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ミーナとひょっこりちゃん3

 魔法を得意としていない人外種は勿論、魔法を得意としている人間の魔法使いよりも強力な雷魔法を、空一帯に繰り出したシャフリに、私は驚きを隠せなかった。


「ちょ、ちょっと!! 今の何なの!?」


 私がテーブルをバンッと叩いた音にビクつくことなく、シャフリは何事もなかったかのような表情を浮かべて言葉を返す。


「何って、上級雷魔法だよ」


 イヤイヤイヤッ!! 上級魔法の域を超えているわよ!!

 

 轟音立てて、見えなくなるところまで広がる魔法が何処にある!! 普通の人間の魔法使いだと、あんなの放つと精神持たないわッ!!


「アンタ何者なの!? 軽く本を見ただけで、上級魔法以上の魔法を使うなんて」


「普通の人間だよ」


 どっかの誰かと一緒で、天然出してくるんじゃないわよッ!! 何かもう……自信もやる気もなくしたわ。


「素晴らしいですね。シャフリ様」


 シャフリの魔法に拍手をしながら声をかけたジークは、ある質問をした。


「お若いのに、ここまで強力な魔法を使える人と出会ったのは初めてです。ひょっとしてシャフリ様……」


「はい!! 私、イクセプトで1番の魔法使いになるのが夢なんです!!」


「そうですか! 随分先を見ていられる夢ですね。昔、自分も最強の魔法使いになるのを夢見たときがありました」


「そうですよね! 憧れますよね!」


 しかし、ジークは眉をハの字にして、少し悔しそうな表情を浮かべる。


「ですが、私には魔法の才能がないと思い、魔法使いになる夢を諦めました」


「そうですか……残念です」


「簡単な魔法なら出来ますけど……」


 ジークは左の掌に赤い炎を生成し、その場に留まらせる。さらに右の掌には、氷の塊を生成する。


 それを見たシャフリは、目を輝かせて、ジークとの距離を詰める。


「わあ!! 多重詠唱ッ!! 魔法使いの中でも、出来る人が少ないのに、凄いですね!! 才能がないなんて、嘘ですよ。寧ろ才能の塊ですよ!!」


「お褒めの言葉、ありがとうございます。しかし、魔法を使う以上、威力も求められます。多重詠唱が出来ても、威力がなくては魔法使い界隈で生きていくのは難しいです」


「そう……ですか」


 悲しげな表情を浮かべるシャフリの頭を、ジークは優しく撫でる。


「大丈夫です。シャフリ様はきっと、良い魔法使いになりますよ」


 一瞬にして笑みを戻したシャフリは、元気いっぱいの声で「はい!」と返事をする。その光景を見せつけられた私は、何だか胸元がモヤモヤし、思わず舌打ちをしてしまう。


 どーでも良いから、お目当ての物を持って、さっさと出て行きなさいよ。


「あら~。ミーナちゃんとジークくん。外庭の方にいたのね」


 屋敷の上の方から、母サロミアの声が聞こえ、私は顔を上げる。そこには窓を開けて、上半身を外に出していた母の姿があった。


「いたわよ。話しかけてきて、何の用?」


「まーた、ぶっきらぼうな返答ね。機嫌でも悪いの」


 ほっといてくれ。


「なんか凄い轟音が鳴って、空に雷が走っていたけど、まさかミーナちゃん?」


「んなわけないでしょッ!! 私が魔法使うの苦手なの知ってるでしょッ!!」


「じゃあ、誰が……」


 母の視界にシャフリの姿が映り込み、母は口元に人差し指を近づける。


「あら? そちらのお嬢さんは?」


「は、初めまして!! 私、シャフリ・ハル・クリスティと申します!! 敷地にお邪魔させてもらってます!! さっきの魔法は、私の雷魔法でして……ご迷惑おかけしてしまいましたか?」


 母は「違う違う」と手で示唆し、笑みを浮かべる。


「ご丁寧にどうも。久しぶりに良い魔法を見ちゃったから、見とれちゃったの」


「ほ、ホントですか!?」


「ええ。未完成なのに、良い出来だったわ」


 え? アレで未完成? 嘘でしょ?


「分かりますか!? どうしても、連続して唱えることが出来なくて……」


 連発する必要はないでしょ? 化け物か? コイツは? ……私も化け物みたいなものだけど。


「クリスティってことは、バルディゴ・クリスティさんのご息女さん?」


「え? 父をご存じなのですか?」


 母はニッコリと笑みを浮かべて、シャフリに言葉を返す。


「ええ、よく知っているわ。旧知の仲でね。アルカディア国で、魔法薬の店を開きたいって言ったとき、土地や建物を提供したのは、私なの」


 すると、シャフリは勢いよく母に頭を下げる。


「いつも父から聞いています!! サロミアさんのお陰で、父は毎日笑顔で仕事に取り組んでいます!!」


「フフフッ。それなら協力のしがいもあったってものね」


 その時、母は何か思いついたのか、私に一瞬だけ視線を向け、シャフリにあることを尋ねる。


「ねえ。良かったら、ミーナちゃんに魔法を教えてあげてくれないかしら?」


 は? 突然何言い出すのコイツ?


「私が……ですか?」


「本当に魔法のセンスがなくて、ちょっとクセがある子だけど、覚えは悪くないわよ。あなたの今後の成長も兼ねて、お願い聞いてくれるかしら?」


「ちょっと待てぇッ!!」


 私の叫び声は2人の耳には届かず、シャフリは了承し、母は満面の笑みを浮かべて、シャフリに手を振る。


「それじゃあ、よろしくね」


 母は私の意見を完全に無視し、そそくさと窓を閉めてしまう。


 事の流れに追いつけない私は、横にいるシャフリにソッと視線を向ける。満面の笑みを浮かべたシャフリが、私に対して両手を差し出す。


「よろしくね! ミーナちゃん!」


 あのクソババァ!! 


 後で覚えてろよおおおぉぉぉぉ!!

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