明かすべき事1
「大分、集中力がなくなってきたね。今日はここまでにしよっか。ミーナちゃん」
本を閉じながらシャフリは私に声をかける。シャフリの声が私の耳に届いた瞬間、私はテーブルに顔を思いっきり伏せた。
「も……もう、ダメ。しばらくは魔法の練習はいいかも……」
「ダメだよ。今日は1日中やってしまったけど、最低でも1時間以上は練習しないと繊細な魔法は使えないよ。それに覚えた魔法も復習しないと忘れちゃうよ」
相変わらず真面目なヤツめ。
「休憩時間の確保くらいはしっかりしてよね! 今日は我慢したけど、休憩無いのは結構辛いんだから!」
「分かったよ。それは私も反省しているから許して」
私はゆっくりと顔をテーブルから離し、よろめきながらベッドまで辿り着く。
「せーの……ダーイブッ!!」
モフモフしたベッドが優しく私の体を受け止め、長時間緊張していた体が和らぐ。
「はぁ~、やっぱりベッドが1番落ち着く~」
「ミーナちゃん!! 埃舞ってるよ!! ベッドにダイブしたい気持ちは分かるけど、汚いよ!!」
「うっわ!! 埃が口の中に入っちゃった!! シャフリ助けて!!」
「自業自得だよ」
口の中に入ってしまった埃を飲み込まないようにするが、埃を何処に捨てればいいのか分からず、私は部屋中を駆け巡る。
「ちょっと落ち着いてよ!」
走ったせいか、埃が喉の近くまで移動し、飲み込んでしまうと察した私は、顔を青くし、その場で急に止まる。
「み、ミーナちゃん?」
「も……ダメ。飲み込む」
その時、私の視界の端にタオルが現れ、躊躇うことなくタオルを口に当てて、埃を口外に出す。
「はぁ~、助かった」
タオルが出てきた方向に目を向けると、そこには数時間ぶりに見るジークの姿があった。
「じ、ジーク!? どこに行っていたの!? 長い時間私を放置して!!」
「遅くなってしまって申し訳ございません。お嬢様。お喋りしたい気持ちは分かりますが、まずは口を濯いでください」
ジークは私に水の入ったコップを手渡し、私はふて腐れた表情を浮かべて口を濯ぐ。そして、ジークが用意していた容器に水を吐き捨てる。
「一体何処で何をしていたの!?」
「申し訳ございません。細かいことは言えませんが、急用で重要な仕事が舞い込みまして……」
「私に隠し事なんて良い度胸じゃないッ!!」
すると私たちの会話を聞いて、ニヤけ顔を浮かべているシャフリが口を開く。
「あれ? ミーナちゃん。ジークさんが来た瞬間元気になって~。まだまだ練習できそうだね~」
「じょ、冗談言わないでよ!! 元気になってないし、練習できないし!! 怒ってるだけだし!!」
さらにニヤけるシャフリに手を出したくなったが、私はジークに向き直り、軽く舌打ちする。
「……まあ、今日のところは許してあげる。だけど、長時間私から離れるときは事前に直接言いなさい!」
「分かりました」
「次はないからね!! さっさと紅茶の用意をして!」
私はシャフリの隣に座り、ジークに紅茶の準備をさせた。
ジークはいつもの笑みを浮かべながら、私とシャフリのカップに紅茶を注いだ。
「うーん!! いつ飲んでもジークさんの淹れる紅茶は絶品ですね~」
隣でシャフリが幸せそうな表情を浮かべながら紅茶の感想を述べているが、怒っているからなのか、私は紅茶の味を楽しむことが出来なかった。
「……お嬢様。如何なされましたか?」
私の表情を見て、ジークは声をかけてくるが、私は天井に視線を逸らし、突っぱねる。
「別に。何も」
「何もないはずはありません。考え事をしているときのお嬢様は天井を見るクセがあります」
他人のクセを見抜くな!! やりにくい!!
「……やっぱりダメ。我慢できない。ジーク……私に隠れて何をしていたの? これは命令よ。濁そうとしても無駄だから」
ジークの表情から笑みが消え、肩の力を抜いたジークは仕方なさそうな表情を浮かべて、口を開ける。
「分かりました。ですが話す前に……シャフリ様」
「あ、はい!」
ジークはシャフリに視線を向け、シャフリは何かを感じたのか、動揺し始める。
「今から私が話すことは他言無用にしていただけますか? それが条件でお話しさせていただきます」
シャフリは「えーっと」と困った表情を浮かべて私に視線を向けてくる。私は目で「条件を飲み込みなさい」と送り、シャフリはジークにコクリと頷いた。
「では、単刀直入にお話しさせていただきます」
自然と緊張が走り、私とシャフリは固唾を呑む。
◇◇◇
執務部屋にて黙々と仕事をするサロミアにエディックが声をかける。
「サロミアちゃん。良いかな?」
「さっきまで倒れていたくせに何?」
サロミアの冷たい口調に少し興奮しかけたエディックだったが、なんとか自分を保ち、話を進める。
「本当にジークくんがミーナを説得できると思う?」
「愚問ね。心配なら見てくれば?」
「いや……」
視線を落とすエディックを見て、サロミアはため息をつき、立ち上がる。
「あなた。ジークくんの言った言葉、覚えている?」
「……信じろってこと?」
「一理ありすぎて、何も言い返せなかった。私たちはミーナちゃんを心から信じてなかった」
肩を落とすサロミアにエディックは掛ける言葉が見つからなかった。
「そして、ミーナちゃんの成長を見ていなかったし、止めさせてしまっていた。だけど、ジークくんはたった数日でミーナちゃんの心を動かし、止まっていた成長を再開させてくれた。私たちにとっては恩人と言っても過言じゃない存在ね」
「……前から気になっていたけど、ジークくんって一体?」
するとサロミアの表情が曇り、エディックは瞬時に地雷を踏んでしまったと察する。
「……良いわ。話してあげる。あなたも知る必要があるわね」
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