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明かすべき事2

「10年前。窮地に立たされたアルカディアを命に代えて守った英雄……覚えている?」


「10年前?」


 エディックは顎に手を当てて、記憶を振り絞る。そして、振り絞った末に出てきた、ある人物の名を口にする。


「鬼の軍人……ヒビキ・コーラミア」


「そう。あなたは知らないかもしれないけど、ヒビキは幼い頃からの友人なの」


 エディックは少し驚いた表情を浮かべ、サロミアは思い出に浸りながら言葉を述べる。


「そして……身寄りの無かったジークくんの育て親」


「なッ!? ヒビキ・コーラミアの子供ッ!?」


 声を荒けさせるエディックに構うことなく、サロミアは冷静な口調で話し続ける。


「直接的な血縁関係ではないわ。ただの育て親。そして、幼いジークくんに色んな経験をさせて、色んな知識を身につけさせてくれた人物」


 驚きのあまり言葉を失ったエディックは壁に背をつけ、その場に座り込んでしまう。


「あら? 脱力するなんて珍しいわね」


 サロミアはクスクスと笑って、机の上に置いてあった紅茶ポットを手に取り、自分のカップに紅茶を注ぐ。


「昔、ヒビキから聞いたわよ。冷酷な暗殺者が命を狙ってきたって」


 するとエディックは視線を落とし、大きく息を吸ってから口を開ける。


「……他国に雇われていた僕は、ヒビキ・コーラミアの暗殺を依頼された。当時の僕は怖い物知らずだったのか、躊躇うことなく依頼を引き受けた」


「そしてヒビキの暗殺を実行しようとしたけど、返り討ちに遭って満身創痍」


「今思うと無謀だったよ。底知れない鬼の力を舐めていたよ……だけど、命を狙った僕に対して、彼女は手当を始めた」


 サロミアは一口紅茶を飲んで、エディックの顔を見つめる。


「鬼とは思えないほど、心優しい人だった。そして、僕の体に包帯を巻きながら、彼女は笑顔を浮かべながら声を掛けた」


「……なんて言ったの?」


「誰かの命令で動くのは、もうやめた方が良い。アンタには今歩いている道よりも良い道がある。自分を押し殺すのは辛かったろ? って」


 サロミアは口を開けることなく、エディックを見つめ続ける。


「あの時感じた温かさは忘れられないよ。僕に第二の人生を歩ませてくれた恩人だ」


「その恩人が、あなたをこの屋敷に導かせたのよ」


 エディックはキョトンとした表情を浮かべ、察してくれないと理解したサロミアは呆れた表情を浮かべて、エディックから視線を逸らす。


「え? どういうこと?」


「……気にしないで。関係の無いことだから」


「そう? ……ジークくんがヒビキ・コーラミアの子と知っていれば、さっきの暴言は吐かなかったのに……傷ついたかな?」


「あなたの暴言程度で傷つくような従者はこの屋敷には居ないわ」


 サロミアが突きつけた言葉はエディックの心にダメージを与え、エディックは心底落ち込んだ。その様子を見て、サロミアは笑みを浮かべながら立ち上がる。


「それじゃあ、そろそろ様子を見に行きましょうか?」


「様子?」


「ジークくんがミーナちゃんを説得したかどうかを」


 エディックは一瞬、ポカンと呆け顔を浮かべるが、顔を数回横に振ってゆっくりと立ち上がる。


「うん!」


 そして、2人は静かにミーナの部屋へと向かった。




 ◇◇◇




「お嬢様。2週間後、王宮での会食に出席しませんか?」


 ジークの発言に思わず呆気とられてしまった私は、数秒間返答することが出来なかった。


「え? 王宮で会食ですか?」


 私の代わりに言葉を返したのはシャフリだった。


「実は奥様たちに国王から招待状が届いておりまして、ご家族での出席を望まれています」


 するとシャフリは自分の事のように嬉しがり、ジークに様々な質問をしていた。


「どんな料理が出るんですか? 他の招待者たちはどんな人たちなんですか? どんな形式で食事するんですか?」


「落ち着いてください。シャフリ様。詳しいことは自分は良く分かっていませんが、国王主催の会食なので、きっと豪華な食事で、豪華なゲストが呼ばれていると思います」


「すごい!! すごい!! ミーナちゃん!! 行くべきだよ!! 楽しむべきだよ!!」


 ……私の返答は既に決まっている。


 私はため息をついて、ジークに言葉を返す。


「……返答を知っていて尋ねているの?」


「お嬢様の思いは、口にしていただかないと分かりません」


「答えはノーよ」


 シャフリは表情を固まらせ、ジークは表情を崩すことなく私を見つめてくる。


「私は外に出ないわ。親2人が出れば十分でしょ?」


 するとジークは眉をハの字にして、困った表情を浮かべる。


「そう……ですか。残念です。カーリーメイド長や自分も同行させて貰えるのですが、お嬢様がいないとなると、少し寂しいですね……」


 私は同行という言葉に反応し、勢いよく椅子から立ち上がる。


「お嬢様とご一緒に食事できるのを楽しみにしていたのですが……残念です」


「ちょっと待ちなさいッ!! 何でジークまで一緒に行くの!? カーリーはあの2人の専属メイドだから同行するのは分かるけど、ジークは私の執事でしょ? 私が留守なら私と一緒に留守番しなさいよッ!!」


「しかし、奥様の命令ですので……それに、護衛としての同行なので辞退するわけには……」


 食い下がってくるジークに返す言葉を選んでいる最中に、シャフリが俯きながら私の服の袖を掴んでくる。


「何よ?」


 顔を上げたシャフリを見ると、大粒の涙が流れており、それを見た私はギョッとなって一歩引いてしまう。


「ミーナちゃん……王宮で会食なんて、二度と無いかもしれないかもしれないんだよ? 行くべきだよ~」


「しゃ、シャフリ?」


 シャフリは私の腕にしがみつき、さらに暴走する。


「ミーナちゃんが行かないなら、私がミーナちゃんの名を語ってでも行くよ! それでもいいの!?」


「え? ちょ、ちょっと!!」


「お嬢様。考え直せませんか?」


 口を挟んできたジークに目を向け、私は歯をギリギリと鳴らして選択を変える。


「……だあぁッ!! 分かったわ!! 出席すれば良いんでしょ!? だからシャフリ離れなさいよッ!!」


 その時、視界の端に入ったジークの表情は笑みを浮かべていた。そして、その笑みの意味を知った私は、すぐに察した。


 あ……また私、踊らされたっぽい。

遅くなってしまって申し訳ございません!


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