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ミーナとひょっこりちゃん2

「如何なさいますか? お嬢様」


「決まってるでしょ? 追い返して」


 ひょっこり覗いていたヤツを、敷地に入れて堪るか。


「ですが、悪い方ではなさそうですが……」


「良い悪いの問題じゃないの! アイツは私に会いたいって言ってるけど、私は会いたくないの」


 ふと正門前に視線を戻すと、覗いていた女の子と目が合ってしまった。女の子は満面の笑みを浮かべて、私に手を振ってくる。


「あ、ねえ~! お願いだから入れてくれる~?」


 侵入を食い止めていたメイド2人が、私に視線を向け、私はあるジェスチャーをする。


「お・い・か・え・せ」


 ジェスチャーと私の口の動きを理解したメイド2人は、少し戸惑い、追い返すかどうか悩んでいた。


 悩むほどのものじゃないでしょ? 私が追い返せって言ったら、早く追い返せよ。


「全く……これだから優柔不断なヤツは嫌いなのよ。ジーク。あの2人に代わって追い返してきて」


 横にいるジークに視線を向けるが、既にジークはいなかった。


「あれ?」


 嫌な予感がし、慌てて正門の方に視線を向けると、ジークが女の子とメイド2人の間に入っていた。


 女の子と何か話しているようだったが、全く聞き取れなかった。ものの数秒で話が終わり、女の子は満面の笑みを浮かべ、ジークは女の子を敷地内に招いた。


「あ……あのバカ執事ぃぃ!!」


 私は拳を作り、湧き上がる怒りを必死に堪えていた。


 敷地に入った女の子は、私に直行し、小さく頭を下げる。


「あの、さっきは失礼しました! 指摘されたとおり、覗くのはやめました」


 誰も覗きをやめて、近くに来いなんて言ってないけど?


「お嬢様。彼女はお嬢様が読んでいた、上級魔法の魔道書を読みたいだけだそうです」


 女の子と一緒に戻って来たジークが、女の子の目的を代弁する。すると、間髪入れずに、女の子が私の手を握ってきた。


「私! 魔法が大好きなんです! 一緒に魔法の勉強をしましょう!」


 ホント……ホントに厄介なヤツを敷地に入れてしまった。


 鋭い目つきでジークを見つめるが、何故か笑みを浮かべられてしまった。




 ◇◇◇




「わぁ!! 凄い凄い!! 本当に上級魔法の魔道書だ!!」


 女の子は上級魔法の魔道書を見て、目を輝かせていた。


「ホントに読んでも良いんですか?」


「ええ。宜しければ、しばらくの間お貸ししますよ」


 ジークの優しい言葉に、女の子はさらに嬉しそうな表情を浮かべる。


「良いんですか!? それではお言葉に甘えさせていただきます!」


 話が進んでいるが、これ以上は勝手な真似は許さない。


「待ちなさい、ジーク。名前も知らないヤツに、物を貸すのは不用心過ぎるわよ」


「あ、大変失礼しました」


 女の子は本をテーブルの上に置き、自己紹介をし始めた。


「私、シャフリ・ハル・クリスティ。シャフリって呼んでください!」


「シャフリ様、ご丁寧にありがとうございます」


 ジークはニッコリと笑みを浮かべ、私の肩をちょんちょんと触れる。反射的に振り向く私に、ジークはウインクをする。


「自己紹介してきた相手に、自己紹介をするのがマナーですよ。お嬢様」


 どうでも良いわッ!! 第一、私は追い返せって言ったのよ。何で追い返すはずの相手に自己紹介しなくちゃならないの?


「この国……アルカディアに住んでいるなら、私のことは分かるよね」


 すると、女の子は申し訳なさそうな表情を浮かべて、私に言葉を返す。


「すみません。アルカディアに来たのは、つい数日前で、何も分からないんです……」


 あー、面倒くさい。そういうのホント面倒くさい。


「お嬢様」


「分かってるわよッ!! 私はミーナ・アリスト・ミストレーヴ。これで良い?」


「ミーナちゃんだね! よろしくね」


 シャフリがニッコリと笑みを浮かべて、握手を求めてくる。


 何がよろしくよ。そして馴れ馴れしくファーストネームで呼ぶな!


「さっさと魔道書を持ってどこかに行きなさい。もう用事はないんでしょ?」


 早く追い返したい私は冷たい言葉を並べ、シャフリに対してどっか行けとジェスチャーする。


 しかし、シャフリが動くことはなく、視線をシャフリに戻すと、既に魔道書を読むのに集中していた。


「おいッ!! 人の話聞いているの!?」


 私の怒声に驚くこともしなければ、何らかの反応を見せることなく、シャフリは本を読み進める。そして、数ページ読み終えたシャフリが、本に視線を向けたまま、私に声をかけてくる。


「……凄い」


「何が凄いのよ?」


「上級魔法は高度な式術や、魔力を安定させる精神力、さらには集中力が必要となるんだけど、何度も挑戦しているミーナちゃんが凄いなぁって思って」


 急に褒められた私は、少し頬を赤く染めて、ポリポリと頬を掻く。


「そ、そうかしら?」


「全部中途半端で、1つも成功はしていなかったけど」


 アメから急にムチに変わった発言に、私は思わず椅子から滑り落ちる。


「失礼ね……」


 すると、シャフリは魔道書を閉じ、上級魔法を唱えようとしていた。


「難しいけど、魔道書に書いてあることを要約して、コツを掴んでしまえば、初級・中級と同じように簡単に出せるよ」


 シャフリは右掌を差し出し、スッと目を閉じる。


「……上級雷魔法・ライトニング」


 突如、シャフリの右手が帯電し、掌に雷を纏った青白い球体が現れ、シャフリは思いっきり上空に投げる。そして、上空へと放り出された青白い球体は、数秒後に轟音を立てて、広範囲に渡って雷を放出させる。


「え?」

「ほぅ……」


 あまりの威力に私は呆気にとられ、ジークは顎に手を当てて、笑みを浮かべていた。

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