地理学
一緒に地理本を読むまで帰らない!と駄々をこねるシャフリに私は折れ、仕方なく数ページだけ一緒にイクセプトの地理本を読むことにした。
「3大陸でイクセプトが成り立っているのは知っていたけど、全部で7カ国しかないなんて少ないね~」
シャフリはイクセプトの全体地図を見て、率直に思ったことを口にする。
私は言葉は返さなかったが、シャフリと同じ思いだった。
3大陸は東大陸、西大陸、中央大陸と名付けられており、東側にある大陸が東大陸。西側にある大陸が西大陸。その2つの大陸の間にある大陸が中央大陸。
誰が考えたか分からないけど、シンプルに名付けたわね。
「ところで、シャフリは別の国から来たって言ってたけど、何処の国から来たの?」
「私?」
シャフリは中央大陸の東側を指さして、自慢げに語る。
「イクセプトで1,2を争う水産国、ネプカトゥーレ。またの名を水の国。私はここに生まれて、ここで育ったの」
「ね、ネプカトゥーレって水揚げされた魚をすぐに食べられる場所でしょ? 私、獲れたての魚って食べたことないんだよね……」
不覚にも、国名を聞いただけで、私はシャフリを羨ましがってしまった。
「まあ、私も海沿い近くの場所に住んでいたわけじゃないから、頻繁に食べていたわけじゃないけど、何度かは食べたことがあるよ」
私は喰い気味にシャフリに尋ねる。
「ねえッ!! 生魚ってやっぱりクサいの? 好き嫌いが激しいって聞くけど、どんな感じなの!?」
「た、確かにちょっとクサいけど、生の魚は焼いたり煮たのとは違った味がするよ」
私の中の好奇心が暴走し始め、勝手に生魚の妄想を始める。
「人間や人外種と一緒で血生臭いのかな~? それとも、塩っ気がある味なのかな?」
「あ、あの~? ミーナちゃん?」
「どうなんだろう……気になる。気になりすぎる。他にも……」
「どうすれば良いの~?」
シャフリが横で何か呟いているが、構うことなく、私は妄想の世界に居続けようとする。
「ミーナちゃん。ミーナちゃ~ん。現実に戻ってこないと、お泊まりするよ~」
流石にマズいことを言っているような気がしたから、戻るか。
「……ただいま」
シャフリは少し残念そうな表情を浮かべるが、再びイクセプトの全体地図に目を向ける。
「中央大陸は全部で5カ国。東側がさっき説明した水の国、ネプカトゥーレ。南側は鉱山地帯が広がる鉄の国、クロスフィア。西側は放牧地帯が多く、遊牧民も存在している国、スカイターフ。北側は生物学、植物学、あらゆる分野の研究に力を入れている探求の国、サイロード。そして、中央大陸の真ん中で、ありとあらゆる作物が豊作になる国、ここアルカディア。それぞれ個性がある国ばかりだね~」
地理本に書いてあることを口にしたシャフリは、目を輝かせてそれぞれの国に視点を置く。
……え? なんか、アルカディア以外の国、尖り過ぎなんですけど?
「国づくり下手くそか。足並み揃えれば良いのに」
「その場の環境とかもあるから、仕方ないと思うよ。どこの国も魅力があって、行ってみたいね!」
まあ、シャフリの言っていることは正しいし、行ってみたいって気持ちも分かる。
私は全部の国に行ってみたいわけじゃないけど、気持ちを落ち着かせてくれそうなスカイターフと水の国、ネプカトゥーレには興味が沸いた。
「……想像しているだけでも、面白い」
シャフリは何も言ってこなかったが、満面の笑みを浮かべて私の顔を見つめてくる。
そして、別のページに移ろうとしていたが、私は強制的に本を閉じさせた。
「中央大陸は一通り見たんだから今日は帰りなさい」
「え~ッ!!」
「え~ッ!! じゃないわよ。帰らないなら、アンタの血でも吸おうかしら?」
血を吸うつもりはなく、冗談で言ったつもりだったが、シャフリは血相を変えて、窓の外に出る。そして、自分の体を浮かせ、軽く手を振る。
「た、確かに良い時間だしね~。今日は帰るよ~」
「冗談よ。じょうだ……」
言いきる前にシャフリは飛んでいき、私は軽く息を吐く。
「……ッたく。血なんか吸ったことないわよ」
◇◇◇
ジークは米酒が注がれているグラスを持ち、エディックは赤ワインが注がれているグラスを持って、湯船に浸かる。
「それじゃあ、乾杯!」
「恐縮でございます」
乾杯後、エディックはワインの作法を全て無視し、一気の飲み干すが、対照的にジークは一口だけ飲んで、お湯が当たらない場所にグラスを置く。
「それで、旦那様。自分に話とは……」
「ここで旦那様はやめてくれ。僕は君を友達だと思ってるから、君も敬語をやめて話してくれ」
「しかし……」
「躊躇うか? なら、命令だ。ここで2人だけの状態の時は、敬語を使うな。良い?」
ジークは一瞬だけエディックから何かを感じ、仕方なさそうな表情を浮かべて、命令を受け入れる。
「分かりました……いや、分かったよ」
すると、エディックは満面の笑みを浮かべて、グラスにワインを注ぐ。
(今のは殺気か……殺しの世界から、長い年月が過ぎているのに、衰えていないとは……流石、あの人が認めただけの人ではある)
「で、話とは?」
エディックはワインを一口飲んでから、ジークにあることを頼む。
「……実は、2週間後に王宮で会食があるのだが」
一瞬にして話を察したジークは腕を組んで、天井を見つめる。
「……お嬢様も連れて行きたいけども、付いてきてくれるか不安だと?」
「その通り」
するとジークはクスクスと笑い、米酒を一口飲む。エディックは急に笑い出したジークに目を向け、首を傾げる。
「大丈夫。怯えて現実から逃げだそうとしていた昔のお嬢様はもう居ません。少しずつですが、しっかりと前を向き始めていますよ」
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