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ミーナとひょっこりちゃん6

「ミーナちゃん!? どうしてここに?」


 シャフリは驚いた表情を浮かべて、私を見つめてくる。


 どうしてここにって……ここまだ敷地だし、私のお気に入りの場所だし。


「シャフリ……」


 シャフリを前にして、やはり私の体は震え始め、上手く口が動かなかった。


 その時、背後に居たジークが優しく私の肩に手を置く。


「お嬢様、私が居ます。勇気を出して前に進んでください」


 一瞬だけジークに目を向け、私はコクリと頷く。


「シャフリ……あのね!」


「ごめんね。ミーナちゃん。帰れって言ったのに帰ってなくて」


「え?」


「もう帰るから安心して。それじゃあ」


 シャフリは自分の体に対して魔法を唱え、宙に浮く。


「待ちなさいッ!!」


 絶対に掴むッ!!


 今にも空に飛び立とうとするシャフリの腕を掴んだ私は、シャフリを見晴台の中央へと投げ飛ばす。


「キャッ!!」


 投げ飛ばされたシャフリは、地面にぶつかる前にジークにキャッチされ、怪我を負うことはなかった。


「いきなりどうしたの? ミーナちゃんの言ったとおり、私は帰るんだけど?」


 異常なほど息が乱れている私は、自分の胸に手を当て、気持ちを落ち着かせてから、シャフリに向き合う。


 落ち着け……ちゃんと言うことは言わなくちゃ……私。


「シャフリ……ご、ごめんね」


「え?」


 私から謝罪の言葉を受け取ったシャフリは状況が飲み込めず、呆け顔になる。


「私、昔から他人と接するのが苦手で……アンタに酷いことを言ってしまったわ。本当は怖くて、自分を守るために……許せないかもしれないけど……ごめんね」


「ミーナちゃん……」


 ジークはシャフリをソッと地面に降ろし、私とシャフリの様子を見るように少し距離を置く。


「私の方こそ謝らないといけないね。私は昔から見境なく人に近づいて、仲良くなろうとしていたの。でも、それが裏目に出て、みんな私のことを鬱陶しく思って避けられ、私は1人になっていたの。アルカディアに来てからは、大人しく過ごしていたけど、ミーナちゃんを見て、心の底から仲良くなりたいなって思ったの。だけど、ミーナちゃんが不快に思っているのも知らずに、ズカズカと無理矢理距離を詰めてしまって、ごめんね」


 少し自分の過去を話し、ポロポロと涙を流すシャフリを見て、私はゆっくり歩を進める。


「……シャフリ。アンタは私と違い、他人を恐れず勇気の一歩を踏み出せる。そして、こんな私にも声をかけてくれた。ありがとう」


「ミーナちゃん……」


 覚悟を決め、私は両手に拳を作る。


「も……もし、嫌じゃなかったら……私の……と、友達になってくれる?」


 シャフリに対して、ぎこちなく手を差し出す私。


「私で良いの?」


「……うん。アンタじゃないとダメなの」


 シャフリは震える私の手を優しく握り、涙を流しながら、笑みを作る。


「嬉しい……ありがとう、ミーナちゃん」


 すると、体の震えが治まり、私はシャフリの手を握り返す。


 ふと、様子を見ていたジークに目を向けると、満面の笑みを浮かべて、何度も頷いていた。


 ジークの一声があったから、私は前に進めた。またコイツに誘導された感はあるけど……ありがとう、ジーク。


「ヒック……ヒグッ……」


「ほら、いつまで泣いてるの? そんなんじゃ、私に魔法を教えられないよ?」


 私はシャフリの黒髪を優しく撫で、見晴台の階段を一緒にゆっくりと降りる。




 ◇◇◇




 応接室にて、シャフリの父、バルディゴ・クリスティと久しぶりの対面を果たしたサロミアは、終始顔を引きつらせていた。


「サロミア殿の協力もあって、アルカディアでの商売は成功しています! ありがとうございます!」


 サロミアに対して、深々と頭を下げている人物こそ、シャフリの父、バルディゴ・クリスティ。


 本当に魔法使いなのか? と聞きたくなるような屈強な体で、顔も強面。そこそこの歳を感じさせるような真っ白な短髪。一見近寄りがたそうな外見だが、根は優しく、口調も柔らかい。馴染んでしまえば、絡みやすい性格。


(一体、何をどうしたら、こんな屈強な男から、可愛いお嬢さんが生まれるのかしら?)


 サロミアはシャフリの顔を思い出しながら、バルディゴと対話を続ける。


「それは良かったわ。長年の夢が叶って良かったわね」


「ええ。シャフリが生まれる前からの夢でしたので、心より感謝しています。様々な支払いの他に、売り上げの5%はミストレーヴ家に献上する所存です」


「あら~。別に気を遣わなくていいのに」


 バルディゴはゆっくりと首を横に振り、自分の意見を貫く。


「サロミア殿には何度も助けてもらいました。その恩は返せる内に返しておきたいのです。私もいつ死ぬか分からない身ですから」


「またまた~。まだ40代半ばなんて、折り返しみたいなものでしょう?」


「ハッハッハ!! そうですね。まだまだですね。ところで、話は変わりますが、数日前からシャフリがサロミア殿のご息女と魔法の勉強をしていると耳にしたのですが……」


(ヤバッ……)


「ご息女、ミーナ・アリスト・ミストレーヴ殿の精神状態は昔から聞いておりますが、少々興味がありまして……差し支えなければ、一目見たい所存なのですが……」


「えーっと……それはその……」


(シャフリちゃんを追い出しちゃったなんて、言えるわけないでしょッ! あ~、もう。どうすればいいの……)


 その時、応接室の扉がノックされ、サロミアは扉の向こうの人物に声をかける。


「どなた?」


「サロミアちゃん。僕だよ」


 声の主はエディックだった。


「入って」


「失礼します」


 エディックは軽くバルディゴに頭を下げて、サロミアに耳打ちする。エディックから伝えられた内容を聞いたサロミアは、一瞬だけ驚いた表情を浮かばせ、笑みを作る。


「ありがとう。あなた」


「それじゃあ、僕は失礼します」


 エディックは部屋を後にし、サロミアはゆっくりとソファーから腰を上げる。


「様子を見に行きましょうか」


「感謝します」


 バルディゴはサロミアの後に続き、ミーナが居る部屋へと足を運んだ。

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