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ヒビキ・コーラミア1

 とある洞窟にて目を覚ました幼き日のジークは、ぼやけた視界のまま周囲を見渡す。


 少し離れた場所にランプの明かりが洞窟の隅々を照らし、足下が見えやすい状況を保ってくれていた。


(……何で僕は? 走り回って目の前が真っ暗になって倒れたはず……)


 洞窟の外に目を向けると、既に日は暮れており、雨が降っているのか入り口から少量の水が浸入してくる。


 その時、外から足音が聞こえ、ジークは身構える。


「ひゃ~。いきなり降ってくるなんて聞いてないぞ。お、小僧。目が覚めたか」


 洞窟に入ってきたのはびしょ濡れの黒い軍服を身に纏い、黒い1本角が生えた女性の鬼だった。


「ヒッ!!」


 彼女が人外種だからなのか、虐待を受けていた影響なのか、直感的にジークの体が震え、声が出なくなる。


「怯えるな。倒れていたお前を助けたのは私だ。危害は加えるつもりはないよ」


 ジークは自分の体に巻かれている包帯を見て、本当に女性が自分を助けたのだと安心する。


 女性は軍服の上着を脱ぎ、洞窟の隅にあった木を使って火をおこす。勢いよく燃える炎は洞窟内を暖め、さらに明るくする。


「よしっと。これで暖かくなるだろう。さてと……」


 女性は持参してきた袋を漁り始め、何かを取り出す。


「お前、腹減ってるだろう」


 ジークは言葉を返せず、首も振らなかった。しかし、女性は構うことなく、パンを投げ渡す。


「待ってろよ~。それに合うウインナーとチーズを焼いてやるからな」


 明るい笑みを浮かべる女性に、ジークは勇気を振り絞って声を出す。


「あ、あの……」


「何だ? 好き嫌いか? 子供は好き嫌いしちゃダメだぞ?」


「いえ……そ、その……」


 女性はジークに目を向けることなく、優しい笑みを浮かべて言葉を返す。


「……言いたいことは分かる。何も言わなくて良い」


「え?」


「お前、孤児院を抜け出したんだろ?」


「ど! どうして……それを?」


 再び女性は笑みを浮かべて、ジークの服を指さす。


「その服……孤児院の服だろ。それに孤児院の名前も刺繍されている。あまり評判の良い孤児院ではないがな」


 ジークは視線を下に向けて、悲しそうな表情を浮かべる。


「安心しろ。あそこに送り返すことなんてしないから」


 女性の一言がジークの耳に届き、ジークは顔を上げる。


「ほら。まずはこれでも飲んで気を落ち着かせろ」


 女性がジークに手渡したカップの中には熱々のミルクがたっぷりと入っていた。湯気が立っている飲み物を初めて見たのか、ジークは興味津々の表情を浮かべ、一口飲む。


「あつッ!!」


「熱いぞ。息を吹きかけてから飲めよ」


 ジークは吐息で少しミルクを冷ましてから、再び口をつける。ほどよい甘さが口の中に広がり、体全体に温かさが染み渡る。


「ん! んん!!」


「どうだ? 美味いか?」


 ジークは何度もコクリコクリと頷き、ミルクをさらに飲む。


「飲むのも良いが、こっちも良い感じに焼けたぞ~」


 女性はジークの前に小皿を置いた。その上には熱で少し溶けかかっているチーズと、ウインナーが並んでいた。ジークはパンにそれらを挟み、勢いよくかぶりつく。


「お……おい、しい」


「美味いか? そりゃあ、良かった!!」


 無我夢中で食事を続けるジークを、女性は優しい笑みを浮かべながら見つめていた。


 そして、ある程度食べ進めたジークに、女性は名を尋ねる。


「お前……名前はなんて言うんだ?」


 ジークは口を止め、パンを口から離して、自分の名を口にする。


「……ジーク」


「ラストネームは?」


 ジークは首を横に振り、思い出せないと察しさせる。


「……そうか。ジークか」


「……お姉さんは?」


「私はヒビキ・コーラミア。浮浪の軍人さ」


 ジークはヒビキの額から生えている角を見て、思いを口にする。


「鬼なのに軍人さんなの?」


「ああ。鬼でも軍人になれる国があってな。だけど、その国はとっくの前に滅んじまってな。行く場所もなくて、その日暮らしをしている」


 ヒビキは袋から酒瓶を取り出し、豪快に飲み始める。


「かぁ~。他人と面合わせながら飲む酒はやっぱり美味いな~。まあ、相手は子供だけど」


 するとジークはパンを小皿の上に置き、ヒビキに思い切った質問をする。


「お姉さんは……僕を食べたりしない?」


「は? 何言ってんのお前?」


「昔孤児院の人が言ってたんだ。抜け出したら人間のお前なんか、人外種に食べられるって……」


 するとヒビキは一瞬目を丸くして、涙を浮かべて高笑いする。


「な、何が可笑しいの!?」


「いや~。人間と人外種は手を取り合おうのスタンスでこの世界は回っているのに、まだそんなことを言うヤツがいると思うと、つい馬鹿らしくて笑っちまってな~」


 ジークはキョトンとし、ヒビキはジークの頭をガシガシと撫でる。


「食べねーよ。人間なんて美味くないらしいし、食べたいと思ったことは一度もねーよ」


 ジークはヒビキに視線を向け、ヒビキは歯を見せるほどの笑みを浮かべる。


「まあ、狭い箱の中で生きてきたお前には知らなくて、当然だな。よし! 決めた!」


「決めた?」


「明日から私に付いてこい! 一緒に旅をするぞ!」


 旅という言葉を聞いて、ジークの思考は一瞬ストップし、困惑した表情を浮かべる。

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