーは屈することなく、笑みを保ち続ける。
「友達と服を選ぶなんて……ミーナお嬢様も成長したわね~」
嬉しそうな表情を浮かべているカーリーとは対照的に、ジークの表情は少し曇っていた。
「どうしたの? 暗い顔して?」
「……いえ。何も」
「らしくないじゃない。部下の悩み事を聞くのも、上司の仕事だから言いなさいよ~」
「いや、本当に何でも無いので……」
すると、カーリーはジークの耳元で囁き始める。
「1人で考えるのも良いけど、貴方はもっと他人を頼りなさい。仕事や気配りは完璧に出来ているけど、人間としてはまだまだ不完全なんだからさぁ」
「ちょっと、メイド長。近すぎますよ」
さらにジークとの距離を詰めようとするカーリーだったが……。
『ジ~ク~』
ミーナの声が扉の向こう側から聞こえ、ジークは安心した表情を浮かべ、扉の向こうにいるミーナに言葉を返す。
「はい。ただいま」
仕方なさそうに道を譲るカーリーに、ジークは言葉を残して部屋に入ろうとする。
「メイド長……すみません」
「え?」
2人を切り離すかのように扉は閉じ、廊下に残ったカーリーは少し視線を落とし、ミーナの部屋から少しずつ遠ざかった。
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