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ミーナとお風呂2

「……はい。綺麗になったわよ」


「あ、ありがと」


 恥ずかしながらも、背中を洗ってくれた母にスッと私は感謝の言葉を述べる。


 母は自分の体にお湯をかけ、体を洗おうとする。その時見えた母の表情は、少し暗かった。


 能天気で、私のことなんか見ていないと思っていた母だけど……母なりに私のことを気にかけてくれていた。


 それなのに、私は一方的に母や父と距離を取って、嫌っていた……私って、何でこんなにバカなんだろう。


「ん? ミーナちゃん?」


 私は母の背後に回り、タオルにボディーソープを染みこませる。


「……お返し」


「え?」


「だからッ! 洗ってくれたお返しに、洗ってあげるって言ってるの!!」


 数秒ほど母は驚きの表情を浮かべていたが、私に背を預け、優しい口調で言葉を返す。


「じゃあ、お願いしようかしら」


 傷1つなく、白くてマシュマロのような肌に、私はそっとタオルを当てる。


「……ど、どう?」


「ん~。気持ちいいわよ。翼の根元には気をつけなさいね」


「分かった……」


 吸血鬼の翼に触れないように、私は丁寧に母の背中を洗う。そして、私は母が口にした思いに対して言葉を返す。


「……何で」


「ん?」


「何で自分たちを責めるの? 全部、私自身が悪いことじゃない。何で謝ったの?」


 母は少し間を開けて、口を開ける。


「子供が間違った方向に成長してしまったのは、親の責任でしょ?」


 その言葉は私の心にグサッと刺さり、言葉を返すことが出来ず、視線を落とす。


「過ぎてしまったことは仕方ない。間違ってしまったことも仕方ない。この屋敷外の人間や人外種が嫌いなのも仕方ない。だけどね……これからは違うんじゃないの?」


 私は視線を母の背中に戻す。


「ここだけの話だけど、私たちはミーナちゃんに一生嫌われる覚悟でいたわ。そんな時、ミーナちゃんとの関係を改善する案を出したのは、ジークくんなの」


 ジークが? 一体どういうつもりで?


 母は鏡越しで私の表情を確認し、クスクスと笑みを浮かべる。


「気づかなかったの? ミーナちゃん。突然、私やエディックが遊びに来て、不審に思わなかったの?」


「……そう言えば、10年以上遊んでなかったね」


「ただ暇を潰すために遊びに来たわけじゃないの。ジークくんが少しの時間でも良いから、あなたと接してくれ。親として、子供としっかり向き合って……ってね」


「どうして、アイツがそこまで?」


「……ジークくんの過去。少し聞いたんでしょ?」


「ほんの少しだけ」


 母の背中に付着した泡をお湯で流し、洗い終わったことを知らせる。そして、私は出口ではなく、浴槽に入る。


「出ないの?」


「……もう少しだけ話を聞かせて」


 母は仕方なさそうな表情を浮かべ、もう一度、お湯を体にかけて、私が入っている浴槽に混ざってくる。


「ジークくんに両親がいないこと、知ってるんでしょ?」


「ええ。最初に語ってた」


「ジークくんから見て、私たち家族は羨ましかったのよ」


 ジークの気持ちになって、私たちの関係を見ていると、少し複雑な気持ちになった。


「甘やかしてくれたり、叱ってくれる親がいない。一方、親はいるけど、甘やかしたり、叱ったりもしない。そして、自分の子供を不幸から守ることが出来ない。子供は親を親として認識しおらず、ただ煙たい存在として認識し、暴言も吐き、親を大切にしていない。ジークくんはそれを黙って見ていられなかったのよ」


 その時、私は昨日のジークの表情を思い出した。


 そうか……あの時のジークは、私の暴言を快く思ってなかったから、悲しい顔をしていたのね。


「……何か繋がったみたいね」


 私の表情を読み取った母は、微笑みながら私の顔を覗く。


「でも、ちゃんと謝ったんでしょ? ジークくんに」


 一瞬、母が何を言っているのか分からず、私は固まる。そして、思い出した私は赤面し、母を問い詰める。


「まさか!? 昨日のオセロの後、聞いていたの!?」


「不可抗力よ~。あれだけワンワン泣きながら謝っていたら、廊下まで聞こえてたわよ~」


 不覚……。


 ジークにだけ見せたつもりだったのに……それも今思うと恥ずかしいな。


「忘れて! お願いだからッ!」


「はいはい。それじゃあ、上がりましょうか」


 サラッと話を流された私は、渋々母の後を追って浴場から出る。


 ……1人でお風呂に入るより、楽しかったかも。


 最後は恥ずかしかったけど……また一緒に入りたいな。

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