表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/172

地理学

 一緒に地理本を読むまで帰らない!と駄々をこねるシャフリに私は折れ、仕方なく数ページだけ一緒にイクセプトの地理本を読むことにした。


「3大陸でイクセプトが成り立っているのは知っていたけど、全部で7カ国しかないなんて少ないね~」


 シャフリはイクセプトの全体地図を見て、率直に思ったことを口にする。


 私は言葉は返さなかったが、シャフリと同じ思いだった。


 3大陸は東大陸、西大陸、中央大陸と名付けられており、東側にある大陸が東大陸。西側にある大陸が西大陸。その2つの大陸の間にある大陸が中央大陸。


 誰が考えたか分からないけど、シンプルに名付けたわね。


「ところで、シャフリは別の国から来たって言ってたけど、何処の国から来たの?」


「私?」


 シャフリは中央大陸の東側を指さして、自慢げに語る。


「イクセプトで1,2を争う水産国、ネプカトゥーレ。またの名を水の国。私はここに生まれて、ここで育ったの」


「ね、ネプカトゥーレって水揚げされた魚をすぐに食べられる場所でしょ? 私、獲れたての魚って食べたことないんだよね……」


 不覚にも、国名を聞いただけで、私はシャフリを羨ましがってしまった。


「まあ、私も海沿い近くの場所に住んでいたわけじゃないから、頻繁に食べていたわけじゃないけど、何度かは食べたことがあるよ」


 私は喰い気味にシャフリに尋ねる。


「ねえッ!! 生魚ってやっぱりクサいの? 好き嫌いが激しいって聞くけど、どんな感じなの!?」


「た、確かにちょっとクサいけど、生の魚は焼いたり煮たのとは違った味がするよ」


 私の中の好奇心が暴走し始め、勝手に生魚の妄想を始める。


「人間や人外種と一緒で血生臭いのかな~? それとも、塩っ気がある味なのかな?」


「あ、あの~? ミーナちゃん?」


「どうなんだろう……気になる。気になりすぎる。他にも……」


「どうすれば良いの~?」


 シャフリが横で何か呟いているが、構うことなく、私は妄想の世界に居続けようとする。


「ミーナちゃん。ミーナちゃ~ん。現実に戻ってこないと、お泊まりするよ~」


 流石にマズいことを言っているような気がしたから、戻るか。


「……ただいま」


 シャフリは少し残念そうな表情を浮かべるが、再びイクセプトの全体地図に目を向ける。


「中央大陸は全部で5カ国。東側がさっき説明した水の国、ネプカトゥーレ。南側は鉱山地帯が広がる鉄の国、クロスフィア。西側は放牧地帯が多く、遊牧民も存在している国、スカイターフ。北側は生物学、植物学、あらゆる分野の研究に力を入れている探求の国、サイロード。そして、中央大陸の真ん中で、ありとあらゆる作物が豊作になる国、ここアルカディア。それぞれ個性がある国ばかりだね~」


 地理本に書いてあることを口にしたシャフリは、目を輝かせてそれぞれの国に視点を置く。


 ……え? なんか、アルカディア以外の国、尖り過ぎなんですけど?


「国づくり下手くそか。足並み揃えれば良いのに」


「その場の環境とかもあるから、仕方ないと思うよ。どこの国も魅力があって、行ってみたいね!」


 まあ、シャフリの言っていることは正しいし、行ってみたいって気持ちも分かる。


 私は全部の国に行ってみたいわけじゃないけど、気持ちを落ち着かせてくれそうなスカイターフと水の国、ネプカトゥーレには興味が沸いた。


「……想像しているだけでも、面白い」


 シャフリは何も言ってこなかったが、満面の笑みを浮かべて私の顔を見つめてくる。


 そして、別のページに移ろうとしていたが、私は強制的に本を閉じさせた。


「中央大陸は一通り見たんだから今日は帰りなさい」


「え~ッ!!」


「え~ッ!! じゃないわよ。帰らないなら、アンタの血でも吸おうかしら?」


 血を吸うつもりはなく、冗談で言ったつもりだったが、シャフリは血相を変えて、窓の外に出る。そして、自分の体を浮かせ、軽く手を振る。


「た、確かに良い時間だしね~。今日は帰るよ~」


「冗談よ。じょうだ……」


 言いきる前にシャフリは飛んでいき、私は軽く息を吐く。


「……ッたく。血なんか吸ったことないわよ」




 ◇◇◇




 ジークは米酒が注がれているグラスを持ち、エディックは赤ワインが注がれているグラスを持って、湯船に浸かる。


「それじゃあ、乾杯!」


「恐縮でございます」


 乾杯後、エディックはワインの作法を全て無視し、一気の飲み干すが、対照的にジークは一口だけ飲んで、お湯が当たらない場所にグラスを置く。


「それで、旦那様。自分に話とは……」


「ここで旦那様はやめてくれ。僕は君を友達だと思ってるから、君も敬語をやめて話してくれ」


「しかし……」


「躊躇うか? なら、命令だ。ここで2人だけの状態の時は、敬語を使うな。良い?」


 ジークは一瞬だけエディックから何かを感じ、仕方なさそうな表情を浮かべて、命令を受け入れる。


「分かりました……いや、分かったよ」


 すると、エディックは満面の笑みを浮かべて、グラスにワインを注ぐ。


(今のは殺気か……殺しの世界から、長い年月が過ぎているのに、衰えていないとは……流石、あの人が認めただけの人ではある)


「で、話とは?」


 エディックはワインを一口飲んでから、ジークにあることを頼む。


「……実は、2週間後に王宮で会食があるのだが」


 一瞬にして話を察したジークは腕を組んで、天井を見つめる。


「……お嬢様も連れて行きたいけども、付いてきてくれるか不安だと?」


「その通り」


 するとジークはクスクスと笑い、米酒を一口飲む。エディックは急に笑い出したジークに目を向け、首を傾げる。


「大丈夫。怯えて現実から逃げだそうとしていた昔のお嬢様はもう居ません。少しずつですが、しっかりと前を向き始めていますよ」

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!


続きが気になる方は、ブックマーク登録よろしくお願いします。

誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告お願いします。

評価や感想を送っていただけると今後の励みになります。差し支えなければよろしくお願いします!


これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ